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副業人材がタッグを組み、老舗和菓子店のDX支援

PROJECT NOTE
柚餅子をはじめとした和菓子製造・販売「中浦屋」(石川県)

私は石川県輪島市で事業を展開されている中浦屋様のデジタルマーケティングチーム「デジマ次世代創造室」の一員として、老舗企業が新たなデジタル時代に対応するためのブランド構築と戦略設計に携わりました。


プロジェクトのはじまり

中浦屋様は、1910年創業の輪島の老舗であり、伝統菓子である「丸柚餅子(まるゆべし)」を中心に多くの製品を手掛けてきました。しかし、プロジェクト開始当時は地元の人口減少や観光需要の変化に伴い、売り上げが低迷していました。

この課題を克服し、中浦屋様の魅力を次世代に伝えるべく、マッチングサービスを通じて副業人材が6名立ち上がりました。(詳しくご覧になりたい方は以下の記事にて)

私はブランド体系の整理やガイドラインの制作、自社ECサイトの構築を中心に支援しました。また、経営データの分析をもとに、実店舗との連携を意識した包括的なデジタルマーケティング戦略を提案しました。

デザインとデジタルで紡ぐ新たなストーリー

中浦屋様とのプロジェクトでは、以下のポイントに注力しました。

©︎柚餅子総本家中浦屋
  1. ブランドの再構築
    丸柚餅子という伝統菓子が持つ価値を現代の消費者にどう伝えるかを考えました。その結果、「伝統を尊重しながらも革新を受け入れる」という中浦屋様の姿勢を、デザインとストーリーで表現することにしました。

  2. ECサイトの刷新
    ECサイトは、若い世代をターゲットにした重要な販売チャネルとして位置づけました。商品の魅力を視覚的に伝えるだけでなく、カロリーや原材料などの情報を充実させ、健康志向の消費者にもアピールしました。

  3. デジタル戦略の実行
    SNSを活用した情報発信や、オンライン広告、季節ごとのDMなどを通じて、新しい顧客層へのリーチを拡大しました。これにより、観光客が激減したコロナ禍においても売り上げを維持し、特にECサイトでの売り上げが向上しました。

挑戦を乗り越えるための創意工夫

©︎柚餅子総本家中浦屋

中浦屋様とのプロジェクトでは、多くの困難にも直面しました。特に、伝統とデジタルを結びつける作業は容易ではありません。伝統技術を継承しつつも、それを新しい価値として現代の市場に届けるためには、与えられたものだけでなく創意工夫が求められました。

例えば、丸柚餅子の魅力をより広く伝えるために、現代の食文化に適した提案を行いました。ユズの香りと相性の良い赤ワインとのペアリングや、薄切りにしてチーズと合わせる新しい楽しみ方を発信することで、伝統菓子の可能性を広げました。

また、ECサイトの売り上げ目標を当初の5倍に引き上げる挑戦も行いました。この目標は一見すると実現不可能に思えましたが、データ分析と効果的なマーケティング施策を通じて、徐々に達成可能なものへと近づけることができました。

鍵となったのは、副業人材と従業員の協業です。プロジェクトである以上、必ず終わりがあります。副業人材が抜けて元通りになっては意味がありません。お互いの知見を丁寧にすり合わせながら協業していくことは、何よりも重要です。

未来への願い

2024年1月1日に発生した能登半島地震により、中浦屋様の生産工場1つと輪島市内の店舗4軒が被災し、そのうち生産工場と店舗3軒は壊滅的な被害を受けました。この試練に直面しながらも、中浦屋様は地域に根ざした伝統を守り続け、未来へと歩みを進めています。

輪島の地で脈々と受け継がれる伝統を守り、新しい挑戦を続ける中浦屋様に、ぜひ皆様の温かいご支援をお願いいたします。ここまでお読みいただきありがとうございました。

これまで取り上げたPROJECT NOTEはこちら