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撒く。


ついてくる。
撒こうと思う。

僕は梶沢と喧嘩をした。

「さっきから何言ってんだよ」
と、梶沢が僕をからかい、それがうけたものだから、何度かそのいじりをされた。
「……」
いじりがあまりにしつこいので、僕はその場を立ち、離れた。
すると、梶沢が、
「おい、冗談だよ」
と、引き留めようと追ってくるのだけれど、
僕は何も言わず、歩き続けた。

角に曲がり、トイレに入り、しばらくして外へ出る。
もう、梶沢もいないだろうと思うと、数メートル先に、ウロウロしている梶沢がいた。
僕はまた見つからないように、歩く。

電車に乗り、知らない街で降り、入ったことのないデパートに入り、もういないだろうと、落ち着こうとすると、数メートル先、ウロウロしている梶沢がいた。
「……」

また電車に乗り、知らない駅で降り、ファミレスを探していると、数メートル先、ウロウロしている梶沢がいた。
「……」

なんだあいつ。

僕は、もう直接抗議しようと、梶沢のところへ歩いて行こうとすると、梶沢はウロウロと歩いていき、僕に気づかない。

「……」

僕はそのまま、また電車に乗り、バスに乗り、家まで帰った。
所々梶沢を見かけるのだけれど、僕を見つけることは出来ていないようだった。

家に戻って、部屋で過ごす。
梶沢から連絡はなかった。

うまく、離れることは出来たようだ。
相変らず、ウロウロとする梶沢を見かけたりするけれど、僕を見つけることは出来ていない。

僕も、声をかけることはしなかった。

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奥田庵 okuda-an
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