それでもハッピーセットは買うし、綺麗なものは好きだよ。

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少女が、少年が憧れるおもちゃが好きだった。あれこそが具現化された幸せや喜びなんだと信じて疑わなかった。私はそういうおもちゃをあまり持ってなかった。中学生の時に自分の私物を全部と言って良いほど捨てちゃって。持っていた数少ないものも、今は燃えて形を変えて土に埋められたりペットボトルとかになっているかもしれない。それから、本を読んだり書いたり、お絵かきをすることが好きで得意だったから、物体のおもちゃが二の次だったのもあるかもな。可愛い人形を手に入れるより、自分で可愛いキャラクターを描く方が楽しかったと思う。

でも、セボンスターのキラキラやDSのかっこよさや魅力には敵わなくて、友達のをいつも眺めていた。自分のものではないそれは、本来のものより一層輝きを放っていたように思う。欲しいなあ。欲しかったなあ。
中学生になっても高校生になってもずっとそれは変わらなかった。
大学生になった今、なんでも手に入る!私はそれが喜びだった。

ある日、スーパーでたまたま目に入ったお菓子コーナーのセボンスター。
その時私は「今だ!」と感じた。衝動的に六角柱のパッケージを手に取りカゴに放り込む。家に帰り開けると、中にはピンクで半透明のイチゴのペンダントと、形まで凝っているチョコレート。これが欲しかったのだ。欲しかったのだろうか。
私の十数年越しの期待とは裏腹に、イチゴのキラキラは案外心に響かなかった。この可愛いキラキラが私のものだと思えなくて、どうしようもなくて、身につけず壁にかけた。

私は「私はもっと、自分の感性に正直で、昔のまま自由なんだ」と信じていた。

インスタグラムで見たジェルネイル。サークルの先輩の爪も可愛くってたまらなくって、私も手を伸ばした。
百均やネットでジェルやパーツを集めてセルフネイルに没頭した。チェック柄やハートのパーツ、小さい星も散りばめて、ほっぺちゃんを描いたりして、ラメでキラキラになったカラフルな爪を私はいつも眺めた。全部かなり良い出来だったけど、それはあの時のように輝いては見えなかった。手の込んだ立派なものが、丈夫でガサガサしている指先で輝くより、不恰好であろうと10歳のふわふわした綺麗な手にこれを施したかったなと感じた。

ずっと、ずっとしっくりこない。
あの頃の幸せを叶え続けているはずなのに

この部屋に心躍るものは見当たらないし、ハッピーセットのおもちゃは隅の方で蹲っている。花柄の洋服も、あの日憧れたロシュフォールの恋人に出てくるボックスプリーツのワンピースも、画面の中だけで輝いている。

屹度、わたしの憧れには対象年齢があった

毎日マクドナルドを食べたかったのは、今じゃなくて小学生の頃だ。
安いバニラアイスにカラースプレーを沢山かけたかったのも、シルバニアファミリーの住宅街を作ってみたいと思ったのも、変身して敵と戦いたかったのも、全部子どもの頃の私だ。
好きだと信じていたものを手に入れると、あんがい安っぽい。
何が欲しかったんだろう


少し、少しだけ遅かった。
手に入れたのが。諦めるのが。

昔、プリキュアの最終回には必ず涙を流していた私を、学童で知ってるポケモンがポッチャマしかいなくって笑われちゃった私を、クリスマスにおばあちゃんにもらったレースのスカートや水玉のワンピースを小学校に着ていくことができなくて、寝る前に鏡の前でこっそり着て、似合わないなあと少し泣いた私を、もう喜ばせてあげることはできないんだと、そう思った。

ずっと欲しかったカラフルなレゴブロックを買い物かごから削除すると、崩されたレゴ貯金は延々と続く生活に費やされるのだ。
自由なお金で、キラキラのシールじゃなく電気料金を支払う。欲しかったお金で、綺麗なブーケじゃなく水道料金を支払う。今あるお金で、ワンピースじゃなく食べ物を買う。
その場限りの満たし方しか出来なくなった

私はもっと自由だと思っていた
昔のままの感性だと、そう思っていたしそれを望み続けてきた。

自分に似合うものじゃなくって、自分の好きなものを「これが好きです」というのが難しくなってしまった。子どもの頃よりずっと。

私ほんとは、古着を着てかっこつけることよりも、真新しい綺麗なワンピースが着たい。オリーブ色のツヤツヤした髪の毛を少し巻いて、どこだろうと歩きたい。ハローキティが似合う自分になりたい。恋に恋したい。これしかない、じゃなくてこれがある自分だと思いたい。
下にデニムを履いてスカートをうまく誤魔化す自分があんまり好きじゃない。
流行を免罪符にして可愛い服に手を伸ばそうとして、やっぱり買い物かごから外してしまう自分が嫌いだ。
憧れから遠い自分を嫌うことが嫌いだ。
世界の全てを愛したいのに、素直に綺麗だねと言いたいのに
綺麗なものを、素敵なものを、自分を形作るものの一部にしたくない。

それに気がつくことは
少し悲しい  
すごく寂しい

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