お金を使わなくなっている。
お金を使わなくなっていると聞いた。これは知人からタイでも生活が苦しく
なって庶民の財布の紐がさらに締まったことを言っている。
これまでもすでに悪いけど、さらに厳しくなるということだ。
経済的に良い材料はない。大手企業に勤めていれば、まだ、安泰?かもしれないけど零細企業は相当苦しい。
チェンマイでも川沿いの観光客向けのレストランも閉まったままだし、
観光客を相手にしていたナイトマーケット通りもずっと閉まっている。
知人が海沿いの観光街であるパタヤの写真をFacebookに上げていた。
まるで廃墟のようだ。通りは無人。店はシャッターが降りたまま。
しかし、一方ではこんな風景を僕はみた。
今、僕は日本のテレビ番組の取材撮影をしている。コーヒービジネスを成功させてタイでも有名ブランドに育て上げた人を取材している。
先週末、メーリムの外れにある彼の工場兼カフェで撮影をしていた。
午前11時くらいから観光客とわかる人たちが訪れる。身なりを見るとそれなりに富裕層だ。
奥様たちは有名ブランドものカバンを持ち、キンキラした時計をしている。バンコクからの旅行だ。今、国外に旅行できないのでお金のある人たちはチェンマイに来ているそうだ。
皆さんワイワイとコーヒーを楽しんでいる。
他にも僕の友人のレストランは座れば1名最低でも7,000円はする。寿司を食べれば9,000円。お酒を飲めば軽く1万円は超える。
タイの庶民からすればかなり高いディナーになる。しかし、ずっと予約でいっぱいだそうだ。タイの富裕層は今、いくところがない。美味しいと評判の彼の店は口コミだけでいっぱいだ。そして、富裕層にとって1万円など100円くらいの感覚だろう。
この国の人口1%の富裕層がタイの3分の2の富を持つ。この国の一握りの富裕層がスーパー、ショッピングセンター、コンビニ、ビール、免税店、雑貨販売、あらゆるものを独占している。
高価な車やコンドミニアムは好調に売れているとニュースで報じられていた。
一方、多くの人が失業している。3月くらい時点では700万人は失業するだろうと言われていた。しかし、実際、政府は840万人が失業するだろうと予想しているそうだ。そのうちの4分の1は観光業に従事する人たちが占める。
この国の格差はどんどん広がっていくばかりだ。
この政府はあまり頼りにならない。
今、学生が反軍事政権を掲げて動き出している。この動きはさらに大きくなりそうな気配だ。
経済的にはコロナ禍のなかでワクチンがタイにも出回らない限りGDPの19%を生み出す観光業は復活しない。
そうだとしたら、来年はもっと経済が悪くなる。
さらに人々の不満は大きくなる。その不満はどこに向かうのか。
コロナが塞がっていた様々なパンドラの箱を開けていくあと押しになるかもしれない。
奥野安彦