お母さんの手~母の日に寄せて~
なんだかかゆい…
最近手の甲がガサガサしてきた。
「あ、お母さんの手…」
専業主婦の母の手は、冷え性で色が悪く、
いつもガサガサしている。
冬になると寒すぎて真っ赤に変色して、
シワシワで、
今にも死んでしまいそうな手になる。
最近、そんな母の手に似てきた。
コロナの影響で外食は減り、
休日も自宅で過ごす時間が増えた。
ツレも私も飲みに行ったり、
外出するのが大好きなので、
こんなに続けて自宅でご飯を食べるのは
初めてのことである。
その結果、
ご飯づくりと皿洗いで急激に手が荒れてきた。
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その話をツレにしたら、
「ちゃんとハンドクリーム塗りなね」と言って
ニベアの特大青缶を渡された。
「ハンドクリームかあ…」
なんとも乗り気がしない…
ふと母と交わした会話を思い出していた。
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数年前の母の日。
私と、4歳上の兄は母に少し良いブランドの
ハンドクリームセットを渡した。
小さいチューブに香りの違うハンドクリームが
入っている、6本くらいのセットだった。
「母さんの手、いつも荒れてるから。」
地元を離れて暮らす兄の提案で決まった
プレゼントだった。
届いた瞬間、母はぱあっと満面の笑みになり、
大事そうに1つ1つのハンドクリームを開け、鼻を近づけ、香りをかいだ。
「ありがとうね」
そう言って、大事そうに元通り箱に閉まった。
その日の夜、
母の手からは外国のいい香りがしていた。
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半月ほど経ち、ふとその箱を見ると、
新品のままではなかと思うほど
全然減っていないハンドクリームが入っていた。
「お母さん、全然減ってないじゃん。
そんなに高級なものじゃないんだから、
毎日つけないとガサガサ治んないよ」
「そうなんだけどね~…」
「お兄ちゃんがせっかくお母さんの手が治るようにって買ったのに…」
「夜は塗るようにしているのよ。
でも日中はね~…」
「お母さんクラスのガサガサは
日中も塗らないと治らないよ~笑
なくなったらまた買ってくるって!」
「そうなんだけど…
ほら、日中はご飯作るでしょう?朝はお父さんの弁当、昼過ぎたら夜ご飯の準備して…。
どうしてもハンドクリーム塗った手で食事を作るのが嫌でね…
せっかくもらったものなのに洗い流すのも、心苦しくて。
そのほかの時間も買いもの行ったり、掃除したりでなんだかんだ手洗っちゃってね~」
「ふ~ん、そっか~」
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その時には知らなかった。
手が荒れるとこんなにかゆいだなんて…
こんなに水がしみるだなんて…
それでも頑なにハンドクリームをしないで、
家事をしていた母。
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今も母の手はガサガサしている。
冬には赤いの通り越して紫色になる。
そして相変わらず実家に帰ると、
そのガサガサな手でたくさん料理を
作ってくれる。
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私が作る料理もどことなく母の味に似ている。
ネットでレシピを見ながら作るのだが、
食べたいものを思い浮かべると
実家を食事を思い出すし、
微妙な塩加減などは実家に似通ってくる。
それを『美味しい』と食べてくれるツレ。
その一言のために頑張ってしまう自分がいる。手がかゆくても、何品も作ってしまう…。
本当に罪な言葉だ。
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ガサガサしてきた手をちょっと誇らしく
思いながら、ツレから渡されたニベアを塗る。
「塗ってもお母さんの手みたいだ。」
そう心の中でつぶやいた。
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さて、今年の母の日は何をあげようか。
きっと兄は忙しいから、父の誕生日に続いて、
今回もプレゼント選びは私の役割になりそう。
父の日には兄に任せることとしよう。
コロナで大好きな温泉に行けていない両親には入浴剤とかかな。
そろそろ決めないと…
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