気持ちを断ち切っても、思い出すぐらいはあるさ。
「絶交した奴のSNS見ちゃたんだよ」
と、由幸が言った。
「でさあ、一瞬コメント残しそうになって、嫌な気持ちになったんだよな」
「コメント残したの?」
「いや、残さなかった。けどさ、別に会いたいとかそういうんじゃなくってさ、もう関わりあうの止めたやつの生活とかさ、なんかムカつくよな」
「ムカつく必要はないさ」
由幸は、一瞬、言葉を呑み、次を探した。
「いや、そのムカつくじゃなくてさ……」
「ふむ」
言いたいことはなんとなくわかる。けれど僕は、由幸の言葉の続きを待つことにした。
「あれだよ。別に興味ないけど、たまに思い出すことぐらいあるっていうかさ」
「そりゃ、絶交したから記憶が消えるわけでもないからさ。SNSなんか、調子よく見せてるからさ、余計ムカつくかもな」
「いや、だから……ま、いいか」
「後悔はない?」
「後悔はない」
僕は由幸のわだかまりのようなものを、感じながら、
「まあ、そんなもん見なけりゃいい」と言った。
「そうだな」
生暖かい風に、少しだけ心地よさを感じた。
夕日が辺りを照らし、放課後を思い出す。
由幸が誰と絶交したのかは聞かなかったけれど、それが誰だかは分かっていた。
だけど、そんなの言う必要はない。
風と心地よさ。
夕日。
過ぎゆく時間。
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