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書活№378*かわいい子には旅させよ。

顔が綻んだと思ったら自信に溢れてました。
中学一年生の娘、1人で公共の乗り物に乗ったことがありません。というのも、我が家は田舎ということで移動手段は車がほとんど。公共機関を利用して出かけるともなれば、出かける場所を考えると1時間前後となるため、躊躇していました。

しかし最近は、時々部活動で電車を利用する機会が増えましたし、そろそろ1人移動を考えても良いだろうと思い始めてました。

私が一人で電車に乗ったのはいつだったでしょう。その前に弟と二人、父の職場のある都内まで行った記憶があります。当時、弟は電車に詳しい少年でしたので全てをまかせました。姉ですがポンコツなので三歳下の弟が頼りなのです。

母までもが
「◯◯がいるから大丈夫だと思うけど…」と弟の信頼度は厚く、私自身も安心しきってました。案の定、弟は頼もしく何事もなくスムーズに父の仕事場まで連れて行ってくれたものです。

さてそれからややもしないうちに、一人で公共機関に乗ることになりました。祖母の家を目指すということで他県です。乗り換えさえ間違えなければ簡単に行ける場所でしたが不安でした。

母の書いてくれたメモと当時大事にしていたキーホルダーを握りしめて、何度も道筋を復唱しつつ向かいました。道中何事もなく無事に到着したのですが、顔の筋肉が痺れるほどに強張り、血の気も引いていたと思います。

30年ほど前ですのでスマホなんてものはありませんし、公衆電話で連絡したところでもらった小遣いを無駄にしてしまうのだけは避けたかったのです。

「大丈夫、大丈夫」という言葉、ほおのひきつり、握りしめたキーホルダーが熱く手汗のぬるっとした感覚は妙に覚えています。

思い出すたびにヒリヒリします。だから娘の一人公共機関乗車を躊躇していたこともあります。しかしいずれは乗らなければならないし、簡単にできるであろう成功体験でもあります。

なので、先日少しの距離を乗せることにしてみました。複雑な工程はなく、乗る方向さえ間違えなければ到着します。

スマホに写真と道案内の文章、そして注意点等を送り待ち合わせ場所にて彼女の到着を待ちました。1分がとても長く、60を数えても進まない気がしてなりません。

待ち合わせ駅の改札口を睨みつけながら娘を探します。「◯◯乗った」とメッセージを受信してから数分後、緊張しきった顔の彼女が私を探している様子が見えました。手を振ると目が合い、彼女の顔が一気に綻びました。それから胸を張ったようです。

「おつかれさま、よく頑張ったね」
誇らしそうに力強くうなづくと大きなあくびをしました。

それから
「これで、一人で電車に乗れる?」
と、ひときわ大きく成長した娘。彼女はまた次の冒険を目指すようです。母もまた冒険する子を送り出す準備に取り掛かりたいと思います。

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シマコシマ
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