淡々と、鮮やかに 雪組 彩風咲奈「LAST MISSION」
8月20日、ディナーショー「LAST MISSION」のソワレを配信で見た。彩風咲奈がディナーショーをすることが決まった時から楽しみで、演出が指田珠子という情報が出てから、さらに楽しみにしていた。
すばらしいディナーショーだった。
指田珠子についてはこの記事で詳しく書いたが、彼女の作品の多くは強い作家性が現れている。そこで、今回のディナーショーでは指田珠子の個性と彩風咲奈の個性がどうぶつかり合うのか、というのが私の気になっていたことのひとつだった。
しかし「LAST MISSION」は、想像していたよりも淡々と、しかし鮮やかに進んだ。それは想像していた指田珠子の作る世界ではなかったが、でもそれが最良の選択だったと思える。
「LAST MISSION」で何より大事なのは、「彩風咲奈の」LAST MISSIONであること。指田珠子は自分の世界を打ち出すことよりも、彩風咲奈が見せたい世界を実現することに重きを置いたようだった。彩風咲奈の類稀なる自己プロデュース力があったからこそ、成立した世界。選曲ひとつひとつにも彼女の想いが感じ取られたし、特にタンゴの場面は何を見せたいのかが明確ですばらしかった。そして、最後に発せられた「自分のLAST MISSIONは4人のこと(ディナーショー出演の男役4人)を見届けること」という言葉で、選曲の意図がよりいっそうはっきりし、全員男役のディナーショーを行う意義、「LAST MISSION」である理由がストレートに伝わってきた。
彩風咲奈のMISSIONは彼女だけのものではなく、いつも彼女が成長を見守ってきた男役たちにとってもMISSION。4人それぞれにLAST MISSION(デュエットソングとトーク)を課した。愛に溢れた形で。
正直、指田珠子は何があっても自分の世界観を貫く演出家だと思っていたので驚きはしたが、ジェンヌ個人や劇団側の要求に着実に応えるというのも重要な演出力であり、その力も持ちあわせていることが分かった。一方で、完全に演出の意図が隠れていたわけでもなく、バーカウンターのある装置には彼女のこだわりが見受けられた。男役がバーカウンターに寄りかかるだけで、ひとつの情景が浮かび上がるし、スターの給水タイムも自然に見える。シンプルだがとても効果的な装置だった。(装置の担当者がどなたなのか見つけられなかったため、ご存知の方いらっしゃれば教えていただきたいです)
やはり、指田珠子はこれからも追っていきたい作家だし、素敵な時間を作ってくれた彩風咲奈には感謝でいっぱいである。ご出演のあがちん、さらんらん、あおはくん、かなさん、そして咲さん。とってもかっこいい男役さんたち。ありがとうございました!!!