式内社伊和都比売神社の論社ー稲爪神社と岩屋神社

 稲爪神社は式内社の伊和都比売(いわつひめ)神社と宇留神社の論社とされています。祭神として伊和都比売命や宇留命が祀られています。稲爪神社は元は播磨国明石郡に属し、延喜式神名帳には明石郡9座(大3小6)が登載されています。このうちの大3座は神戸市垂水区宮本町5ー1にある海神社(わたつみじんじゃ)1社で、海神社の祭神は3柱の綿津見神です。小社6座の中に伊和都比売(賣)神社と宇留(うるの)神社があります。なお、播磨国赤穂郡にも伊和都比売神社がありますが、こちらは赤穂郡であり明石郡ではありませんが社名が同じということから、その論社となっているようです。
 明石郡の式内社「伊和都比売神社」の論社は、稲爪神社のほかに、ともに明石市にある岩屋神社と伊弉冊神社となっています。
 稲爪神社の由緒書によると「伊和都比売大神 古くは現本殿の西側に鎮座され、現在はご本殿に合祀されています」とあります。また別説では、稲爪神社の現社地は、もと式内社伊和都比売神社の鎮座地であったが、中古に稲爪神社がここに鎮座したため、地主神として本社の左に並べて鎮座したといい、慶応4年までは境内に社があったとなっています。これらの記事によると、もとは稲爪神社と伊和都比売神社がともに存在しており、そのうちの伊和都比売命を祀る伊和都比売神社が延喜式神名帳に登載されたということで、大山祇命を祀る稲爪神社が式内社であったということではありません。
 『神社霰録(じんじゃさんろく)』は式内社の「伊和都比売神社」は大蔵谷中庄村の「岩屋明神」に比定しています。中庄とは明石川の河口左岸側の地名で、現在は「岩屋神社」が鎮座しています。ただその場所は大蔵谷ではありません。
 岩屋神社は明石市材木町(ざいもくちょう)8ー10に鎮座し、主祭神は伊弉諾尊です。配祀神に蛭子命(ひるこのみこと)を祀るところから「岩屋ヱビス」という別称があります。社伝によると、成務天皇13年6月15日に勅命により、淡路島の岩屋より神を勧請して創建されたと伝えられています。また同年、夢に当地の子供に淡路島の岩屋の神が懸かり、当地に勧請するようにというお告げがあったので勧請したという伝承もあります。いずれにしても淡路島から神を迎えたということになります。明石浦の名主、前浜六人衆が新しい舟を仕立てて淡路島から神を遷す際、海がたいへん荒れて舟を明石浦の浜へ着けることができず、西方の林崎前の赤石(明石の名の起源)へ舟を着け、海難防止と豊漁を祈りました。明け方には海も静まり、現在の地に無事神様をお迎えすることができました。このとき、地元の住民が沖まで泳いで出迎えますが、「ご神体と一緒に乗船するのは畏れ多い」と泳ぎながら舟を押して岩屋の地に着いたといいます。これが「おしゃたか舟神事」の起源です。「おしゃたか」とは明石の方言の「おじゃったかなぁ」がなまったもので、「神様がいらっしゃった」という意味です。この神事は毎年7月の第3日曜日に行われます。岩屋神社へは、JR▪︎山陽電車の明石駅から徒歩約15分です。

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