二つの磐船神社
JR学研都市線に「河内磐船」駅があります。磐船神社に因む駅名だと思いますがこの駅の近くには磐船神社はありません。磐船神社は大阪府交野(かたの)市私市(きさいち)9ー19ー1にあります。私市は難読地名としても有名です。京阪電車にも私市駅がありますが、神社には近鉄の生駒駅から北田原行きのバスで終点下車10分です。神社は磐船街道沿いにあり、かつては国道168号線でしたが道幅が狭く渋滞しました。今はバイパスが出来て車はそちらを通りますから静かに参拝できます。なお168号線は新宮から奈良の五條や生駒を通り枚方市に抜けます。新宮から五條の間は神武の大和入りのコースの可能性があります。
磐船神社のホームページによりますと、物部氏の遠祖神(とおつみおや)天孫饒速日命を祀り、天の磐船を御神体とする饒速日命降臨の聖地、十種瑞宝鎮魂は日本の祈祷の根本であり、饒速日命が天照大神より授かり伝えられたものです。とあり、ここが饒速日命の降臨した「河内国河上哮ヶ峯」としています。祭神は天照国照彦天火明櫛玉饒速日命で、御神体は天の磐船。饒速日命が高天原より降臨した際に乗ってこられたもので、まったく独立した巨石(高さ12m、幅12m)で他の石と微妙なバランスを取りながら天野川の上に覆い被さっています。岩の舳先部分には大坂城築城の際に石垣の材料とすべく試みて失敗した加藤清正の名前が彫られているが風化して読めないそうです。
磐船神社には岩窟拝観があります。古来神道家や修験の行者が修行した行場で、多数の巨石が洞窟を形成しその中を天野川が急流となって流れています。そこを巡ります。特別な行法を知らなくても、岩窟巡りをするだけでも修行になると言われています。挑戦してみませんか?きっと達成感を味わえると思います。
磐船神社の起源は不詳ですが、交野に勢力を持っていた肩野物部氏という物部氏の傍系が氏神として祭り一族が深く関わっていたとされます。物部守屋が滅びたのち、肩野物部氏は没落してこの地域から一掃されてしまいます。中世以降は山岳信仰や修験道の行場として栄え、その後、天の磐船に因んで航海の神である住吉三神の信仰が入ってきます。これは住吉大社の神主の津守氏(つもりうじ)がニギハヤヒの子孫であることが関係しているとの説があります。境内に四社明神と呼ばれる四体の石仏があり、大日如来、観音菩薩、勢至菩薩、地蔵菩薩で住吉の神の本地仏だそうです。津守氏は世襲で住吉大社の神職を勤めていた一族で、明治維新後は男爵になっています。火明命(ニギハヤヒと同体)の七世の孫建簀草命が始祖と伝えています。
磐船神社は天野川の氾濫でたびたび被害を受けています。
大阪府の泉佐野市に磐船神社を勧請した泉州磐船神社(泉州航空神社)があります。この神社は関西国際空港の建設を契機に昭和58年(1983)12月10日に設立された神社です。兵庫県神戸市の北野天満神社宮司の次男が新空港の守護神社の創建を志し、10年を費やして建立しました。祭神は饒速日命。神社のホームページによると、祭神は航空宇宙の先駆者。天の磐船とは岩の様に丈夫な空を飛ぶ乗り物でありこれが有史以降空を飛んだ初めであり、命は鉄を司り、武をもって代々朝廷に仕えた物部氏の祖神であり、鉄鋼の神、武勇の神。とあります。航空資料館もあり、無料開放されています。場所は泉佐野市上瓦屋(かみかわらや)392ー1。南海電車井原里(いはらのさと)駅から徒歩10分。
関西国際空港は平成6年(1994)9月4日に開港しました。
北野天満神社は神戸市中央区北野町3ー12、異人館街の「風見鶏の館」の東隣。平清盛が治承4年(1180)に福原に遷都した際に禁裏守護と鬼門鎮護のため京都の北野天満宮を勧請して創建されました。