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アンソロジー主催の忘備録

今年の6月に、「五夏文学オマージュアンソロジー」というアンソロジーを発行し、僭越ながらその主催を務めさせていただきました。
主催をやる中で、アンソロジーの主催って何をすればいいんだろう?どれだけやることがあるんだろう?という疑問や不安を持つ方もいるかもしれないな…とわりと強く感じましたので、ここにあくまでも私が経験したことだけですが、アンソロジー主催をするにあたってしてきたタスクの内容を忘備録として残しておきたいと思います。

①執筆者募集

まず最初にしたことはコンセプトの確認と簡単な仮の募集要項の作成をし、執筆者を募ることでした。
もちろんアンソロによっては主催の知り合いのフォロワーなどに声をかけていって執筆者を決めていく手法もありますが、私は今回のコンセプトが「文学オマージュ」であり、自分が知っているフォロワー以外からも広く募りたいと思ったので公募制にしています。
アンソロ発足に至るまでの経緯については色々とあったので、執筆者募集をする際に注意書きとして掲載しました。

こちらの内容で2022年7月下旬に募集をかけています。

②執筆者確定、正式な概要メモを作成し共有

ありがたいことに予想を大きく上回る数のご連絡がありまして、執筆者募集は早期に締切らせてもらい、15名で確定とさせていただきました。
その後非常に残念ながらご病気で辞退された方がいましたので、最終的には14名でのアンソロとなりました。
この時点で、執筆者様向けの正式なアンソロ概要(コンセプト説明、装丁仕様や今後の日程など)について記載したテキストを共有する必要があると思い、概要書を作成しています。
これについては共有するためのメディアとして以前に私が執筆者側で参加させていただいたアンソロの主催者様が使っていらっしゃった、mimemoというブラウザ上にメモを残せるテキスト共有メディアを私も参考にして使わせていただきました。
こちらはURLを知っている人だけ見ることができるよう仕様を変えられるサービスなので、非常に便利でした。記載内容に変更があった際も、変更点をわかるようにして再度URLを執筆者の皆さんに送り、共有していました。

概要書にまとめたのは主に以下の内容です。
【仕様】
・タイトル
・本のサイズ
・年齢制限有りか無しか
・予定ページ数(ざっくりした数でOK)
・本文用紙(決まってたら)
・予定している印刷所
・頒布時期
・通販予定先(とらのあななど)
・再録可能期日(頒布から半年後、一年後など)
・お礼(献本、薄謝等)
【費用負担について】
今回は合同誌ではなくアンソロジーになったので主催が全ての費用を出すことにしました。
【今後のおおまかなスケジュールについて】
・企画発足時期、参加者決定、内輪にて共有
・告知アカウント作成
・原稿締切
・組版調整
・部数アンケート実施、発行部数決定
・印刷所入稿予定
・本文サンプル掲載
についての日程をおおまかに設定しています。
【原稿テンプレート、フォントなどの指定】
・今回全て小説になるので、原稿テンプレートを四六判のものを探して指定させてもらっています
・フォントはIPAex明朝に統一
・原稿提出時のフォルダ名などの指定
・ページ数指定(今回はなんと文字数制限なしで書いていただきましたので、13ページ以上、というアバウトな指定でした。本来であればきちんとしたページ数指定をするのがいいと思います)
・奥付等に記載する情報(ID、あとがきなど)のご教示のお願い
【主催連絡先】
以上のような内容をまとめています。
原稿締切がだいたい4ヶ月前、そこから主催側で組版調整をして、2ヶ月前には入稿するようにしました。
わりと早めの原稿締切と入稿予定にしたのは、概要書を作成した時点で考えていた装丁が結構盛り盛りだったからです。
募集をかける時になんとなく考えていたのは文庫サイズだったのですが、この時点でハードカバーにしようと思い立っています。
以下の画像は企画発足してTwitterでアンソロの告知アカウントを作った際に決まっていた装丁一覧です。

以上のような装丁を考えていたので、なるべく早めの入稿にしようと思っていました。
デザインを依頼してやり取りをしていく中で、この装丁から更に装丁が追加されていくことになるのですが、それは以降の章でお話しします。
ちなみに告知アカウントのアイコンとヘッダーは執筆者としても参加されているフォロワーの戌亥さんにデザインしていただきました。最高におしゃれなデザインをありがとうございます!

③デザイン依頼(表紙・ブックケース、フライヤー)

デザイナーさんへのデザイン依頼は個人誌でも何度かやっていたので、今回もわりとスムーズに進めることができたかなと思います。
まずは依頼するデザイナーさんを決めて依頼をするのですが、この時点でどのような表紙にするか、だいたいのイメージが決まっていなければなりません。
執筆者の皆さんからオマージュ元の作家さんを聞いてまとめた時点で、日本の作家さんが多かったので、少しレトロな雰囲気のデザインにしたいと思い、国立国会図書館がデジタルアーカイブで公開していた、大正時代のカット絵集からデザインのモチーフを選んでもらうことにしました。
アンソロ本体(表紙・ブックケース・活版印刷を使ったノベルティ)のデザインを、S_D様にお願いしています。
また、アンソロのフライヤーとして、活版印刷を使ったチラシを作成したいと思い、活版印刷の会社に連絡を取り、フライヤーのデザインを含めた依頼をかけています。

④フライヤー完成

フライヤーの作成をお願いしたのは活版印刷会社のまんまる○様です。
こちらも大正期のレトロな雰囲気にしたいと思い、大正時代の雑誌に載っていた広告を参考にデザインをしてもらっています。
ちなみに大正時代の雑誌に載っている広告を実際に見るために、国立国会図書館にまたお世話になっています。土曜日は予約制だったので図書館に予約を入れて入館し、検索して広告が載ったページをコピーして持ち帰りました。
手順を踏まなければいけないので少し面倒ですが、国会図書館は昔の資料を探すのには何かと便利です。
それで実際に出来上がったフライヤーがこちらです。

キャラクターのイメージカラーで2色用意してもらいました
活版印刷の版もいただきました
活版なので裏から見るとうっすら凹凸があるのがわかります

こちらのフライヤーは2022年12月のイベントから配布しました。

⑤印刷所さんへの問い合わせ

デザイナーさんと並行して、印刷会社さんともやり取りをしていました。四六判でのハードカバーとブックケースをつけられる同人誌印刷所があまりなく、最終的には西村謄写堂さんにお願いすることになりました。
印刷所さんのどのプランにも当てはまらない装丁だったので、まずはお問い合わせをしてみたのですが、ここにしよう!という決め手なったのが西村さんに「こうこうこういう装丁でやりたいんですが…可能でしょうか…?」と問い合わせをしたところ「全部できるよ!」と元気よく返事が返ってきたところですね。その後も色々とやり取りをしていく中で、ブックケースに全面箔押しは可能ですかね…とか、箔押し2種類でできますか…とか装丁が盛られていったんですけど、全部に「できるよ!」と返ってくるので、この印刷所、できないことないんか…?とちょっと恐ろしくなりましたね。
布張り用の布をどうするかで悩んでいた時に布のサンプル(絶対あれは業者用)を送ってくださったり、箔の種類でご助言くださったり、本当に親身になってご相談に乗っていただきました。
この場を借りて御礼申し上げます。
ありがとうございました。

⑥原稿締切、組版調整

2月初め、原稿の締切がありましたがありがたいことに皆さん協力していただきまして、無事に全ての執筆者様の原稿をお預かりすることができました。
ここで問題が発生します。
文字数制限をなくしてしまったがために、大幅に予定ページ数をオーバーしてしまったのです…!!!(そりゃそうなる)
当初の予定では200ページくらい、と思っていたのですが、お預かりした原稿を組版してみたら470ページくらいある。470ページ…!?しかも大変申し訳ないことに原稿締切前にありがたくもご相談いただいたのでこの時点で6万字書いてきていただいた執筆者様には4万字ほどに文字数を減らしてもらっていました…本当に申し訳ない…それでも470ページ…!?まあでも書いていただいたものはなるべくそのままお出ししたいので…!!!と思い、最終的には468ページでの発行になりました。

⑦表紙・ブックケース・ノベルティデザイン決定

原稿締切と組版調整がだいたい終わり、背幅が決まったのでデザイナーさんにお伝えし、表紙とブックケースのデザインが本決まりとなりました。
とっても素敵なデザインにしてもらっています。

ブックケースデザイン
上製本デザイン
ノベルティのノートデザイン


めーちゃくちゃ素敵じゃないですか!?本当にいつも最高の本にしてくれるデザイナーさんには感謝してもし足りません🥲ありがとうございます!

⑧告知アカウントにて部数アンケート実施

これはだいたい一週間くらい時間をとって、Googleのアンケート機能を使ってアンケートを取りました。同時にPixivにも投稿してGoogleのリンクを貼り、アンケートを取っています。
Twitterのアンケート機能だと賑やかしに押してく人がいる可能性もあるので、今回は一応確実性の高めなGoogleアンケートを使ってみました。
結果としては個人的にもこれ以上は刷れないかも、というラインの部数になったのでちょうどよかったかな、と思います。

⑨入稿、デザイン公開

4月中に入稿して無事にデータ受け取りが完了して不備もなし、脱稿!となりましたので告知アカウントにてデザインを公開しました。
かなり反響があり、そうだよね、素敵なデザインだよね、と私も鼻高々です。

⑩実物が手元に届く

頒布の月である6月に入って、アンソロの実物が手元に届きました。
ずっしりと重厚な作りのブックケースと特別感のある布張りのハードカバー、それらが最高のデザインに彩られて私の手の中にあることがなんだか不思議で、現実味のない瞬間でした。
宙に掲げて、陽の光に透かして分厚い本を眺めて、少し涙が出て、大切な本が無事に完成したことを喜びました。
告知アカウントでも実物サンプルのお写真を掲載しました。

ブックケース・上製本おもて
ブックケース・上製本うら
ノベルティのノートと一緒に

11.通販準備

通販の準備もしなきゃ!ととらのあなさんに登録して、告知アカウントでお知らせしやすいように事前予約の開始日を指定しています。
最初の頃はとらのあなさんの使い方が全然わからなかったけどこういうこともできるんですねえ。

12.サンプル、お品書き掲載

6月に入ってイベントのスペースも発表されたので、サンプルとお品書きを公開しました。
お品書きはこちら

死ぬほど装丁を盛ってしまったのでお値段が高くなってしまったのが心苦しいのですが、部数アンケートを取った際に頒布価格についても希望を募ったところ皆さん本当に広い心で値段は気にしません、と言ってくれる方が思ったよりもとても多かったのが驚きでした。
高くなってしまうかもな〜、とは当初から思っていたのですが、ここまでのお値段(これでも元は取れていません)での頒布でも苦情の一つも来なかったのは大変ありがたかったです。

13.イベント頒布

6月25日のJUNE BRIDE FESでの頒布でした。
本がでかい上に厚くて重いので、スペースに段ボールが何箱来るのかもわからなくて、2スペース取っていて本当に良かった……と思いました。イベント申し込む時に「ちゃんと2スペースで申し込んだ?え、1スペース!?絶対2スペースじゃないと無理だよ!」と言ってくださったフォロワー、ありがとうございます…!!!助かりました。
当日はたくさんの方々に手に取ってもらい、楽しみにしていました!などの声をかけていただき本当に嬉しかったです。
やっぱり自分で作った本を自分の手で頒布することができるというのは本当に得難い体験です。
執筆者の方々にも直接お渡しできて感無量でした…😭

14.まとめ

こんな感じで主催をなんとか務めることができました。
ここまでやって来れたのは主催の先人であるフォロワーさんがいたり、執筆者の方々にもたくさんご協力いただいて支えられてきたからだと思います。
私一人では絶対にやり遂げられなかったと思います。
デザイナーさんや印刷所さんも含めまして、皆さんに大変お世話になりました。
ありがとうございます!
アンソロ自体はまだ少し在庫がありますので8月インテにて頒布予定です。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。

これからアンソロの主催をするけど何をしたらいいのかわからない、という方がいましたら大雑把な記録ではありますが、この忘備録が少しでもお役に立てたら幸いです。

主催は大変なこともあるけどとっても楽しいです!何より本を作るのが本当に楽しい、原稿作業は苦痛だけどなんだかんだ言ってイベントで本を頒布したら全部チャラになるくらい楽しい!
暑い日が続きますのでお身体ご自愛してお過ごしくださいね、そして素敵な同人ライフをお楽しみください〜!

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