【地域おこし協力隊サポーターズ鹿児島 伊佐市地域おこし協力隊OB 林峻平 】
『地域おこし協力隊サポーターズ鹿児島』(以下:サポーターズ)について知ってもらうにあたり、昨年度はメンバーや活動紹介を毎月行ってきました。今年度からは現役の地域おこし協力隊(以下:協力隊)やOBOGの皆さんの背景にも迫っていきたいと思います。
第13弾の記事はこちら。
今回は伊佐市地域おこし協力隊OBで『その火暮らし』オーナーの林峻平さんの想い(第1〜3章)について紹介していきます。
暮らしに関わるものを自分の手で
林:大学卒業後、僕は家具関連の会社に勤めていました。その際、2年程鹿児島のお店に配属されたことがあったんです。暮らす環境もですし、何より温かい人ばかりでした。
その後、何度か転勤を繰り返し海外に赴任している際に今後の人生について考えるようになりました。
勤めていた会社は生産から小売まで幅広く事業を展開していたのですが、海外に赴任し現場から離れて仕事をしていると、自分が関わったことが何になっているのか、お客さまにどう届いているのか実感できなくなっていきました。
次第に、自分の中で「暮らしに関わるものを自分の手でつくってみたい」と思うようになり、家族がいる九州で仕事を探している時に協力隊の制度を知りました。既に協力隊の制度が始まり数年経っていて、多くの自治体が導入している状況でした。
林:そんな時、伊佐市として初めて協力隊を募集していると知りました。大学時代、北海道で過ごしていたのですが、伊佐が“鹿児島の北海道”と呼ばれていたことや、社会人になってから鹿児島で過ごした経緯もあったので、ご縁を感じ、応募することにしました。
伊佐は人吉と隣接していて山に囲まれており鹿児島市からはかなり離れたエリアです。でも、そんな環境だからこそ自分のやりたいことにチャレンジできるのではないか。まちの規模感や人との距離感がちょうど良さそうではないか。そう感じました。
何より出会った市役所の方やまちの皆さんが面白い人たちばかりだったんです。それで2018年の夏に協力隊として移住することになりました。ミッションは伊佐に関する情報発信と観光振興がメインでした。
顔を合わせて話すことを大事に
林:当たり前のことかもしれませんが、協力隊時代に一番大事にしていたことは顔を合わせて話をすることでした。
何をするにしても、移住してきたばかりの僕がどんな人間なのか、どんな想いで活動しているのか、地域の皆さんに知っていただく必要があると思いました。
だから、面白そうな方や一緒に何かやりたいと思った方、意見をおっしゃってくださった方など、できる限り直接足を運び、地域の方と話をするようにしていました。
市報やSNSで活動報告をしても見えない部分がたくさんあります。直接会って話をすることで、熱量や想いが伝わり背中を押していただきました。
そんな方々と取り組んだことの1つが2019年3月に九州で初開催のアウトドアサウナの体験イベント『サウナーワンダーランド』です。
地域の皆さんとの関わりの先に生まれたものでしたし、「最高だね」と顔を合わせながら楽しめたので良かったと思います。
林:他にも『イサタン』というメディアを立ち上げ、伊佐の面白いスポットやグルメ、暮らしの情報などを発信していました。
移住前に、伊佐についてネットで調べていると情報がなかなか見つからなかったり、あっても古い情報がそのままになっていたり、実際に体験した人の声がなかったりといったことがありました。
そこで、まちを歩きまわりながら情報を集約してみてはどうかと思って始めたんです。僕自身、伊佐のことをもっと知りたいと思っていたのでミッションの中の1つとして取り組み、協力隊を卒業した今でも続けることができています。
まちに出て、取材・発信をすることで、地域の皆さんと知り合うきっかけも増えましたし、それがきっかけで信頼関係を構築することに繋がったと思っています。
協力隊時代を通して、手間や時間をかけてでも、人とのコミュニケーションを機械的ではなく、顔を合わせて向き合うことの大事さを教えてもらいました。
人間臭いコミュニケーションが幸福度を決める
林:以前、お世話になっている方がおっしゃっていたんです。「人間臭いコミュニケーションが本当の人の幸福度を決めている」って。その言葉に共感していますし、それがとても居心地がいいと思っています。
地域の中に入って何かをするということは、表面的なところだけじゃなく、普段の地域行事の手伝いだったり、何気ない挨拶だったり、その積み重ねがあって初めてそれができるのではないか。大変なことも多いけど、それよりも面白さや楽しさが上回って、心の底からそう思えるようになりました。
そこからつくり出した暮らしは、前職を退職した時に思い描いていたものに少しずつ近づいているのではないかと思っています。
先日、近所の方が「赤飯を炊いたから宿のお客さんに持たせてあげて!」と言って、食べきれない量をおすそ分けしてくれたのですが、そういうのもいいですよね(笑)。
林:今年度からサポーターズのお手伝いとして、協力隊募集において企画段階からある自治体に入らせてもらっています。今はまだ吉村さんが担当部署の皆さんに壁打ちするのを記録しながら、流れについていくのに必死な状態です。
僕自身、協力隊を通して良い面も悪い面も含めて経験させていただき、今こうやって日々楽しく過ごさせてもらっています。だから、少しでも皆さんのお力になりたいですし、それが巡り巡って、自分の幸せや暮らしの楽しさにも繋がっていったら嬉しいなと思っています。
他にも、僕の場合、『その火暮らし』を始めるにあたって、素人ですがDIYで空間づくりに励んできました。プロではないけど、DIYをしたい・地域の人たちと空間づくりをしたい人にとっては少しはお役に立てる部分もあるかと思います。
そうじゃなくても、気軽に泊まれるその火暮らしがあるので、まずは一緒に料理したりご飯を食べたりして、楽しい時間を共有できたら嬉しいです。
(終わり)