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ホラー映画の科学②
ホラー映画においてジャンプスケアが定番であることは前回述べたが、もう1つ外せないものがある、それはグロもしくはゴア表現である。
筆者は職業柄慣れている類に入るものの、とても好きとは言い難い表現である。しかし、人の生死に関わるシーンでそれを忌避することは欺瞞のように感じるしどこか物足りないようにも思える。
人はゴキブリや毒キノコ、腐った生肉を見た時にどのような反応をするか?嘔吐はやや大袈裟な気もするが、嫌悪感を感じない人はまずいないだろう。
この嫌悪感を感じる反応は視覚、味覚、嗅覚の刺激によって始まり視床や扁桃体を通じて島皮質という脳の部位に集約される。
この島皮質が障害されると不快感を感じにくくなり、共感性や危機管理能力が失われてしまうとのこと。加齢や脳障害により引き起こされるらしいが、映画の話題と離れてしまうのでここでは説明を省きたい。
ではアルコールを大量摂取したわけでもなく、腐った食べ物を食べたわけでもなく、まずい人に絡まれたわけでもないのに、なぜ映画を観ただけで吐き気を催さなければならないのだろうか?
それは万が一の事態に対する防衛反応にあると思われる。サメが飛んできたり半魚人が襲ってくるわけないだろと言われそうであるが、かの悪辣な環境で撮影を行った『悪魔のいけにえ』の食卓シーンはいかにも肉の腐敗した匂いが漂ってきそうであり薄汚い内装と狂気の家族の様相は、テーブルの上の食事がどんなに美味なフランス料理であっても絶対に食べちゃいけないという気持ちにさせてしまう。
近年は4Dという椅子が振動したり水しぶきが飛んだり場面に合わせた匂いがしたりと人々の5感に訴えるような臨場感のある上映システムが取り入れられている。
さすがに味覚に関してはまだ開発段階であるが、もしチューブをくわえていたとしてそこから様々なフレーバーを含んだ液体を味わえるとしたら?ソーヤー一家に無理やり食べさせられた食事の味を再現できたとしたら革新的だと思う。死肉の臭いも相まってエチケット袋は必須だろうけど。
筆者は未だ視覚だけで嘔吐に至ったことはないが、もし至ったことのある人がいるとしたらその人の防衛能力はとんでもなく高いことになる、決して大袈裟だと思わず尊敬の眼差しで見守っていこう。