夏を迎える、涼やかなハーブティーと香袋をつくる──漢方スタイリスト・大塚真喜子さんと
和の香りの専門店・香雅堂では、漢方スタイリストとしてハーブティーや漢方茶のブレンドを手がける大塚真喜子さんと一緒に、夏を迎えるにぴったりの涼やかなお茶と香袋を制作しました。その販売を記念して、大塚さんと香雅堂・山田がそれぞれの専門である漢方とお香について、また、今回のコラボレーションについて語り合いました。
漢方からお香に出会う
山田:本日は漢方スタイリストの大塚真喜子さんにお店に来ていただきました。一緒につくった「夏をむかえるハーブティーと香袋」の制作のことや、漢方についてなど、いろいろお話できたらと思っています。よろしくお願いします。
大塚:よろしくお願いします。山田さんとお会いしたのは、ログハウスのBESSでひらかれたお香のイベントでした。
山田:うんうん。知り合う前は、お香のことはそれほどご存知なかったと仰っていましたね。
大塚:そうなんです。インテリアショップなどで手に入るコーン型のお香をときどき焚いていたくらいです。特にお線香のことはほとんど知りませんでした。しかし、漢方のなかにも、漢方香をはじめお香にかんするものがあるので、学んでみたいと思って参加しました。
漢方で季節を感じる
山田:漢方に出会ったのは、どういったきっかけだったんですか?
大塚:きっかけは大学の卒業論文ですね。私は看護学部出身で、看護師と保健師の資格をとっています。けれども卒論では、現代医学から離れて、伝統医学を題材にしました。伝統医学では処方として薬草を使ったり、お祈りをしたりします。そのなかに漢方やアロマもありました。それが最初の出会いですね。
山田:なるほど。
大塚:最初の出会いはそこですが、ふたたび出会い直すのはしばらく経ってからです。大学を出てから看護師として働き、そのあと企業で保健師をして、結婚を機に一度仕事をやめました。それから夫とともに自然豊かな神奈川県秦野市のBESSの家に移住しまして。そのタイミングで、自分で仕事をつくろうと思ったときに、漢方のことを思い出したんです。
山田:自然に触れるなかで、卒論のことを思い出したんですか?
大塚:そうですね、なかでも季節感みたいなものを強く感じるようになったんです。自然のあるところに行くと、季節を思い出すんですよ。たとえば、都会だと冬でもトマトが買えるけれど、近くの直売所ではもちろん売っていません。漢方には季節に沿って暮らすという基本的な考え方があって、そういう発想の大切さに改めて気づきました。
山田:たしかに、都会にいると季節を感じる機会はあんまり多くないですよね。
大塚:そうそう、「夏野菜は身体が冷えるから、冬には食べないように」なんて漢方では言われるんですけど、都会ではなかなか思い至らなくて。
香りのいい漢方茶をつくる
山田:そういった漢方の考え方と、私たちが身近に接しているお香の世界、香道の世界には近いところがあると感じていました。そのなかで大塚さんとお話させていただいて、どんどんリアリティが湧いてきたんです。さらに漢方でブレンドティーがつくれると伺って、これはもう一緒にやるしかないなと(笑)。
大塚:私はまだ活動を始めてから浅いですし、オンラインで販売しているわけでもなかったので、お誘いをいただいたときは夢のようでした。
山田:とんでもないです。私も誘ったはいいものの、どのように進めていけばいいかわかりませんでした。お話していくなかで、お香と漢方に共通する原料を探ったり、時期的に実施は夏がよさそうだとわかってきたり。少しずつ、やりながらわかってきた感じでしたね。
大塚:そうですね。実際にお茶をブレンドしてみて、みえてきた感じがします。香りを重視するというコンセプトを決めたあたりで、だいぶイメージが浮かぶようになりました。いつもブレンドティーをつくるときは、「はたらき」を重視するんですよ。お話を聞きながら、ストレスや冷え、イライラなど、気になることを踏まえてブレンドします。それに対して、今回はとにかく香りのいいもの、そして、夏をさわやかに乗り切れるものにしようと。もちろん、「はたらき」についても考えながらブレンドはしました。
涼しげなお茶
山田:そうして仕上げてくださった漢方茶がこれですね。見た目にも素敵です。ここからは、実際にお茶を飲みつつお話できたらと思います。早速いただきますね……うん! おいしいです!
大塚:ありがとうございます! 嬉しいですね。ベースはジャスミンで、それにコーンフラワー、ミカン、ナツメ、桑の葉を加えています。ナツメは漢方らしい原料ですね。
山田:なるほど。最初の段階では、緑茶にしてはどうかという話もありましたよね。
大塚:そうそう、ほかにはハイビスカスを使うというアイデアもありました。ハイビスカスも夏にぴったりの素材ですが、意外と香りが弱くて。緑茶も試しましたが、涼しげな見た目の透明感も出したかったので、琥珀色が綺麗な仕上がりのジャスミンに落ち着きましたね。
山田:効能の面ではいかがですか。
大塚:桑の葉には体の熱を冷やす働きあるとされています。イライラしているときには落ち着きを与えてくれる。涼しげな仕上がりにしたので、夏の夕涼みに飲んでもいいかなと思います。
山田:たしかに、ホットで淹れているから温かいはずなのに、どこか涼やかな印象です。
大塚:お茶には、ほうじ茶のようにどちらかといえば身体を暖めるものもあれば、烏龍茶や緑茶のように冷ます働きのものもあるんです。今回は冷ますものにしようと。ただ、夏は暑いといっても、クーラーに当たったり、冷たいものを食べたり、必要以上に身体が冷えてしまうこともあります。そのため、涼しげな印象を活かしつつも、お腹を暖めるミカンの皮を入れています。
山田:お香の世界では、機能性や効能についてあんまり語られないので、そこが新鮮です。
大塚:クローブとか、八角とか、用いる原料は似ているんですが、考え方に差がありますよね。ちなみに効能だけでいうと、ブレンドする原料の種類は少ない方がストレートに働きます。種類が多くなると、丸くなっていきます。たとえば、ミカンの皮とナツメだけでも漢方茶としては成り立つんですよね。
山田:「使う原料の種類を増やすことで、ひとつの要素を突出させないようにする」という考え方は、私も最近大事に思っています。特定の香りや働きだけを考えると、どこか強く、極端な印象のものになってしまうんですよね。香雅堂のお香は、ごく一部に香木の香りをピュアに楽しめるものがありますが、基本的には7-8種類の原料を混ぜています。
大塚:なるほど、お香の世界でもそういう考え方があるなんて。
山田:今回このお茶に合わせて4g入の香袋をつくりました。その香袋も龍脳や橙皮、カミツレ、ハッカなど、複数の天然の原料から制作しています。
暮らしを楽しむ
山田:このブレンドティーは、どんなふうに楽しんでいただくといいでしょうか。
大塚:ホットで飲んでいただきたいですね。あとは純粋においしさと香りを味わってもらえたら嬉しいです。体調が悪いからお茶でなんとかするというよりは、深く季節を感じられたり、お茶の時間を楽しんだりして、暮らしを豊かにしていただけたらなと。それは私自身の目標でもあって、今回の制作で改めて思い出すことができたんです。
山田:素敵ですね。実際、暮らしが落ち着いていないと、お茶を淹れる時間もままならないですものね。
大塚:そうですね。お茶を飲まなきゃ、お香を焚かなきゃ、という感じになってもいけないので。ゆとりをもたらすものとして、楽しんでいただけたらと思います。
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