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書活№391*優しさを運ぶバスの話。

「…」「いけよ」「いや、でも」「(目配せしながら、いけ!)」「…あの、どうぞ…」

先日バスに乗っていました。乗ればだいたいは座れるバス、乗っているのはご年配の方が多いです。

しかし、その日はこのバスにとっては混雑をしていて、座席はうまっていましたがとあるバス停で2名のご年配のご婦人が乗ってきました。一人は足元がおぼつかないのか買い物カートを頼りに立っています。その介助をするもう一人の方、姉妹かな?おそらくお姉さんの方が一歩一歩確認しながら乗ってきてすぐ近くの座席に座りました。妹さんはお姉さんのカートを畳んだ後、手すりにしっかりつかまって立っています。

私は一番後ろの高い席に座っていたため、彼女に座席を譲りに行く方が危ないのではと悶々と考えておりました。

お姉さんの隣に座る方譲ろうと半分立ち上がりかけました。彼女も姉妹よりは若くてもご年配です。

「ああ、大丈夫ですよ…」
そんな風に言っているように感じました。そのやりとりをしている最中、妹さんの背中側に座っていた若い男の子、中学生か高校生くらいの子が二人何やらゴソゴソと相談し合いました。

目配せしながら、いくかどうか…友人がうなづくともう一人のグレーのパーカーを着た男の子が背筋を正し、ゴクリとツバを飲んだように感じました。それから呼吸を整えて、目線で立っている妹さんを確認しながらバスが信号で止まったのを見計らって声をかけました。

「どうぞ…」
ご年配の方はお姉さんの介助ということもあり、そばにいたかったのでしょうか。その言葉に対して断りつつも
「ありがとうございます」と丁寧にお礼を言っていました。

男の子はその行動に照れてしまったのか、もう一人の友人にほんのちょっとだけからかわれたのか、褒めたのか男の子特有のふざけ方を静かにしていました。

なんだか微笑ましいと思っていたところで、次の停留所でまたご年配の方が乗車。先ほどの顛末を後から知ったもう一人の友人でもある男の子がスマートに立ち上がりました。

また停留所で止まって次は二人乗車、ちょっとからかってた子とグレーのパーカーの子が素早く移動して三人で何やら嬉しそうにしています。

一番後ろの席に座っていた私は、その優しさの連鎖が微笑ましくて、笑みが溢れてしまいました。そんなバスの名前は「ふれあいバス」

私はこのバスが大好きです。

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シマコシマ
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