黒岩徳将句集『渦』を読む。
黒岩徳将氏の句集『渦』を読んだ。
装丁
銀色を基調とした装丁が美しい。
銀色で厚みがあるせいか、
重厚感や近未来感や機械感がある。
本棚に収めた際、
背の厚みやフォントがかっこいい一冊。
選
付箋をたくさん付けながら拝読したため、たくさん引用しようかと思ったが、感想などを書きたい句を厳選して紹介。
バンズよりはみ出す肉やサングラス
バンズ(ハンバーガーのパン)からはみ出す肉と、
サングラスからはみ出す顔(の肉)の取り合わせに、意外性がある。
ハンバーガーとサングラスの取り合わせはちょうど良い距離感だが、
見立ての部分が句に個性を出していると思う。
もろこしを動く歩道で頂きぬ
お祭りの一場面だと読んだ。
お祭りだからこそ、歩く歩道でとうもろこしを食べていても違和感が無いが、
普段なら変わった行動になる。
お祭りの楽しさと、
お祭りの持つ「非日常のマジック」を切り取った一句。
傘が地に触れて東京ひこばゆる
空想の景だと読んだ。
映像がファンタジーめいていて素敵で、
日常で使う傘があたかも魔法の杖のように描かれていて面白い。
唇も鼻も隠るるトマトかな
トマトの大きさと、
トマトを丸齧りしているという二点が、
短い言葉に集約されている。
構成及び語の選択の巧みさを感じる一句。
在宅といふ夕蟬の終はり方
ご自宅でのリモートワーク中に蝉の鳴き声が聞こえて生まれた句ではないか、
と推測した。
「夕蟬」の一語で、
夏の夕方だと分かる点と、
蝉の持つ儚いイメージが共鳴している。
季語が活用されており、
こういった季語の使い方は拝読していて勉強になる。
まとめ
句集一冊を通じて、それぞれの句に、
見立ての面白さ、
構成の工夫、
観察眼の鋭さがあり、
勉強になる一冊。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
もっと面白い記事を書けるように日々頑張ります。
次回もお楽しみに!