クリック代行。
「さっきから何見てるの?」
「ん? あ、これ、副業。クリックするとお金になるの」
と、咲子は言った、
クリック代行のバイト。
SNSなんかで、「イイね」を押す。
ひたすら押すという仕事。アカウントを沢山作成して、ひたすらクリック。そんなんで、咲子は月に八万ぐらい稼いでいるらしい。
「え、なにそれヤバくない?」
「もうね、何がヤバいのか、よく分からないよね。普通に募集しているし」
YouTubeの登録者も売っている。
視聴回数も売っている。
お店のレビューも売っている。
インスタのフォロワーも売っている。
「人気があるっぽく見せて、誰かが、一人でも多く興味持ってくれないかなぁっていうことらしい」
「へー」
「で、ライバルのところには、悪評とか、低評価をつけさせるのを買ってるって、そういう、宣伝方法なんだって」
「へー」
「やる?」
「やんない」
お腹減ったねと、咲子が言ったので、ネットで比較的評判のいい中華料理店へ行ってみた。
「むちゃ空いてる」
「ここ、この前、評価の星買ってるのがばれて炎上したのよ」
と、咲子が言った。
「え、そうなの?」
「でも、ここ美味しいよ」
「来たことあるの?」
「うん。この店の評価レビューのバイトが入ったからついでに一回食べに来たの。普通に美味しいのに、もったいないね」
と、咲子は炎上の原因の一人でもあったりした。
二人で、回鍋肉、と麻婆豆腐と、五目焼きそばを食べた。
「美味しいっ」
「ね」
「こんなに美味しいなら、固定客がついていてもおかしくないのに」
「え、だって、今、どこだって美味しいし、安いじゃん」
と、サラリと咲子は言った。
なるほど、ここは、美味しいけど、高級で、ちょい高いのか。
高くて、炎上したら、すぐにこうなるのね。
嘘の評価も当たり前で、嘘の応援があって、嘘と分かっていても、もしかしてと、ちょこちょこと人が来る。
「みんな凄いのにね」
と、咲子は、回鍋肉をつまみながら、言った。
クリック、クリック。
「このバイトも機械化するって噂だしさ」
「機械化?」
「機械が巡回して、定期的にイイね押したりするんだって」
「あら。でも、それ、なんだか、評価とかどうでもよくなりそうね」
「私たちのキャバクラの宣材写真と一緒よ。盛ってるのよ」
「あ、」
「あんたよく言うじゃん、ほら」
「ちょっと考えれば分かるでしょ?」
「それ」
「ふむ」
嘘の評価も当たり前で、嘘の応援があって、嘘と分かっていても、もしかしてと、ちょこちょこと人が来る。
そろそろ出勤。
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