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涙の海で抱かれたい〜SEA OF LOVE〜 /サザンオールスターズ[感想]

サザンオールスターズは言わずと知れた
国民的バンドである。
桑田佳祐の紡ぐ味わい深く、明るい歌詞と、
キャッチーでクセになるメロディ、
そして、シャガラ声の特徴的な歌声と
ともに親しまれている。

また、「勝手にシンドバッド」で
デビューしたのが運命なのか、
バブルの時代の賑やかだった日本を
名残り惜しむかのように、
サザンオールスターズの曲は明るい。

記事のタイトルにも書いた通り、人気曲
「涙の海で抱かれたい〜SEA OF LOVE〜」
の感想について述べる。

曲を通して感じるのは、
甘酸っぱい夏の日を懐かしむ情景だ。
メロディは最初から最後まで、
ブラスバンドとギター、キーボードの
軽快な印象がある。
賑やかなビーチや海の渇いた風景を
思い浮かべさせる音楽だ。

反対に歌詞からは、
かなりの哀愁を感じ取ることができる。
美化された過去と寂れた現在が、
一変して語られている。

何処にいるのさあの日のように
恋の一言僕にください
振り向きもせず夏は去くけど
また太陽は空に燃えるだろう
さよなら僕の愛しのAngel
我が身は枯れても愛は死なない

「涙の海で抱かれたい-」が
発表されたのは2003年のことである。
バブルが崩壊して暗黒の20,30年の
真っ只中であった。

六本木ヒルズができ、
バブルはまだまだ続くのかなぁ
という違和感と、
郵政民営化が始まり、
小泉内閣は大人気で自民党政権も
まだまだ続くのかなぁと、
明らかに不景気であったり、
うまくはいかない気がするけれども
既定路線を外れない雰囲気が
日本に流れていた。

相撲界のプリンスだった
貴乃花は引退し、代わりに
朝青龍が台頭してきた時期でもある。
日本の終焉とグローバル化が押し寄せていた
時代とでもいうのであろうか。

閉塞感のような違和感のようなものを
孕んだ時代に、
リリースされた「涙の海で-」は、
バブルのような、賑やかな時代を
ノスタルジーに振り返るそんな歌である。

他にもサザンオールスターズが
提示してきた曲の中に
過去の賑やかさと、
寂れた現代の対比を描いたものがある。
2006年にリリースされた
「DIRTY OLD MAN 〜さらば夏よ〜」も
明るく親しみのある曲調であるが、何処か寂しい。
彼らは閉塞して疲れ切った想いに寄り添いながら、
明るく振る舞い、応援し続けてきた。

 世界観を作り出している
シンガーソングライターの桑田佳祐は
1956年生まれの65歳。
高度経済成長からバブル、
暗黒の30年を経験してきた。
時代に飲み込まれながら
自分自身を奮い立たせるように、
明るくおちゃらけた歌を歌ってきた。

 かと思えば、東北大震災直後の
「明日へのマーチ」「Let's try again」、
反日が強まった朝鮮半島の情勢を見て作られた
「ピースとハイライト」、
東京オリンピックを題材にした、
「東京VICTORY」と、
どれも聴いたら「あ、なんか聴いたことあるぞ」
といったヒット作だが、
それぞれの世相に合わせたメッセージ性の強い内容でもある。
風刺的ロックンロールを兼ね備えたバンドでもあると言える。

その他にも代表曲
「TSUNAMI」「真夏の果実」「いとしのエリー」
はどれも恋愛ソングの金字塔でもあり、
ロマンスを奏でられるのも人気のひとつか。

一言で、サザンオールスターズを表すと、
「バブルが産んだロックバンド」とでも言おうか。
日本の閉塞感と、バブルのめでたさを
両方を掛け合わせた上で、世間への風刺や
ロマンスでカッコつけては見るものの
みんなに親しみのある大衆性へと落とし込むことができる。

それがサザンオールスターズである。

「涙の海で-」はサザンのアーティストをよく表す曲であり、
バブル以降の閉塞感と懐かしみながらおちゃらけて見せている
世の中の雰囲気をもよく表した曲のようで、
ちょっとした時代を感じる一曲になっている。

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