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数のヨミカタの読書6

~データを多用した本の感想と解説~

 これまでは統計の入門書などを紹介してきましたが、今回は日本の人口減少・少子化をテーマにした本を2冊取り上げます。著者は各種統計資料やデータをふんだんに引用し、自身の主張を展開しています。
 少し実践的な「数のヨミカタの読書」です。

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること
河合雅司

未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること
河合雅司

 河合先生は、ジャーナリストであり大学の客員教授も務められている方です。また、政府の有識者会議の委員もされていらっしゃいます。これまでに「未来×××」という本を4冊ほど書かれていて、いずれも売れ行きは好調のようです。

 未来の年表の2冊は、日本の人口減少がいかに深刻な事態になるのか、具体的な事例を根拠となる予測データとともに紹介しています。根幹となる主張は、『少子化による人口減少をこのまま放置すれば、近い将来、非常にシビアな生活を国民に強いることになる』『早急な対策が必要であるにもかかわらず、国民も政治家も現状認識が甘い』というものです。

 1冊目の未来の年表の第1部では、2016年から2065年くらいまでに、日本がどのように変わっていくのかを示しています。目次(見出し)の一部を抜粋してご紹介します。

 2017年 「おばあちゃん大国」に変化
 2020年 女性の2人に1人が50歳以上に
 2025年 ついに東京都も人口減少に
 2030年 百貨店も銀行も老人ホームも地方から消える
 2040年 自治体の半数が消滅の危機に
 2050年 世界的な食糧争奪戦に巻き込まれる
 2065年~ 外国人が無人の国土を占拠する

 地方では過疎化が進み自治体として成り立たないケース、生活拠点として不適当な地域が頻発すると述べられています。一部の都市では人口の減少率が低くても、超高齢化社会(大量の高齢者の居住)により医療サービスへの不安や火葬場不足などの懸念があると予測しています。
 第2部では、これらに対する処方箋の提案がなされています。

 2冊目の未来の年表2では、未来年表(1冊目)をより身近な話に置き換えた内容になっています。第1部では、個々人の生活がどのように変化し、どのような社会が到来するするかについて、『住まい』『家族』『仕事』『暮らし』などを切り口として、具体的な事例が紹介されています。第2部では、前著と同様、将来に向けての改善策が記されています。

☆素晴らしい点、共感できる点
◆少子化による人口減少は、日本における重大な問題であると強く訴えている
◆広範囲に渡り数多くの資料・データを収集し、丁寧に解説している
◆日本社会と国民がどのような窮地に置かれるかを具体的に説明している

 この2冊の本を読み、日本での少子化と人口減少、高齢化は様々な問題を引き起こし、深刻な事態を招く可能性があることを知りました。
 例えば、出産可能な女性が大きく減少しているため、出生率が上昇しても、簡単には人口増加に転じないという指摘は非常に鋭く、私は日本の人口減少がしばらく止まらないことを確信しました。
 この主張の裏付けとして取り上げられているのは、25~39歳までの女性の数です。2015年1,087万人から2040年814万人となるそうです。2040年は今から19年後のことなので、予測値ではなく、ほぼ確定した数値です。比較のために総務省のデータを調べましたが、この年代の女性は1980年1,445万人、1990年1,233万人でした。

☆私の考えと異なる点、共感できない点 
◆将来予測のデータの前提が考慮されていない
◆経済学的な思考が欠けている部分がある
◆説明に論理的に苦しいものがある

 『将来予測のデータの前提が考慮されていない』点について説明します。
 人口をはじめとした各種データの将来予測のほとんどは、過去のトレンドをもとに予測値を算出します。これは、どんなに高度な数理モデルを使っても基本的には変わりません。よって、不測の事態が起こると予測が外れます。
 具体例を1つ挙げます。
 未来の年表2では、『2030年問題』と言われている、将来の日本のパイロット不足を取り上げています。(p.136-138) 国土交通省の資料に基づいた内容ですが、この問題が提起された時点で、コロナ感染症拡大による影響は全く考慮されていません。(当たり前ですが)
 過去に発生したことがない事象が起こると、将来の予測の精度が極端に低下する典型的な事例です。
 今後の航空需要の回復スピードやその量は不透明ですが、コロナ感染症の拡大により、長期的に飛行機利用の減少が続く可能性も否定できません。少なくとも、これまでの予測は見直しを行うべきであり、2030年のパイロット不足という問題は再検証が必要です。

☆まとめ
 インパクトを与えるために少し盛っている部分があるように感じますが、将来の日本において人口減少に起因する様々な問題が発生する可能性は高く、そのことについて警鐘を鳴らしている本であり、特に若い方に読んで頂き、問題に向き合って欲しいと感じました。

①統計資料や数学を使った本に興味がある方向け
 ※特に10~30代までの方に読んで頂きたい
②人口減少と高齢化が日本社会に及ぼす影響を予測し、警告を発している一般教養書
③数式なし
④ページ数 
 ◆未来の年表 およそ200ページ
 ◆未来の年表2 200ページ超
⑤所要時間 それぞれ120~180分程度
⑥おすすめ度 ★★★☆☆
 ※どちらか一冊読めば、著者の主張は理解できると思います。

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