書活№393*日本語は難しい。
「諸般の理由により、◯◯をするのをお控えください」この文章を読んだとして、あなたならどうしますか?
2024年も残すところ、なんて言葉がチラホラのチラくらいで始めそうな予感のする11月が始まりました。去年の今頃、我が家は制服の採寸やら中学校説明会、小学校への面談など慌ただしく過ごしていたような記憶があります。
その頃でしょうか、卒業式に向けての服について話し合っておりました。小学6年生になってすぐの懇親会で担任の先生からこんな話が出されていました。
「卒業式の服装についてですが、教師の人数も限られており、また私も男性ということで着崩れた時の対処がしづらいという観点からも袴の着用をお控えいただきたいです。ご理解のほどよろしくお願いします。」
娘は袴を着ることに強い憧れを抱いておりました。彼女が卒園式を迎えた時、数名が袴を着用していたのです。卒園卒業式での定番に「袴姿」を見かけるようになったのはこの頃でしょうか?
袴といえば大学生の卒業式となんとなく決まっていたので、私としてはまだ早いのではないか?と思っていましたが、年々袴姿で卒業式を迎える先輩たちが増えていることで娘の思いは膨れ上がっていたのです。
ただ、4月の時点で私としては正当な理由で控えてほしいと言われたのですから早々に諦めてもらう方向に話を進めました。娘はその理由ならば仕方ないと最終的に納得をしてくれて、彼女好みの小学生らしくかつ卒業式に相応しい服装を選んでおりました。
さて年が明けたと思ったら3月、卒業式に何を着るのかという話題が卒業式間近に出たのでしょう。それを聞いた当日、彼女は大泣きしながら帰って来ました。
「ダメって言ったのに、なんでみんな袴なの!?私我慢したのに…」
どういうことか確認するとクラスのうち9割が袴だという事実が発覚したのです。守った方がバカを見た!あまりのことに怒りがおさまらず、学校側へと問い合わせをしました。だからと言って問題が解決するわけでもないのはわかりきっていました。
しかし、我慢した娘の存在だけは消したくなかったのです。さらにもっと強い言葉で伝えてもよかった旨も付け加え、モヤモヤっとしたまま卒業式を迎えました。
ほとんど袴、おまけに男の子まで袴でした。
いや、控えろって禁止をしてることと同等に思いませんか?忖度やら空気を読んだわけではなくて控えろってしっかり言っていたのですから、受けての私はやめたわけです。
果たして控えるとは?
こんなことを言っては「老害」なんて言われてしまうのでしょうか。日本語の曖昧さが私は美しいと思いますし、その曖昧さは相手を思ってのことなのです。つまり相手がどう思い、自分がどうすればお互いに気持ちよく過ごせるのかを思うこと、これが思いやりなのではないのでしょうか?
娘には大変申し訳ない思いでいっぱいの卒業式ではありましたが、彼女は彼女なりに消化して堂々とした姿を見せてくれました。
大人として未来の人に教えたいと思っていることはとても難しく、特に相手を思い自分を大切にするということにはたくさんの弊害があることを知りました。
けれど、自己主張と自分本位は違います。そんな風に日本語にはたくさんの混同しやすい言葉が溢れています。それを伝えたいので学び続けようと決意したエピソードでした。
この時期はどうしてもセンチメンタルになりますね。