日頃の無難さが、時にモヤモヤを刺激する。
風が強い。
小雨がたまに、混ざっている。
傘をさそうかと考えてると、少し先で傘が風で反転し、壊れている人を見かけ、やめた。
風が強いと、少し勇ましい気持ちになる。
なにかに立ち向かっているような錯覚がして楽しい。
「そこそこと、それなり」
余計な勝負に出るよりは、負けない方法論を探せと言われてる気がする。
苦労する必要なんかない。
ただ、その方法論を見つけ出して、ある種のゲームで、負けない限り、その続きを試していけばいいのだと。
ボロボロになって、気力まで吸い取られるようなことばかりしていても長続きしないではないかと。
そんな気もするし、そういう言葉を受け止めて、身体に染み込ませる行為は大事な気もする。
「そこそこと、それなり」
でも、今日は風が強い。
風が強いと少し勇ましい気持ちになる。
そして「後悔」について、考え、今までの「それなり」について、悔やんでいないかと、自らに問う。
負けることに美学を求めるな。
まず、生き残ることを考えろと。
だけど今日は風が強い。
頬に雨粒が当たる。勇ましさがグツグツ。
「……」
僕は、鼻で息を吸い、覚悟を決め、傘をさした。
バサッ、と、同時に風でビニールが歪む。
風を受け、けれど逆らいすぎず、程よく流し、傘が反転するのを防ぐ。
「……くっ」
広げたからには、傘を壊したくない。
そこそこと、それなり。そんなのは嫌だ。
今でも、負けようなんて思っていない。
ハバッ、バーっ。
傘が反転する。
「……」
斜め前の人が、僕を見て傘を開くのを止めていた。
結果論だ。
後悔はない。
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