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50年まえの自分にフランス語の講義をしてみた。(番外編)

昨日のグラマトロジーの解釈の投稿に対して、友人でフランス語に詳しいマーケティングの専門家から次のようなメッセージが来た。確かにそうだ。
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大変興味深く拝読しました。

Claudeの働き、大体は良いのですが、基本的なところで重大な(文法解釈的に)間違えがありますね。

最初の文章中の"dont"は前置詞と説明していますが、品詞としてはde+名詞を先行詞とする関係代名詞です。

こんなことまでできるんだ、という驚きもある一方、まだ信頼に足りないところもあり、盲信は怖いなあと思いました。
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なるほど。文法的理解と解釈に関しては、人間側の注意が必要だなと思って以下の文章でいろいろ試してみた。

Le programme
Or par un mouvement lent dont la nécessité se laisse à peine percevoir, tout ce qui, depuis au moins quelque vingt siècles, tendait et parvenait enfin à se rassembler sous le nom de lan- gage commence à se laisser déporter ou du moins résumer sous le nom d'écriture. Par une nécessité qui se laisse à peine per- cevoir, tout se passe comme si, cessant de désigner une forme particulière, dérivée, auxiliaire du langage en général (qu'on l'entende comme communication, relation, expression, signification, constitution du sens ou pensée, etc.), cessant de désigner la pellicule extérieure, le double inconsistant d'un signifiant majeur, le signifiant du signifiant, le concept d'écriture com- mençait à déborder l'extension du langage.

Copilotにこの文章をいれたら、後半部分が繰り返しというかループにはいって使い物にならない。お勉強のTutorにはむりだ。次に翻訳をDeepLに頼んでみた。

DeepL
プログラム
今、その必然性がほとんど感じられないゆっくりとした動きによって、少なくとも20世紀ほどの間、言語という名のもとにまとまろうとし、最終的にまとまることに成功したすべてのものが、文字という名のもとに追放されるか、少なくとも要約され始めている。かろうじて知覚できる必然性によって、あたかも、言語全般の特定の、派生した、補助的な形式(それをコミュニケーション、関係、表現、意義、意味や思考の構成などと理解するかどうかは別として)を指定することをやめ、外側のフィルム、主要なシニフィエの矛盾した二重構造、シニフィエのシニフィエを指定することをやめ、文字という概念が言語の拡張をあふれさせ始めたかのようである。(翻訳終了)

まあ、いつものDeepL調で、何を言っているのかわからない。いわゆる「直訳」で、基本研究書を読んでいるときは文法的な直訳をすると、文章本来の言っていることが伝わらない。内容を知っていればどうにか理解できるが、新しいことを理解しようと思うとDeepLや昔から翻訳のプロが使う人工知能だけではだめである。これは実は大部の哲学書や研究書が、DeepL翻訳にたよって、翻訳書の本来の目的、つまり学問の考え方をことなる言語にして伝えることが出来ない。定型的なビジネス書類の翻訳とは違うところだ。Noteでも、ある大部な本の大学院生勉強会DeepL翻訳を研究書として出版した本のクオリティに疑問を示した文章をあげている。

さて、CjhatGPT4で文法的分析と解釈をお願いしてみた。

ChatGPT4

このフランス語のパッセージは複雑で、言語学と意味論に深く入り込んでいる文です。それぞれのフレーズを分析してみましょう。

1. **Or par un mouvement lent dont la nécessité se laisse à peine percevoir**:
- 「Or」はこの文脈で「しかし」や「ところで」といった接続詞として使われています。
- 「par un mouvement lent」は「ゆっくりとした動きによって」と訳され、何かが少しずつ進行している様子を示しています。
- 「dont la nécessité se laisse à peine percevoir」は「その必要性がほとんど感じられない」という意味で、「dont」は「la nécessité」を修飾しています。この表現は、その動きの必要性が非常に微 subtle で、気付かれにくいことを強調しています。

2. **tout ce qui, depuis au moins quelque vingt siècles, tendait et parvenait enfin à se rassembler sous le nom de lan- gage**:
- 「tout ce qui」は「すべてのものが」という意味で、以下の文で具体的に何を指しているか説明されます。
- 「depuis au moins quelque vingt siècles」は「少なくとも約20世紀以来」という時間的な背景を設定します。
- 「tendait et parvenait enfin à se rassembler sous le nom de langage」は「言語という名の下に最終的に集まりつつあった」と訳せます。ここでの「tendait」(傾向があった)と「parvenait」(遂に達成した)は、時間をかけて何かが成り立ってきた過程を示しています。

3. **commence à se laisser déporter ou du moins résumer sous le nom d'écriture**:
- 「commence à se laisser déporter ou du moins résumer sous le nom d'écriture」は「書き言葉という名の下に移され、または少なくとも要約され始めている」と解釈できます。「déporter」はここで比喩的に「移動する」や「変化する」の意味で使われています。

4. **Par une nécessité qui se laisse à peine percevoir, tout se passe comme si...**:
- これは冒頭の文と同様の構造で、再び「ほとんど感じられない必要性」が言及されています。これは何かが変わる避けられない理由がありながら、それが非常に微 subtle であることを示しています。

5. **cessant de désigner une forme particulière... le concept d'écriture commence à déborder l'extension du langage**:
- 「cessant de désigner」(指し示すことをやめる)から始まるこの部分は、言語の一部としての書き言葉が、従来の「特定の形」や「言語の補助的なもの」という概念を超え始めていることを説明しています。
- 「le concept d'écriture commence à déborder l'extension du langage」は、「書き言葉の概念が言語の範囲を超え始めている」と解釈できます。これは書き言葉が単なる言語の一部ではなく、それ自体で広がりを持つ概念として認識され始めていることを示唆しています。

全体として、このテキストは言語から書き言葉へのパラダイムシフト、特に書き言葉が言語の単なる一部ではなく独自の重要な領域として認識され始めるプロセスを描いています。このような変化はゆっくりと進み、その必要性は一見すると明らかではないかもしれませんが、根本的な文化的・認識論的変革を示しています。

これはうまいね。問題となったdontもきちんと説明できている。

さてふと、もう一度Claudeに入れてみた。

Claude
このフランス語の文章は、Jacques Derridaの著作 "De la grammatologie" (日本語訳:『グラマトロジーについて』) の冒頭部分です。文法的な説明と解釈は以下の通りです。

文法的説明:
- "Le programme"は主語で、この文章全体のタイトルまたは主題を示しています。
- "par un mouvement lent"は、"tout ce qui"を修飾する前置詞句です。
- "dont la nécessité se laisse à peine percevoir"は関係代名詞節で、"un mouvement lent"を説明しています。
- "tout ce qui"は主語で、"depuis au moins quelque vingt siècles"以降に説明される内容を指します。
- "tendait et parvenait enfin à se rassembler sous le nom de langage"は、"tout ce qui"に関する説明です。
- "commence à se laisser déporter ou du moins résumer sous le nom d'écriture"は、"tout ce qui"に関する変化を示しています。
- "Par une nécessité qui se laisse à peine percevoir"は、この変化の理由を説明する前置詞句です。
- "tout se passe comme si"は仮定を導入する表現です。
- "cessant de désigner une forme particulière, dérivée, auxiliaire du langage en général"と"cessant de désigner la pellicule extérieure, le double inconsistant d'un signifiant majeur, le signifiant du signifiant"は、"le concept d'écriture"に関する説明です。
- "le concept d'écriture commençait à déborder l'extension du langage"は、この文章の主要な主張を示しています。

解釈:
この文章は、言語と書記の関係性の変化について述べています。少なくとも20世紀以来、言語という名の下に集約されてきたものが、徐々に書記という名の下に再編成されつつあるという主張です。この変化は、ほとんど認識されないほど緩やかに進行しています。

書記の概念は、もはや言語の特定の形式、派生物、補助的なものを指すのではなく、言語の拡張を超えて広がり始めています。言語を、コミュニケーション、関係、表現、意味、意味の構成、思考などと捉えるにせよ、書記はその外面的な層や不確かな二重性ではなくなりつつあるのです。

要するに、Derridaは伝統的な言語と書記の関係性を問い直し、書記の概念が言語の範疇を超えて拡張していく過程を描いています。この主張は、彼の脱構築の思想の一端を示すものと言えるでしょう。

英語訳:
The Program

By a slow movement whose necessity is hardly perceptible, everything that for at least some twenty centuries tended toward and finally succeeded in being gathered under the name of language begins to let itself be transferred to, or at least summarized under, the name of writing. By a necessity that is hardly perceptible, it seems as though the concept of writing no longer designates a particular, derivative, auxiliary form of language in general (whether understood as communication, relation, expression, signification, constitution of meaning or thought, etc.), no longer designates the exterior surface, the inconsistent double of a major signifier, the signifier of the signifier, but rather begins to extend beyond the extension of language.

日本語訳:
プログラム

ほとんど認識されないほどゆっくりとした動きによって、少なくとも20世紀以来、言語という名の下に集められ、最終的にそこに成功したすべてのものが、書記という名の下に移行、あるいは少なくとも要約され始めている。ほとんど認識されないこの必然性によって、書記の概念は、もはや一般的な言語の特定の、派生的な、補助的な形式(コミュニケーション、関係、表現、意味、意味や思考の構成などとして理解されているかどうかにかかわらず)を指すのではなく、主要な記号の外面、一貫性のない二重性、記号の記号を指すのではなく、むしろ言語の拡張を超えて拡張し始めているようです。

この文章は、言語哲学者ジャック・デリダの著作『グラマトロジーについて』の冒頭部分です。デリダは、言語と書記の関係性の変化を指摘し、書記の概念が言語の範疇を超えて拡張していく過程を描いています。この主張は、脱構築の思想の一端を示すものと言えるでしょう。

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こうしてみると、Claudeの解釈は非常に良い。ChatGPT4も悪くない。Copilotは使い物にならない。DeepLは内容がわかっていると使えなくもないが、研究に使うにはかなりの注意が必要である。

文法的な間違いは、 二度目にClaudeをつかった時には直って、dont を関係代名詞と正しくしていたね。

というわけで、文法的な説明は納得しないときには聞き直す。僕のフランス語力だと、二回くらい分けて聞いた方がいいかな。なんでも生成AI任せにはできないということで、初等フランス語文法の復習でもやろう。



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