
自称エレベーターガール。
雑居ビルの喫茶店に入ってみようと、エレベーターに乗ったら、自称エレベーターガールがいた。
「エレベーターガールです」
「はあ」
エレベーターガール。
エレベーターのボタンを押してくれるガール。
「上に参ります」
とか言う。
今もチラホラ良いところのデパートとかで見かけたり、見かけなかったり。
しかしまあ、五階建ての古めかしいビル。なんだか分からないテナントと、三階にインドカレーの店、四階に喫茶店があるぐらいの閑散とした場所なのに、エレベーターガールなんて、必要あるのだろうか?
衣装も、制服っぽくなく、どちらかと言えばメイド服っぽい。
「四階お願いします」
「かしこまりました。上へ参ります」
と、ボタンを押すが、二階を押した。
「……」
「……」
二階に到着。
「二階でございます」
「……」
なんだ、嫌がらせか?
僕は、黙って四階のボタンを押そうとすると、スッとボタンを隠され、
「上へ参ります」
「……」
何階を押した?
扉が開き、
「五階でございます」
「……」
扉が閉まる。
「下へ参ります」
「……」
何をしているんだこれは?
扉が開く。
「二階でございます」
「……」
ちゃんと聞こう。
「四階行かないのはわざとですか?」
「それは、誤解でございます」
「五階?」
「誤解です」
「エレベーターガール、ダジャレ?」
自称エレベーターガールは、顔を真っ赤にして、照れたようで、
「四階へ参ります」
「……」
と、四階へ到着。
僕はエレベータを降りる。
すると、エレベーターガルが僕の背中越しに、
「誤解でございます」と言った。
ん?
振り向くと、エレベーターの中は誰も乗っていなかった。
「……」
消えゆくエレベーターガール。見かけたり、見かけなかったり。
いやいや、そりゃ、最近エレベーターガールは見かけないけど、今はさっきまでいたじゃないの。
「……」
誤解ねぇ。
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