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十三機兵防衛圏をクリアして

2020/5/5初出、2022/06/27一部追記

『十三機兵防衛圏』というゲームを先日クリアしました。発売は2019年11月28日。みかける評判が印象に残っていたので4月半ばに購入、2週間弱でクリア。余韻に浸りながらアーカイブファイルをNo順に再見していく所作もおえたので、Twitterでなくnoteを新規開設して(FC2ブログ出身)思いをたれ流します。

前段(未プレイの方も読める)

というのも、「何がネタバレか」がクリアしても判断できないんです。本作は非常に入り組んだシナリオとなっており、「断片的に提示されるピースを、プレイヤーが頭のなかで(ミスリードされながら)連結していく」不思議な体験が最大の魅力。なので、できるだけ前情報なしで臨んでほしいし、道中の想像に影響をあたえたくない。そしたらもう、何も呟けない。だから、noteを開く必要があったんですね。

同時に、その特異な内容からどう薦めていいかよく分からない。なので紹介(布教)記事も諦めました。もし未プレイの方がいたら、自分から言えるのはこれくらい。

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こういうキャラたちが

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こういう淡い世界観だったりで

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出会い、繋がっていく

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それは魅力的なキャラクターたちが織りなすジュブナイルとして。ゲームという枠組みで語られる、あたらしい入れ子構造のSFとして。ほかに類をみない立体的な群像劇(シナリオ)の極地として。ぜひ勧めたいです。
(ちなみに自分は女の子のキャラデザインに惹かれ、その面でも本編について完全に満足しました。赤面は暴力。)

あとはこの素晴らしいTogetterに託します。
「十三機兵防衛圏ってどんなゲーム?」気になっている方への布教用レビュー - Togetter


ということで以降はネタバレを気にせず書いていきます。もしまだクリアしていない方はここでブラウザバックしたあとゲームを購入してください。


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以下、本題(ネタバレ含む)

■シナリオとゲーム進行

こんなに右も左も分からないまま進めていったゲームは初めてです。これでもかというミスリードの嵐、誰も時も何もふつうに進まない展開に、「やりすぎだろ!」と思いつつ唸るばかりでした。

おおくの方が指摘するように、本作は「語りかたの時系列」においてゲームならではの表現を示しています。「物語の時系列」を乱すことは映画や小説でもできる。だけど、小説はページによって、映画は再生によって、語りかたの時系列が確定してしまう。唯一、ゲームだけが「選択」によって時系列を組み替えていける。

「前段」にかいたように、本作は「断片的に提示されるピースを、プレイヤーが頭のなかで(ミスリードされながら)連結していく」進行が魅力です。エンディングへは一本道ですが、終わりに至るまでの(ピースを集め連結していく)選択の過程をとおして、「プレイヤーそれぞれのストーリー体験」が形成される。気にいったキャラを重点的に進めていたところ、他キャラの進行で印象がかわったり。息抜きになにげなく崩壊編を進めたら「えっそうなの」なんて情報を知ってしまったり。

得難いゲーム体験でした。ほとんど同じことをこの記事がしっかりとした文章でかいていたのでどうぞ。

恐らくもともとは「幾多のSFオマージュを何とか一つにまとめようとした」結果の魔改造だったと思うんですが、正に、だからこそ生まれたのだろう、この前例のない物語構造。本作が完成までこぎつけた事にはひたすら貢ぎたい気持ちです。


あと、各キャラクターたちが過去と「連なった」り「断ち切った」りしてるのも好きです。南奈津乃と三浦慶太郎は、時代も生まれも何も違っても一本の糸で繋がっている。いっぽうで網口愁と井田鉄也は違う。十郎ズ、.etc。向かおうとした方向に行けるんだよ、そんなメッセージを感じます。つまり冬坂五百里は無敵だという話です。ジュブナイル最高。


■熱いバトル展開

別ゲーとしか思えない「崩壊編」もよかった(その所以まで本編中にしのびこませるの、偏執的ですよ)。自分はデモリッシュブレード!レールガン!超大型ミサイル!インターセプター!大量の敵をいっせいに爆散、気持ちいい!くらいのやり込みでしたが、ガチプレイヤーの縛り動画をみたらそんな奥深いシステムだったのか……とびびりました。

でもやっぱり、ストーリー的にはこの2つ。

「第2エリア  WAVE0010」
もともとキャラセレクトで「網口」を選んでいるときのBGMが好きで、なにげなく聞き流してたりしたんですね。そしたらまさかの崩壊編でかかる。ここぞの場面で劇中歌が流れるザ・王道、おそらくはプレイヤーの大半が「こういうので良いんだよ」と口角をあげたはず。
(ラスト、ずっと「運命~だから~♪)だと思ってたけど歌詞みたら「uh yeah, lalala~♪」だった)

「最終エリア」
どうすんねんコレっていう敵の大群・大群と処理落ちによる緊迫感に、思わず熱をもって身を乗りだしてしまう。なにより、プロローグでは「誰だこいつら」だった13人が、もうこの頃にはひとりひとりに強い思い入れを持っているから、「なんとか持ちこたえてくれ」という気持ちがすごい。熱5割増し。初回はリアルに「やった……のか……?」みたいになりました。ここは難易度「STRONG」が映える。


■エンディング

本作がここまで売上と評判をジワジワ伸ばしているのは、一点の曇りもない晴れやかなエンディング、この後味による後押しが大きいと思います。『鋼の錬金術師』などと同じく、完璧すぎて逆に語れない(ここでもまた)、それくらいの大団円。

井田哲也までが救われるし(網口は「愁くん」呼びなのに井田は「井田くん」な因幡深雪よ……)、沢渡美和子や輪島武美に思いをはせ、みんなよかったなぁと思ってからの、ラスト

<シーンを脳内補完してほしい>

あの2人で締める!!ここがやばい。パッケージ絵をみても、鞍部編をはじめても、「この2人がくっつくのかな?」と誰もが最初に想像し、あさっての方向を向かれる。そんな2人が(プレイヤーとしては"この2人"ではないことも分かっていますが)、最後の最後に、最初に想像したその絵面を回収してくる……!実際、このシナリオって無駄に複雑なところもあるけども、このラストシーンへの壮大な迂回なら許せる。そしてもう単純に、どんなに拗れても一本の糸だけはつながり続けていた2人の関係性が良すぎる。本当によかったな。きみら2人で始まって終わるゲームだったんやなって……(アーカイブNo1の、時と舞台をこえようが一直線に幸せをつかめる拗れなきカップルから目をそらしつつ……)。


東雲先輩(余談)

いろいろ書いたけれど、本作で自分が最も心うたれたキャラクターは「東雲諒子」です。シナリオを転がすにあたっての''業'"ともいうべき仕組みの責任を一手に担わされた、悲しきピエロ&いわゆる戦犯キャラ……なのだけど、ふつう背負いすぎて倒れそうなところを、記憶喪失と自己完結でなんか切り抜けてくる。儚くも逞しく、繊細で図太い。十三騎兵のヤベーやつ。謎の塩梅、こんな何とも言えないキャラはそうそういない。そんな彼女の魅力を語録で。

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魅力1 つよい

「私に撃たせたいの?」

全キャラの中で最も発砲に抵抗のない''輩(ヤカラ)''。つよい。こんな儚そうなのに……。

「逆らうならそれでもいい 
 その頭を撃つ理由ができる」

めちゃくちゃカッコイイ。
なお見当ちが(

「妙な真似をすると撃つ」
(東雲……諒子先輩?鍵かかってるのにどうやって?)
「壊した」
(その銃で?)
「君を張っていた黒服も眠らせた」

網口編でも存在感を光らせるパイセン。唐突な登場から畳みかけるように火力の高いワードを連発する様にシビれざるを得ない。見事にいなす網口師匠との妙に軽妙なやりとりも良い。

「飲み物なんてなくても薬くらい服用できるわ
 子供じゃあるまいし…」

つよい

「それみなさい」

心配してくれる男子のまえで怪しいクスリを大量に飲みこみ「治った」と得意げにいい放つ姿はさすがの網口師匠をも閉口させた。
汎用性の高い語録としても重宝する。

「いいよ……わたし 先生が望むならあれで戦います」

CV:早見沙織。
疑いようなくつよい。
プロローグの声には一瞬で心をつかまれる(その後、転落する)。このころはまだ声が上ずっているのが後を思うと切ない。本作の声優さんの繊細な仕事はマジですごい。


魅力2 恵まれた容姿とCVからの

「全部私のせい?うそよ……」
「うそよ 薬で私をおかしくさせた」

だいたいが、逆にビビるほどウソではない。本人としては必死なのだが、本当におどろくくらい元凶でこちらが焦る(もちろん悪意はなかったり、同情、理解すべき点は多々ある)。進行を100%にしても本質的に救われていない。

「援護して」

唯一の個性として「セントリーガン」を2機同時に置けるが、第4世代の「インターセプター」と比べると性能がイマイチなうえ、おなじ場所におくわ、1回打つとEP不足に悩まされるわ、製作者の悪意すら感じる。
※追記:アプデで強くなった模様。良かったね

「馬鹿にするな!」

演技がよすぎる。前後の「?」といいキリッとしつつ微妙に抜けている印象をうまく出している。「それみなさい」と並ぶ重要語録。
にしても、なんでこんなに妙な面白さをもつセリフがおおいんだ。LINEスタンプに向いていると思う。

「瑛くん」

かわいい。
ふたりの幼少時代についてのDLCを誰もがまち望んでいる。


魅力3 役回りが切ない

利用されるのは構わない
あなたが望むなら
でも
先生の気持ちが他の子にあるのは
許せない

東雲を象徴する名セリフ。重要なのは「他の子」をどうこうする気は恐らくそんなないところで、自分と相手しかないその視界に、このキャラのなんとも言えない魅力(魔力)が詰まっている。

14番騎兵は先生が私のために用意してくれた
私の騎兵

誰にも渡さない

混濁する記憶のなかで想いを振り切った(銃殺した)にもかかわらず、完全に失われたはずの記憶にすらその残滓があり、結局なにも真実に至れないまま、想いの残り香だけで騎兵を起動する。おそろしく空回りなのだけれど、同時にひどく切実なその行動理由がマジで切ない(ここのBGMのストリングスがまた素晴らしいんだ……)。昔からどうも「思いが空回りしてしまう」キャラに惹かれる。そういう意味で井田も割と好き。(この記事、途中から文体かわってない?)

某軍人が焼きそばパンをモグモグ食べている間、こちらはクスリを大量摂取していたんや。この設定のシナリオだからこそ生まれた不思議なキャラクターだと思います。郷登くん、エピローグでは「諒子」呼びしていますが、支えてあげてほしい(網口くんがモーションかけるのは洒落にならないので控えてほしい)。


郷登蓮也と博士(余談2)

追記。「郷登蓮也」と「千尋(森村千尋博士、つか幼女のほう)」。この二人のやりとりも刺さります。もちろん比治山と沖野、三浦に南ほかも皆好きだけど、この二人はお互いに性格と関係性がややこしすぎて、俗にいう「カプ」の描写について色んな意味で新境地を切り拓いていてすごい。やばい。

ふたりの関係性とキャラを復習しましょう。
「千尋」は、ゲームマスターに近い全能を持ち、威厳に満ちた口調をしている絶対強者型幼女、兼 、熟女(??)。2188郷登蓮也に愛憎まじった思いを寄せており、いろんな意味で2188郷登蓮也≒「郷登蓮也」でもある。「郷登蓮也」は知的で顔立ちも整った、いかにも生徒会長的な存在で本当に有能。森村千尋先生が好きだった。森村千尋先生は「千尋」に殺されたが、いろんな意味で森村千尋先生≒「千尋」でもある。
……書きだすと意味不明な文章だけど、クリア者には理解るはず。つまりお互いが強者ポジ、かつ間接的に愛憎いりまじった相手で……。

この二人のやりとりは「関係性」の概念を異次元上で交錯しまくる。そもそもの力(尊敬)関係の基本が、「いかにもな生徒会長<<<幼女」であり、明らかな年上が幼女に下手・敬語で話しかけている、この時点で諸氏に刺さる。しかもこれが、真相解明の中で「威厳に満ちた口調した幼女←←を論理的に攻め立てる年上の知的眼鏡」になり(会話途中で逃げた相手を方向スティックで移動して問い詰めなおすゲーム操作の生理感覚よ)、「年上の知的眼鏡←←の恋心を的確に暴く幼女」になる。そしてお互いがニアリーイコールの思いを寄せていた相手への感情を「ありがとう」と「お願いする」で間接的に回収する。呼びかけを一度切っといて間をおいてから再接続し、"お願い"に対して「私は噓をついた どのことだか分かる?」「あなたをあやうく気にいるところだった」から見た目どおりの幼女として「頑張って……お兄ちゃん」と言う、この一連の異次元的シーン・セリフ回し好きすぎる。

最終盤の怒涛すぎる属性・関係性の交差、シナリオもさることながらこの関係暴風域を作り出した点でも脚本家は天才。無限がここにある。でも語ると、描くとネタバレになる……アァ……。


おわりに

いったいどういう記事だったんだ。ともかく、ものすごい複雑なSFを、群像劇の形でもって、それぞれにちゃんと魅力的なキャラクターを確立させながら、ゲームならではの切り口で語り切った。この作品に心から拍手をおくりたいです。

最後にクリア後に読んでみて、理解が深まったリンクを。

■ストーリー構造について
「あーそういうことね完全に理解した」から「なるほど……」くらいまで引き上げる良まとめ。
十三機兵防衛圏ネタバレ考察 | INFORNOGRAPHY
※リンクが切れてしまっていた……無念すぎる

■本編で語り切れなかった事柄について(公式トーク)
これは必見のたぐいです。「東雲先輩と郷登の恋人関係と関ヶ原の話」とか最重要エピでは?端折られたらしい各人のコミュとか、思いを寄せるようになった理由の会話とか、DLCでくれ……。
『十三機兵防衛圏』の裏情報が続々! 比治山、沖野、鷹宮の声優陣らが贈るトークイベントの模様をレポート - 電撃PlayStation

■ほかの人のプレイをみながら反復する
そしてこのゲームの更なる楽しみ方として、「他人のプレイを見る
」ことも挙げられる。「■シナリオとゲーム進行」項で書いたとおり、このゲームは人によってシナリオ構築の順序・組み方が違う。クリア後の自己理解をふまえながら、他人が十三騎兵防衛圏のシナリオに翻弄される様を見るのは、超、楽しい。みんな沢山配信・実況してほしい。VTuberだがこの辺どうぞ。

このゲームが更に広がり、心に残り、評価されますように。
そんな感じでおわり。



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