lyrical school「LAST SCENE」に寄せて
2017年から約5年関わらせてもらったリリスクの現体制最後に提供する曲となった
『LAST SCENE』。
実は依頼された時は、「体制が変わるかも」と聞いていたくらいで、誰がやめるか、何人やめるかも知らされてなかった。プロデューサーのキムくんからは「LAST SCENE」というタイトルだけ指定されて、「あとは大久保さんと上田さんにお任せします」というなんとも気持ちいい依頼。
5年間色々やってきたことに対するキムくんの信頼が感じられて嬉しかった。
続ける決断をしても、やめる決断をしても、
誰がどういう選択をしても、それを肯定できる曲にしたかった。
どっちを選んだとしても、メンバーが嘘をつかずに歌えるように。
共作者の上田くんとは、僕らが曲にするのは「エンディング」じゃなくて「ラスト」、「終わり」じゃなくて「最後」なんだという話をして制作に入った。
「LAST」はLAST WEEK(先週)とか、LAST SUMMER(去年の夏)といった
ある意味最新というか、続いている時間軸の今のとこ一番最後にあることをいう。
必ずしも「終わり」を意味しない。
そして、LASTは自動詞として「続く」という意味がある。
The party lasted two hours.
パーティーは2時間続いた。
パーティーは2時間で終わったってことだろうけど、2時間続いたのだ。
「LAST DANCE」でも「NOW!」でも歌ったみたいに、「いつか終わる」というのがずっと僕の書くものの根底にはある。それは、終わることを歌いたいのではなく、その終わりの瞬間と同じ確率で今が存在しているということを表現したいと思っている。
上田くんとは、「LAST DANCE」を一緒に作ってたし、僕の音楽制作の最も信頼しているパートナーでもあるのでこういう感覚はすぐに共有できる。
数週間すると上田くんから、切なくもどこか多幸感のある今回のテーマにぴったりのトラックが送られてきた。
まず、リリスクらしく映画をモチーフにhook(サビ)から書いた。
映画の撮影は、必ずしも最後に撮るシーンが、物語のエンディングとは限らない。物語のそれとは別にそれぞれのラストシーンがあり、撮り終えた人からクランクアップ(厳密にはオールアップ)していく。
このフレーズで、なんかもうこの曲はできたーと思った。どうしても悲しい曲になってしまいそうで、でもそうはしたくない。例え泣いたとしても底抜けに笑顔で歌ってもらえるように「愛とかピース」という壮大でいてどこかお気楽な言葉でhookを締めくくった。
曲をあげてレコーディングまで本当に時間なかったのでメンバーには自分のパートに専念してもらった。
いつもはhookをみんなで歌ったりガヤをみんなで録ったりするけど、この曲はそれぞれのパートをしっかりやり切ってもらって他の人のパートには声を入れない。
今回は、それがいいと思った。
結果的にアルバムリリース前にhime/risano/yuu/hinakoの4人が卒業することが発表され、そして、ラストにこの曲が収録され、タイトル通り現体制ラストを飾る曲になった。
minanさんのバースの「それぞれの物語の終わり辺り」は最後の最後で「辺り」を付け加えた。元々は「それぞれの物語の終わり」で締めていたのだけれど、そこがやけにかなしい響きに聞こえて「辺り」をつけ加えた。
これは、僕のかすかな願望だったかもしれない。
終わりなんて曖昧なもので、それぞれのタイミングで区切りをつける。区切りさえつけなくていいと思う。
いつだって僕らは終わり辺りにいて、奇跡的に今を続けていくしかない。
とりあえず、いつだって今がこれまでのラストシーンなのだから。
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