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わたしたちは幾何学の水盤に巫祝する。
言葉を繰(く)ることを選び、この地上に播種されたわたしたちの。金色(こんじき)のかけらを幾千も幾千も。ひかりの素肌に変えて。目覚める。素足からそっと。限りなくやわらかくやわらかく脈動してまばゆく螺旋状にそのかたちをかたどりゆくわたしたちの命脈の。この地上に熱をおびてとけあう命脈の。
楽園?
そうねきっと。
楽園。わたしたちの最後のひとしずく。
ずっとずっと大切に憶えてたの。
*
*
*
目を開けてもいいよ。
いっしょうぶんの。
いちにちのひとしずく。
だきしめられたからだの。
そのうでをつたって。
わたしのからだ。
真昼のぬくみに戻って。
海。
海。
海。
ひかりの海。
すき。
*
*
*
この海が海であることを証明するために、
わたしの呼吸は内在する。
潜象されたひとつひとつの。
ひとつひとつの鳥たちによせる鎮魂のために。
見あげる。
いつかあなたがそうしたように、そっと。まばゆく。仰ぎみる。
天高く広がりゆくこの空をすべての鳥たちの高度まで高く高く。
遠のいて遠のいて遠のいて遠のいて…
呼吸するわたしのみずなるからだ。
何もかもすべてひかりであったこと。
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*
*
「生きててくれてよかった」
ひと群れの言葉が与う。
曇り日の雲間からふりそそぐ午後の陽を合図に。
ひらかれゆく。呼び声。
静かにほころびてゆけるのならあまたのあなたなるひかりを灯して。わたしのからだ。正常に機能して、
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*
*
たしかにそうだった。
この地上に降(お)りくるすべての雨音の。
土の香(か)に環状に配されて古代へと触知する。
鳥船。あめのとりふね。
ていねいにていねいに。
わたしのみぎわまでていねいにていねいに壊れないように壊れないように漕ぎだして。
極まり。霧散する。天高く。かの神々の領野まで。
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*
*
水晶水晶水晶…。
わたしたちは幾何学の水盤に巫祝する。
天球をゆびでなぞり。
軌跡をそっと残して。
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![みづなか抄|奥野](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48955887/profile_6ca09f2f07ea02094c3e535a9173e173.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)