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職人の手が生み出す、座る芸術——I.S.U. house 上柳の世界を伝える(東京都)

PROJECT NOTE
I.S.U. house Web&会社案内制作(東京都)

椅子はただ座るための道具ではなく、空間の質を決定づける存在でもあります。長年使い込むほどに味わいを増し、職人の手仕事によって息づくような家具。そんなクラシックスタイルの椅子づくりを50年以上続けてきたのが、「I.S.U. house 上柳」です。

今回、私は 会社案内とWebサイトの制作 を担当し、彼らのものづくりの哲学をデザインとして可視化する役割を担いました。職人の手による美しい椅子を、どのように伝えるか——。その過程で考えたことや工夫したポイントをご紹介します。



「I.S.U. house 上柳」とは——本物を知る人のための椅子工房

©︎I.S.U.house上柳

I.S.U. house 上柳は、フランスから輸入した椅子のフレームに、独自の技術を加えて仕上げる工房です。特筆すべきは、完全オーダーメイドであること。座面のスプリング、馬毛の詰め方、布地の張り方まで、一脚ずつ職人の手で丁寧に仕立てられます。そのため、一度購入したら何十年と使い続けられる、まさに「一生もの」の椅子です。

©︎I.S.U.house上柳

特にクラシックなヨーロッパスタイルの椅子を中心に手がけており、ルイ15世様式やロココ調のデザインを見事に再現。歴史的な美しさを持ちながらも、日本の住空間に馴染むような仕上がりになっています。

私たちは、この伝統技術の奥深さを伝えるために、会社案内とWebサイトのデザインに取り組みました。


「会社案内」——職人の技と歴史を可視化する

会社案内は、単なるパンフレットではなく、企業の思想や技術を伝える「ブランドの顔」となる重要なツールです。特に、職人の手仕事が主役のI.S.U. house 上柳では、その細やかな技術をいかに誌面で表現するかが課題でした。

©︎I.S.U.house上柳
©︎I.S.U.house上柳
©︎I.S.U.house上柳
©︎I.S.U.house上柳

こだわったポイント

  1. 「時間をかける価値」を伝える構成

    • 使い捨ての大量生産ではなく、「修理しながら長く使う」価値を強調するため、椅子が仕上がるまでのプロセスを細かく紹介しました。

    • 木材の選定、フレームの組み立て、クッションの充填、張り地の仕上げ……と、ひとつひとつの工程に込められた技術を写真とともに解説。

  2. 「手触りまで感じられるデザイン」

    • 仕上がった椅子の美しさだけでなく、職人の手の動きや素材感を伝えるため、テクスチャのある紙を使用。

    • 触れたときに「質の高さ」が伝わるデザインを意識しました。

  3. 「職人の顔が見える誌面」

    • 上柳の職人たちの姿を前面に出し、「誰が、どのような想いで作っているのか」をしっかり伝える構成にしました。


「Webサイト」——静かに語る、美しい椅子の世界

一方、Webサイトでは「視覚的な美しさ」と「使いやすさ」のバランスを意識しました。クラシックな家具の持つ上品な世界観を保ちつつ、現代のユーザーにも親しみやすいデザインを目指しました。

デザインのポイント

  1. 「静かに引き込む」写真の選定

    • 派手な装飾はせず、あえて静かに語りかけるような写真を厳選。椅子そのものの魅力が引き立つよう、ライティングにもこだわりました。

  2. 「ストーリーのあるUI/UX」

    • 単に製品を並べるのではなく、椅子ごとに「なぜこの形なのか」「どんな空間に合うのか」といったストーリーを掲載。

    • 伝統的な技術を説明する動画も取り入れ、手仕事の魅力がダイレクトに伝わるようにしました。

  3. 「購入後も続く関係性」

    • I.S.U. house 上柳の椅子は「一度買ったら終わり」ではなく、張り替えや修理をしながら長く付き合うもの。そのため、修理やメンテナンスの情報を分かりやすく掲載し、「使い続ける楽しさ」も伝えました。


「伝統を守る」だけで終わらせない、職人の挑戦

今回のプロジェクトを通じて感じたのは、伝統工芸は「守るだけ」では続かない ということです。I.S.U. house 上柳の椅子は、ヨーロッパの伝統的なスタイルを継承していますが、それをただ再現するだけではなく、日本の住空間に合わせた進化を遂げています。

たとえば、「日本の住宅事情に合うようにサイズを調整する」「オーダーメイドで身体にフィットする座面を作る」など、職人たちは時代に合わせた工夫を重ねてきました。

これは、単なる「古き良き技術」ではなく、「今に生きる技術」 なのだと感じました。


「I.S.U. house 上柳」の椅子がもたらすもの

この会社案内とWebサイトを制作しながら、私は改めて「良い椅子とは何か」を考えました。それは、単に座り心地が良いだけでなく、「長く使いたくなるもの」 ではないでしょうか。

I.S.U. house 上柳の椅子は、長年の経験と手仕事の技術が生み出した、まさにそんな一脚。座るたびに心地よさを感じ、時間とともに愛着が増していく。今回のデザインを通じて、その魅力が少しでも多くの人に伝わることを願っています。


最後に

「良い椅子」は、人生の一部になります。I.S.U. house 上柳の椅子が、これからも多くの人の暮らしの中で息づいていくことを願いつつ、プロジェクトに関われたことを光栄に思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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