鉄人伝説とは
東禅寺や稲爪神社の伝承に登場する「鉄人伝承」について、岐阜女子大学の「アーカイブ研究所」のサイトに詳しい説明があります。それによれば、鉄人とは全身が鉄で覆われていて猛威を振るう武将ですが、身体の一部分に弱点があり、そこを襲われて退治されます。この種の伝説は全国的に分布しています。越智益躬の伝承では、鉄人は敵役になっていますが、各地で語られる伝説は必ずしもそうではなく、当初は英雄として活躍する例も多く見られます。大林太良氏の『本朝鉄人伝奇』によればこうした「鉄人伝承」は、1.女性が妊娠中に鉄を食べてしまう。2.その結果生まれた子供は全身鉄張りであるが、ただ一ヵ所だけ鉄張りでないところがあった。3.この鉄人は成人後、武名を轟ろかせるが、ふつう悪玉と考えられている。4.ある英雄がこの鉄人を討とうとするも難渋していたとき、英雄は女(多くの場合、鉄人の母あるいは愛人)から鉄人の弱点がどこにあるかを知る。5.英雄がこの弱点を攻めてこれを退治する。の五つの特徴があることを指摘しています。越智益躬の伝承では、この内の1.および2.が欠如しており、また鉄人に弱点があることを教えたのは女ではなく三島大明神となっている点に特色があります。谷川健一氏は『鍛冶屋の母』において、こうした「鉄人伝承」は鍛冶師や鋳物師など金属に関する漂泊民らによって伝播されたのではと推測しています。
大林太良(おおばやしたりょう)氏は大林良一(りょういち)氏の息子として昭和4年(1929)に誕生します。父の良一氏は社会保障制度を専門とした商学者で一橋大学名誉教授。太良氏は東京で生まれますが、愛知県で育ち、昭和24年(1949)第八高等学校(名古屋市にかつて存在した官立の旧制高等学校)文科甲類を卒業。東京大学経済学部経済学科に入学。経済学部に所属したため民族学については独学し、民族学の岡正雄や文化人類学の石田英一郎から大きな影響を受けます。1952年卒業。東京大学東洋文化研究所助手に採用され、1955年から1959年まで、フランクフルト大学、ウィーン大学、ハーバード大学で民族学を学び、1962年東京大学教養学部講師、助教授を経て、75年に教授になります。1982年まで日本民族学会会長をつとめました。1990年に東京大学を定年退官して名誉教授になります。その後は東京女子大学教授となり、また北海道立北方民族博物館館長に就任しています。2001年に亡くなります。多くの著書がありますが、『本朝鉄人伝奇』についてはよくわかりません。
谷川健一(たにがわけんいち)氏の『鍛冶屋の母』は、1979年思索社、1985年講談社学術文庫、2005年河出書房新社から出版されています。谷川健一氏のプロフィールは当ブログでは既に書いています。
鉄人が主人公の漫画『鉄人28号』は横山光輝(よこやまみつてる、本名は光照、1934~2004)氏の代表作です。1956年に光文社発行の月刊誌『少年』で連載が始まりました。鉄人28号は太平洋戦争末期に日本帝国陸軍が秘密兵器として開発していた巨大ロボットの名前です。このロボットが戦後に姿を現すことからストーリーが展開します。
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