職場は安全基地になり得るのか
入社から3年所属したユニットを離れた。
ユニットを離れるだけで、部署や業務内容、勤務地が大きく変わる訳ではない。
けれども、とてつもなく寂しい。自分でも不思議なくらいだ。
なんでこんなに寂しいのだろうと考えながら、ひとつの単語が心に浮かんだ。
それが「安全基地」である。
安全基地とは
私が大学の頃に学んだ「子どもの福祉」。その中で最も重要とされていたのが小さい頃の「愛着」と「安全基地」である。
「愛着」とは、特定の養育者との間に形成される信頼関係のこと。乳幼児期、生まれてから2歳半くらいまでの間に特定の大人(両親など)との関係によって築かれる。
・時間を作って一緒に遊んでくれる
・1人で遊んでいる私をいつも気にかけてくれる
・転んで泣いたら駆け寄って抱っこしてくれた
そんな小さなことの積み重ねで、愛着は形成される。
愛着関係が不十分であると精神や脳の形成にまで影響を与えると言われており、生涯に渡ってその子に「生きずらさ」を背負わせる可能性もある。これは乳幼児期を過ぎてからの対人関係によって改善することもあるが、多くの場合改善するには困難が伴う。
・・・
そして、十分な愛着関係によってもたらされるのが「安全基地」である。
安全基地とは、「心の拠り所」。愛着から「基本的信頼関係」を得られた子どもたちは
・何かあっても絶対に守ってくれる
・何かあったら助けてくれる
・ダメでも戻ってこれる
という安心感を持って生活ができるようになる。そしてこの安心感は、
・外に出て行こう
・何か新しいことを始めよう
・チャレンジしてみよう
という積極性・好奇心・探究心などに繋がっていく。
子どもの福祉を考える際に、その子の愛着スタイルがどのような状況なのかや、今後どのように育むべきか考えること、そして安全基地となり得る居場所を作ることがとても重要な要素となる。
私の安全基地ができるまで
私の所属していたユニットは社歴が20年以上も離れた先輩が5人のユニット。ジェネレーションギャップというか、ほぼ親子…いやお兄さんたちとしておこう。
そのユニットに新卒で入るのは私が初めてだった。
おそらく先輩たちは相当困っただろう。初めての新人、そして女の子。どこまでやらせていいのか、どこまで言っていいものか、気を遣わせたことだろうと思う。
そして、私もどのように仕事を進めたらいいのか、大いに悩んだ。マニュアルもなく、業務内容も途切れ途切れでなかなか全体像が掴めない。先輩たちの独り言なのか、会話なのか判別のつかない呟きや、少年のようなじゃれあいのやりとりへの返答の仕方…笑
・・・
子娘を相手に先輩方は決して諦めることなく、私を育ててくれた。
キャパがなく、私じゃできないと感じたら「できない!」とはっきり言い、1人じゃ不安な時には容赦無く先輩に頼る子娘。そんな子娘の言う言葉に耳を傾け、時に忠告し、時に持ち上げ、私が憤っている時やうまくいかず悩んでいる時にはお菓子を与えて…笑 しっかり仲間として仕事をさせてくれた。
年齢も経験も感覚も全然違う先輩方に囲まれて3年。
こんなに寂しいと思うとは、予測がつかなかったほどに、このユニットに愛着を感じている。私が安心して仕事を進められたのは、紛れもなく温かく見守ってくれたユニットのおかげである。
そう、まさしく私の「安全基地」だ。
職場に安全基地を求めるのは甘えなのか
正直私はかなりメンバーに恵まれた幸せ者だと思う。こんなにいい環境が自分の職場にあるのは、稀なのかもしれない。そう思うほどにこのユニットが好きだった。
一方で見る人によっては、かなり甘やかされた環境に感じるかもしれない。
・頑張っておいで
・何かあったら、すぐ助けるよ
・疲れたら一緒に一息つこう
そんな安全基地を職場に求めるのが、甘えだと言われるのかもしれない。そんなのプライベートでどうにかしろ!と言われれば、まあそうなのかもしれない。
でも、私は安全基地があったから今ここにいれていると思う。安全基地がなかったら耐えられなかったと感じることなんていくつもあったし、憂鬱な月曜日を乗り越えることはできなかっただろう。
職場の安全基地=人生の満足度
人生における「仕事」の立ち位置は、特殊だ。生きるための手段であるはずの仕事に1日8時間くらい(それよりもっと?)費やしている。もちろん仕事を通しての自己実現もあるから、「生きるための手段」と言い切ることはできないし、人生の選択肢が増えた現代であれば、拘束時間の少ない仕事に転職することもできる。
だけれど、多くの社会人(会社員)が一定時間を拘束され、大なり小なりのストレスを抱えて働いている。
そんな現状において、職場への信頼感・愛着(=安全基地)があるかどうかは、直接生活の満足度に繋がるように思う。
そして企業にとっても、社員がその職場を安全基地と感じることでができる環境を整えることはプラスに働く。社員が安心感を持って働ければ、好奇心・探究心が増し、新たなことへの挑戦や社外への働きかけに積極的になれる。
難しそうな調子で書いてきたけれど…
総じて言いたいのは、私はとても恵まれたメンバーと仕事ができたし、所属したユニットが大好きだったと言うこと!
そして、こんな環境が多くの社会人にあるといいんじゃないかなぁ〜と。そう思うのです。
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