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うんこ。


君がとても眩しかったからと、彼は私の前に現れた。
四月がすぐ目の前に迫った、暖かな午後の事。

彼の口癖は「うんこ」だった。

「うんこ、うんこ」
と、甘えたように言う。
私が、「なんで、うんこって言うの?」
と、訊くと、
「おいらが、うんこだからさ」
と、またふざけてはぐらかす。

小さい子供が、「うんこ」と言ってケラケラ笑っているみたいに、彼も、私の前でだけ、「うんこ」と言って、ケラケラ笑う。

ある日、彼が真剣な顔をして言った。
「うんこって普段言っちゃいけない言葉だからさ。きっと、口にしたことによって、自由を感じられるのかもしれない。うんこ、うんこって言っているのは、自由、平和って気持ちを求めてるのかもしれないね」
と、言った。

なに、言ってんのよ。と私は笑った。

一年が過ぎた頃、桜の花びらが舞う季節。
私たちは一緒に暮らし始めていた。

「一年になるね」
と、私が言うと、
「うんこ」
と、彼が言った。

そして、少し寂しそうに笑った。

その日の夜、
「ねえ、私が死んだらどうする?」
と、訊くと、
「うんこになる」
「もう!」
「目を覚まさない君の横で、寄り添うように、小さなうんこがコロンと転がってるのさ」
「やだーっ」
と、私たちは抱き合って笑った。

翌朝、目を覚ますと彼の姿はなかった。

たた、カーペットの上に、小さなうんこが一つ、朝日を浴びて転がっているだけだった。




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