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夜の宴

 宴は日が沈んでから始まる。
 
 村の住民たちは厳かな雰囲気の会堂に集められ、静かに座って待っていた。
 柔らかく軽やかなオルガンが鳴っている。
 ろうそくが灯り、濃紫から藍色のグラデーションに染まる窓を縁取る。
 
 控えの部屋では、今日の主賓がドレスを選んでいた。鮮やかな赤いドレスか、深い緑のドレス。部屋にあるものから選んで欲しいと彼は言っていた。

 どちらも今夜にはふさわしくない、とつぶやく。
 頭を抱えてため息をついたところで、クローゼットの角に古びた箱を見つけた。引っ張り出してみると、繊細な白のレースでできたドレスだった。ウエストから太くて黒いレースリボンをたらし、同じデザインの目隠しがおさまっていた。
 「これにするわ。」
 彼女は目を輝かせ、喜びではじけそうな笑顔を見せた。
 私たち侍女は、4人がかりで急いで彼女の身支度を始めた。
 旦那様がお待ちだろう。美しく、愛らしくお仕立てしなければ。
 
 
 空はすっかり闇にみち、そこへ真珠のような月と宝石のかけらをまき散らしたように星が輝いていた。
 不思議ね、月の輝きは太陽によるものなのに。
 彼女が微笑む。

 会堂の奥の旦那様が、彼女の姿を認めると驚いたような表情を見せ、それから優しいような、寂しいような眼をして手を差し出す。
 「そのドレスを選ぶなんてね。まるで花嫁みたいじゃないか。」
 手を取る彼女は月の精のように美しい。
 「わたくしはそのつもりでしたけれど。」
 
 村人たちは拍手を送る。
 侍女たちは深々と頭を下げて会堂を後にした。
 
 この後何が起こるのだろう。
 何にしても、旦那様も彼女もお幸せそうだった。それだけで胸がいっぱいだった。


 そこで目が覚めた。

 旦那様はモーフィアス似の吸血鬼でした。

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桶狭間
保護猫のお世話をしつつ夢の話を書いたり日々のあれこれを書いたり打ちひしがれたりやる気になったりしております。やる気はよく枯渇するので多めに持ってる人少しください。