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白木の棺

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知恩院の七不思議のひとつである「白木の棺」にまつわる物語です。
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#時代小説

短編小説『知恩院三門の七不思議』

代々続く宮大工の娘に生まれたものにとって、お金と時間は無限にあると思っておりました。 そ…

大河内健志
3か月前
8

短編小説『跡を残して、名を残さぬ人』

話は前後してしまいましたが、そもそも知恩院三門の建築の総責任者でおられた五味金右衛門様が…

大河内健志
4か月前
5

短編小説『仕事のできる人間は妬まれる』

知恩院さんの工期は二年とあらかじめ決められています。 奈良いた頃、東大寺の宮大工でしてき…

大河内健志
4か月前
11

短編小説『知恩院山門の眠り猫』

ここに一枚の絵があります。 甚五郎が知恩院の三門を描いた絵です。 甚五郎というのは、後に…

大河内健志
5か月前
5

短編小説『伝えることが難しくなったこれからの仕事の価値』

宮大工の世界は妥協の許さない厳しい世界です。 到達点と言うものはありません。 常に理想を…

大河内健志
5か月前
15

短編小説『物価の高騰による思いがけない悲劇の予感』

若い大工が、知恩院さんの山門の模型が出来上がったので、直ぐに見に来てくださいと私を呼びに…

大河内健志
5か月前
16

短編小説『計算し尽くせないもの』

主人らは、早速設計図の作成にかかりました。 私は、父から宮大工たるものは、頭の中にしかと図面を叩きこんでおくもので、紙に書き込むものではないと教え込まれていました。 誰かに見せる必要もないので、棟梁の頭の中にさえきちんと頭に中に入れておきさえすればいいと言われていたので、正直主人ら仕事を見て驚きました。 主人も、中井正清様のお屋敷に通い詰めて徹底的に教え込まれたのでしょうか、平然としております。 主人は驚く私に、まずは大まかな図面を書いて、縮小した模型を作り、寸法や材

短編小説『主人を悩ましているこの時代の風潮が憎いのです』

お茶と茶菓子を持ちまして、奥の間に続く廊下を行きますと、大きな声が聞こえ来ます。 主人の…

大河内健志
6か月前
8

短編小説『先ずは京の作法を学びなさい』

「造作奉行様のご命令で、わざわざ京に呼び寄せられたが、何ということだ。何事をするにしても…

大河内健志
6か月前
13

短編小説『京のうつろい』

夜も更けてまいりましたのに主人はまだ帰ってきておりません。 今夜は遅くなるとは聞いており…

大河内健志
6か月前
11

短編小説「伝えておきたかった知恩院三門の秘密」

年のせいでしょうか、とりとめもなしに色々なことが思い出されます。 宮大工の娘に生まれたも…

大河内健志
9か月前
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短編小説『天才彫り物師が残した知恩院 三門の秘密』

暫く手元に置いていた一枚の絵があります。甚五郎が描いた絵です。 知恩院の三門を書いた絵で…

大河内健志
10か月前
13

連作短編小説「伝えることが難しくなった千年後の理想と現実」『白木の棺』

この世界は、妥協の許さない厳しい世界です。 到達点と言うものはありません。 常に、理想を…

大河内健志
10か月前
13

連作短編小説「物価の高騰による悲劇の予感」『白木の棺』

直ぐに若い大工が、模型が出来上がったので、見に来てくださいと呼びに来ました。 今までの見たことのない様な大きな模型が出来上がっています。 その周りを主人らが取り囲んでいます。 模型を見なくても、主人の自慢顔を見ると、出来具合は分かります。 私は東大寺の南大門を知っているだけにその模型の緻密さには驚かされます。 垂木と斗栱(ときょう)の織り成す綾が鳥肌が立つくらいに見事な出来栄えを見せています。南大門と比べると遥かに現代的な感じがします。 「ちまちました小細工が、流