香りや匂いのすがたを感じる記事5本:OKOPEOPLE全86本の記事からセレクト
お香や和の香りの専門店に入社して3日目。今日もいい香りに包まれております、広報担当の新入社員・おおのです。お店で呼吸して、身体に入ってくる空気がほのかなよき香りでとても幸せです。
しかしながら、まだまだ香りの世界に無知すぎて、新米広報担当者として何をしたらいいのやら右も左も分からず……なにから勉強しようかと迷います。
香木やお香の香りにうっとりしたり、ほっと癒されますが、そもそも香りや匂いは、姿かたちが見えないもの。それにもかかわらず、人間のこころや身体、記憶に深々と関係するというつくづく不思議な存在です。
そこで、香雅堂が香りについて色とりどりの物語を発信しているメディア「OKOPEOPLE」の記事をすべて読んでみました。2019年6月から始まったOKOPEOPLEには、現在86本もの文章があります。たくさんの香りにまつわるお話のなかから、私が香りや匂いの「すがた」を感じたおすすめ記事を勝手にご紹介いたします。
出会いと香りの2本
大人になってから何かに猛烈に「ハマる」経験は、子どもの頃よりも衝撃的なのではないでしょうか。図らずも驚くような出逢いがあったときに思い出すのはこの言葉。
「人生には、まさかという坂がある」
子どもの頃、ローカル電車の踏切で待っていると、線路脇の看板に書いてあったのを、今でもたまにふと思い出して、ハッとします。
① 2019年6月:香木への招待
最初にご紹介するお話は、あるうら若き青年が大人の事情により、断り難い誘惑を受け、香木と深い恋に落ちていく禁断の一夜。素敵な大人の世界へいざ入門……となるのでしょうか。
続いては音楽と匂い、そしてそれらの記憶のお話です。
② 2019年8月:「盆会(ぼんえ)」 ~ いかれたBaby ~
音楽と匂いが似ているところは、記憶の断片に一瞬でワープするところではないでしょうか。
この記事に登場するフィッシュマンズという伝説のレゲエロックバンドの曲「いかれたBaby」。私もかつて友達と一緒に聴いた汗だくの夏の日がありました。
たしかにあったその時間は、もう二度と来ることはありません。それでも、夏の夕立後なんかに、湿気と砂と緑の匂いと一緒に、もう逢えない友達が隣にいるような感じがします。
ある日の、ほんの一瞬の景色に鮮やかに輪郭をつけて、そこにいるような感覚が立体的に呼び覚まされる、小さな奇跡。音楽と匂いがくれた、時間を超えた邂逅を感じるひと時です。
暮らしに風穴を開ける3本
さて、ここまでの2編は2019年に書かれたものでした。まだコロナが来る前ですね。これからご紹介する3編のお話は、2020年、コロナが人間の生活区域にかなり侵入してきた最近の状況の中で書かれたものです。マスク生活も定着してきましたが、慢性的に心身ともに何となく息苦しいのはマスクのせいだけでもないと思います……風穴を開けていきたいですね!
というわけで、すこやかで爽やかな風を感じた文章を選びました。まずはこちらの記事です。
① 2020年6月:ケロヨン堂は芳香剤の匂い──正しくないものと子ども
日々の中にある不条理や理不尽な出来事。「意味わかんない」と思わずつぶやきたくなりますよね。最近のニュースを見ていると、そんな気持ちにさせられることばかりです。
嫌悪感や軽蔑、怒りが湧くようなとき「意味わかんない」と言って、ひとまず自分からなるべく遠くに追いやる。それはわたしたちを脅かすものから心身を守るために必要なことではないでしょうか。
その一方で心の隅から「ところで、イミの在り処ってどこなのかしら、そのタダシサは誰のもの?」というつぶやきが聞こえることもあります。無性に窮屈さを感じ、全身に好きな色を好きなだけ混ぜた絵具を塗りたくって、そこいらじゅうを構わずにゴロゴロしながら絵を描き、笛でもピーピーと吹いていたい。そんな衝動にかられます──不真面目極まりなく。自分の中のつげ義春や蛭子能収的なカオスがもぞもぞ動き出す。それは私の中で自由を感じて生きている感覚のひとつです。
この記事は、そんな気持ちを思い起こさせてくれました。ちょっと理解しがたいような不気味で意味不明なものを、わからないけどとりあえず置いておく、そんな余白を残すこと。それは私たちが生きる長い時間の中で、しなやかにしぶとく生きるためのヒントになるかもしれません。
続いてはこちらの記事です。現在は海外はもちろんのこと、他県にさえも移動しづらいですよね。日常生活上の不便さやどうにもできないやるせなさを感じます。
とりわけ旅好きにとってはしばしの辛抱時期でしょう。私も遠くへ旅に行ける日が待ち遠しいです。船や飛行機で海を渡り、たくさんの山脈を超えて、目の前の景色をガラッと変える旅の解放感はなにものにも代えがたい……。そんな気持ちを呼び起こされる文章です。
② 2020年8月 香りと海と
けれどもお香を焚くと、家に居ながら旅の気持ちを味わうことができるかもしれません。香りがいざなう遥かなあの地へ……この機会にわたしも行ってみようと思います。
コロナウィルスの流行が収まり、自由にどこへでも行かれるようになったら、そのときには自分で選んだ香りに乗って旅に出たい。いつになるかわかりませんが、楽しみに待ちたいと思います。
最後の記事はこちら。誰のものでもない時間、自分のこころに寄り添ってくれるものはなんでしょうか。そんな問いかけを与えてくれる文章です。
③ 私を取り戻す香り 2020年10月
ちなみにわたしの場合、思いつくのはコーヒーと古本屋です。ありきたりですが、これまで何度その飲み物と本の香りに癒され、喫茶店の古いセピア色がもつ程よい暗さに安心しながら逃げ込んだことか……!
コーヒーは元気な朝も、頭がごちゃごちゃな昼間も、さみしい夜も、いつでも私を支えてくれます。コーヒー豆をゴリゴリ挽きフィルターにお湯を落とすと、粉豆がぷくっと小さな山になります。そこに蟹でもいたかのように、ぷふーと、溜息のような穴が空いていく。それを見ていると、自分もゆっくりと息を吐くことを思い出します。
古本屋さんは、近所の夜遅くまで空いているところが印象的です。残業帰りのOLやサラリーマン、飲み会後の帰り道にふらっと来た若者、そのほか色々なジャンルの人がほとんどひとりでここに来ています。静かにジャズが流れている店内は、古い本の匂いがして、読んでも読まなくてもどっちでもいいんだよ、人生は長いのだから……ゆったり構えるご隠居のような空間ですね。
喫茶店と古本屋さん。私はこのふたつがあれば、日々起こる大抵のことは乗り越えて行けそうな気がします。
──可視化されない香りや匂いのすがたは、立ち現れては消えていきます。けれども、これからも世界からうしなわれることはないでしょう。そして、香りの数だけ物語が生まれ続ける。これからも、OKOPEOPLEで新しい香りのお話に出会えることを楽しみにしています。
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