妹の見え方。
妹は、特別に可愛らしいという見た目ではなかった。
でも、ジッと見ていると、素朴ながら、親しみが持てるし、何より、妹自身が、自分の見た目なんてものに、コンプレックスを抱いていないように感じられた。
僕は、そんな妹が、どこかしら誇らしかった。
「お兄ちゃん、買い物行こ」
なんて言ってきてくれて、二人でイトーヨーカドーに行ったりする。
小さな町だから、知り合いに会うこともあるけれど、それに対しても、恥ずかしがることなく、ただただ、楽しそうに、欲しいものを探していた。
しかし、昨日、学校の帰り道で、妹が俺の同級生に振られていたことを知った。
「お前の妹、中島に告ったらしいな」
「え?」
「ブスって言って振ったらしいぜ」
と、ケタケタとそいつは言った。
何が言いたいんだこういう奴はと、思いつつ、
家に帰ると、少し妹を意識した。
特に、落ち込んでいる様子もなく、ゲームをしている。
「お帰りお兄ちゃん」
「ただいま」
僕は、ゲームをしている妹の後ろで、ペットボトルのお茶を飲みながら、妹が何か話し出さないか待った。
「あ、お兄ちゃん?」
「ん?」
「今日、お父さん遅くなるって」
「あ、そう」
僕は、しばらく待ったが、まあ、自分が振られたことをわざわざ話し出したりしないかもなと、部屋に戻った。
翌日、学校で中島を見かけた。
「なあ、中島」
「あ、おう」
「ちょっと、いい?」
僕は、あまり人けのない渡り廊下で、中島に訊いた。
「お前、妹の事、ブスって振った?」
「え? 振ってないよ……ってか、」
「ん?」
「俺が振られたんだよ」
「え?」
「今は好きな人がいないけれど、今が楽しいので、ちょっと考えられませんって」
「……」
「絶対、人気あるぜ、あの雰囲気、良い子だよなぁ……」
「あ、ありがとう」
って、なんなんだ。
どうも、告げ口してきた、あいつも、妹に振られていたらしい。
はっきりと、「無理です」言われたようだ。
何がしたいんだああいう奴は。
僕は、妹が特別、可愛らしいという見た目ではないと思っていたけれど、そういうことではなく、妹は、他の人にはまた違う見え方がされていて、そして、人気があったようだ。
「あ、お兄ちゃん」
僕は、妹を見て、ふーん。と、思った。
なるほど。