連作短編小説「左甚五郎の若い頃」『白木の棺』
平素は温厚な与平次もさすがに、声を荒げまして「お上のお達しで、京に出てきたが、何かというと書面を回せとか、誰々に挨拶せよとか、つまらぬことばかりだ。何も進まん。わしらは、代々お寺様の加護を受けて、好き放題させて頂いた宮大工なのだ。それを、大工仕事にまで細かく口出しされるのでは、たまったものではない」と、憤慨しておりました。
そのような折に、主人は中井家の先代正清様に呼ばれました。
正清様は、主人と同年代で、もう忘れてしまいましたが、どちらかが一歳上か下でした。
しかし、