神速の田内さんがいないと行列
出勤まで時間がない。焦って足がむずむずする。
母校の大学の食堂で先輩とお昼ご飯を食べることにしたため、小走りで向かう。
初めて行ったとき、店内の隅に置かれていた観葉植物の土がこぼれているのを見て「清掃が甘いな」と生意気なことを思っていた定食屋は、横目で見ると新しい看板になっていた。店内も新しくなっているのかな。
学生であふれかえる学食内は、周りの目を気にしすぎていた大学時代よりもむしろホームグラウンドで、見渡す限りの学生は景色の一部に感じられた。
学食では現在北海道フェアをやっているみたい。
担々麺の文字が目に入った直後には、「noodle🍜」の行列の一番後ろに並んでいた。時間がない。さっきよりも足はむずむずする。でも担々麺食べたいもん。
空いているおかずレーンで小鉢を集めてダイエット定食を完成させた先輩は、すでにそれに向かって両手を合わせている。となりの席にちょこんと置かれた緑茶のコップは僕のための席確保だ。イケメン。
「担々麺1.5で」
時間がないのに口になじんだ1.5玉の注文をしてしまった。まあ急いで食べればいけるっしょ。
しかし、後ろを振り返ると先輩は着実にダイエット定食を食べ進めている。まずい。急がないと。足はずっとむずむずしている。
厨房では機敏な動きのおばさんとぎこちない動きのおばさんがなんとか共同作業をしている。新人さんかな。
待ちに待った担々麺にきちんとゴマを一振りして完成させる。コップに緑茶を注いで緑茶の置かれた席に向かう。
あっ。
わが子を抱き上げるように丁寧に担々麺を持ち上げてすする。なんだか味が薄い。たしかに入口のモニターで輝いていた担々麺はもっとビビッドだった気がする。スープとお湯の分量間違えてるのかなぁ。まあそんなこともあるかぁ。
二杯の緑茶を二口で飲むと、「ほなまた!」
先輩ともあっさりとお別れをして出勤。なんだかんだ時間余裕みたい。よかった。
同じ形の雲が4つも5つも並んでいる。足はもうむずむずしてなかった。
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