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数のヨミカタの事例2 ~サッカーW杯アジア最終予選の記事を見て~

 来月(11月)も2022年ワールドカップアジア最終予選が2試合予定されています。日本代表は10月までに4試合を終え、グループ4位と非常に厳しい戦いを強いられています。
 この日本代表に関する報道の中に、過去のアジア最終予選との比較をしているものが散見されます。

 以下のフットボールチャンネルの記事(2021年10月8日)では、「初戦から3試合目までで勝ち点3以下は絶望的」という内容です。

 また、10月12日の読売新聞オンラインでは、「過去6大会のアジア最終予選では日本は2敗以下」という記事が表とともに記載されています。

 
 今回と過去の予選の比較には、最終予選の試合数が異なるという、大きな問題があります。
以下、Wikipedia掲載の予選試合数です。
【最終予選の1チームの総試合数】
 ・1998年フランス大会 :8戦
 ・2002年日韓大会   :8戦
  日本と韓国は開催国のため予選免除
 ・2006年ドイツ大会  :6戦
 ・2010年南アフリカ大会:8戦
 ・2014年ブラジル大会 :8戦
 ・2018年ロシア大会  :10戦
 ・2022年カタール大会 :10戦

  数字の比較は、条件がそろわなければ全く意味がありません。
 2つの記事では、母数(分数で考えると分母に相当)が異なっているものを、さも同じ母数であるかのように扱っています。ここでの母数は全試合数です。アジア最終予選は、前回(ロシア大会)と今回は同じ10試合ですが、それ以前は8試合以下です。このため、勝ち数や負け数、勝ち点を今回と過去で比較するのは公平ではありません。 
 初戦から2連敗した場合を例に説明します。全6試合の予選であれば、残り4試合(全試合の66.7%)です。10試合あれば、8試合(同80%)残っています。挽回の余地は、後者の場合の方が大きいのは明らかです。

 日本代表が厳しい状況であるということに私も異論はありませんが、その厳しさを説明するために使われているデータは、適切とは言えません。権威あるメディアが、統計学でとても重要な母数の問題をないがしろにしている点は、とても残念です。

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