『Paradise』プレイ感想

【ブランド】PIL/SLASH
【原画】ことみようじ
【シナリオ】休養沢ライチ(LOVE&DESTROY)
【プレイ時間】約12時間

http://pilslash.jp/product/paradise/index.php

ストーリー

商店街の福引で南の島ツアーを引き当てた、フリーターの主人公「アヅマ」。いざツアーに参加したところ、なんとビックリ、参加客は全員男!

初対面での印象最悪!
スカした建築デザイナー「ミツギ

リーダー格でガタイよし!
大らかで優しい「マツダ

明るくて食いしん坊!
童顔大学生「タカラ

他、フリーのカメラマン「シマダ」やダンディーな添乗員「ホンゴウ」など、個性あふれる面々と行動を共にし、徐々に打ち解けあう一行。
しかし、そんなリゾート気分も束の間、ある日突然無線が繋がらなくなる。更には物資配給のヘリも来ず、外界との接触が遮断されてしまい早数日、所謂、完全なる「クローズドサークル」と化してしまう無人島!
不安が重なる極限状態が続き、ついに事件が起きてしまうーーーーー
果たして救助は来るのか!?無人島に隠された秘密とは!?クセだらけのメンバーが極限状態で見せるそれぞれの「本性」とは!?
今、最凶で最虐の悪夢が始まる・・・

シナリオ雑感(ネタバレあり)

…とまぁ、みんなだいすき(?)閉鎖空間+地獄の人間関係が織りなすサスペンスサバイバルモノです。
シナリオはあの伝説の同人BLゲー『CAGE-OPEN-』『CAGE-CLOSE-』を手掛けた『LOVE&DESTROY』の休養沢ライチさん。
ピルスラ×ラブデスの強力タッグに加え、原画がことみようじさん…!
ことみようじさんといえば『地っ球の平和をま〜もるためっ!』『闇の声-異聞録-』等の男性向けで知ったのですが、シンプルな線とアニメタッチな絵柄で好きだったので、まさか女性向けも手掛けるとは…と当時驚いた記憶。
(余談ですが幻のゲーム「はるはろ!」もことみさん原画でしたね………)

メーカー通販で本作を購入したものの、多忙な時期により詰んでしまって早3年半…やっとプレイできた嬉しさを噛みしめながらじっくりプレイす…………る間もなく、一気にクリアしてしまいました。一瞬だった。

攻略順はミツギ→マツダ→タカラ。
ミツギ&マツダの個別ENDをクリアし、最後にタカラエンド(真相ルート)に行く流れの本作。個別ルートに入ってからの展開が各キャラそれぞれ異なり、尚且つ真相は真相ルート終盤までわからないので「これどうなるの!?誰が犯人なの!?何でこうなったの!?」が最大のモチベーションになり、集中力が途切れることなく楽しめました。
以下、ネタバレ有のキャラ別感想です。

アヅマ

主人公。元被虐待児で現在天涯孤独のフリーター22歳。
過去が明らかになるまでは、所謂「明るくて調子がいい」タイプの青年だと思っていたのだけれど、実は「明るくて調子がいい」ように振る舞っているだけだったという…。そりゃ産まれて10年あんな地獄のような生育環境で暮らしてたら、ただの「明るくて調子がいい」人間にはなりますまいな…。
両親が死んだのが10歳……というと小学4年生くらいか。学校ではどんな存在だったんだろう。そもそも、アヅマが家族以外の周りの大人から「虐待に気付いてもらえていなかった」事実も悲しい話だよなぁ…。
プールや体育の授業のことを考えると全見学も難しいだろうし、やっぱり小学校自体にもあまり通わせてもらえていなかったのだろうか。

コンプ後の今、そんなアヅマが彼らに出会って心通わせていく様を思い返すとグッとくるものがありますな…幸せであれ…。
…まぁちゃんと「心通わせ」てるのはミツギしかいないけれども…。
マツダENDではマツダのバイオレンス性癖にアヅマがトラウマ掘り返さず付いていけるのか不安だし、タカラENDでは、二人が心通わせるにはまだまだ時間がかかりそうなので、まごうことなきハッピーLOVEエンドになったスパダリミツギさんにアヅマを託したくなる。

ミツギ

初対面~沼に突き落とされる(物理)辺りまでは、あまりにもアヅマに突っかかってくるものだから、こちらも応戦状態だったのですが……まさかツアー参加者唯一のマトモな常識人であろうとは全く予想できず。
彼の言動がその類まれなる「冷静さ」からくるものだとわかってからは、他ルートで何かしらの意思決定を求められるたびに、全てミツギに任せたくなるようになりました…。(部屋は汚いけど)頼りになる男…。

で、アヅマがミツギの前でドロドロに雌化するの、島の特殊なガスとかお香とか空気のせいだと信じてやまなかったのですが、もしかして本気でただ単に「体の相性が、クソほど良い」(Paradise屈指の名セリフ)に尽きるのですか????
個別ルート入ってからは、ミツギもアヅマも二人きりになった瞬間から発情していて、アヅマなんてずっとローター入ってるのか?ってくらいの反応してたじゃないですか…。
初回ルートがミツギだったので、マツダやタカラともこういうビクンビクンタイプのエロシーンが来るのかとビビっていましたが、あれはあくまで「体の相性が、クソほど良い」ミツギ専用の反応だったとわかりひと安心。

本編ではミツギの「恩師」について語られないまま終わってしまったのが残念(FDやればわかるのだろうか…)
ミツギルートは、お互い恋に落ちるのが早すぎるとか、沼に突き落としたりした理由とか、色々細かいことは気になるものの、正直「体の相性が、クソほどいい」というトンデモパワーワードが頭の中を支配してしまったので、色々と思考するのをやめました。運命の相手ってことなんだろう。きっと。
初回クリアがミツギだったので、アップダウンの少なめなシナリオに最初は物足りなさを感じていたのですが、コンプ後に思い返すと一番平和で優しいルートでした。アヅマ、お幸せに…。

マツダ

めちゃくちゃ好きなんだよな…マツダ…。
ガタイ良くて声が良くて、優しくて大らかでリーダーシップ取ってくれて誠実で………そして裏では暴力性を秘めて生きている恐ろしい男…。
いや、バイオレンスはよくないですよ。わかりますよ。被虐待児のアヅマにボディ打ち込むのは絶対いかんですよ。
だけど「暴力がマツダの全てではなく、その誠実さと暴力衝動が表裏一体に同居している」辺りが、今まで出会ったキャラの中でも珍しく、ただのDV彼氏とは一線を画している魅力がありました。
いや、いくら極限状態だったとはいえ、他でもない「暴力性」が表面化してしまう時点でもうアカンのですけどね。「普通じゃない状況だから仕方ないね」で済まされる話ではないのは重々理解しているのだけれど。
それでも抗えず好きなのは、単純にマツダの顔とガタイと声が好みなのと、ジャイアン的暴君ムーブがそのビジュアルにハマりすぎているから…。
「嫌いだから教えない」とか「好きだから謝らない」とかね…とんでもないこと言っているんだけど、いっそ可愛いとすら思えてしまった…。
ENDについて。プレイ中は『本土に戻って服役出所エンド』になるんだろうなと予想していたのですが、まさかの『いつ沈むかわからない脱出ボートに乗り込み、ヘリの音聞こえて終了』とは。
や、救助が入ったのならよかったけれども、諸々解決しないままだったのでものすごい勿体ない終わり方だと思ってしまった…。
FDではマツダとアヅマの関係性の進展や、マツダの暴力性やアヅマのトラウマ問題も解決してくれるのだろうか…期待してる…。

あ、あとマツダが「中小企業の営業マン(管理職)」なの最高だと思いました…。27歳で管理職…もし役職付きの係長クラスだとしたらだいぶ早い出世で、そこも彼の表の人間性と仕事の出来るところが垣間見えるポイントですよね。
管理職だとしたら自ら外営業で汗水垂らすわけではないのかな、とか。部下の営業マンと帯同して、帰りに喫茶店で改善点とかFBするのかな、とか。同僚誘って飲みに行ったりラーメン食べに行ったりするのかな、とか。タバコ休憩してる時の目つきがたまに鋭くて、一部の部下からは少しだけビビられてるのかな、とか。
…うーん、営業マン妄想、無限に出来る…………何系の企業なんだろう…。
あとマツダの恋愛遍歴については是非とも詳細を伺いたい。お願いします。

ホンゴウさん&シマダさん

この二人、完全なるBAD要因で少し悲しい。特にホンゴウさん。
見た目でチャラいイケおじなのかと思いきや、中身は執事っぽいというか、常に敬語だし腰が低いし優しいしで、結構癒しだったんですが…まさかの個別BADで豹変するっていうね…。
自分の命を引き換えにされているとはいえ、あんなに気持ち悪くならなくても…。いやでもあのヤバい淫語連発シーンは「ピルスラ摂取してる」感が強く感じられてよかったですけども。
ピルスラ感あるといえば、シマダさんENDもかなり。
「死体好きだけど殺人は出来ないから、クスリ嗅がせて昏倒した人を死体に見立てて撮影するのが趣味」という、もう取り返しがつかないタイプの人だった。ヘビーな過去持ちなので、アヅマと相通じるものがあるかもしれないと思っていたのに…。
FDではホンゴウさんとシマダさんのEDがあるらしいので、そこは素直に楽しみにしてます!!!!!

タカラ

ガッツリ真相エンド。
ミツギルートでもマツダルートでも、タカラに何かしらの違和感は抱いていたけれども、まさかここまでド直球の「黒幕」だったとは。
タカラの正体、例えば「(一命をとりとめていた)アヅマが殺した弟」とか「両親の親戚の子」とか「再開型幼馴染」などを予想していましたが、全然違っていたので、とても嬉しい。シナリオの予想は裏切られるためにある…。
黒幕自らによる「答え合わせ」により、ハイスピード伏線回収されていくことに対する賛否はありそうだけど、私は好きです。爽快で。
救出後、ミツギとマツダがいつの間にかアヅマと「(悪友寄りの)仲間」ポジになっているのもとても良い。
そして極めつけのラストは国外逃亡。国外逃亡ってENDとしては結構ぶん投げ感あるとは思うんですが、私自身「こまけぇこたぁいいんだよ!」精神なので全然アリ。
もうあのままガーッと飛行機乗って4人で逃げ回って、せわしない日々を送ってほしい。国外逃亡には夢があるッ!

そして問題のタカラBAD。euphoria夢幻廻廊かと見紛うほどの胸糞シーンでしたね…野菜くず…。幼児虐待は苦手な部類なので、アヅマの幼少期の描写があれ以上描かれていなくてよかった。いや、十分きつかったんだけども。
人としての尊厳を奪われまくった挙句、タカラの眼球ぶち抜いて脱出するラスト、BADのその後も見たくなる余韻がありましたね…。極BADの中では一番好き。

タカラ家事情の詳細は本編で描かれていないものの、物心ついた時からアヅマ「担当」だったところとか、自称「野生児」で身体能力めちゃくちゃ高いとか、その辺のバックボーンをもっと知りたい。
マツダルートで、アヅマがマツダから暴力受けていることに気付いた時のタカラとか、思い返すと「自分のものに何してくれてるんだ」って怒りだったんだよなぁ…。
あとはBADの「さいっこおおおおおお゛お゛お゛お゛お゛!!」が渾身の叫びすぎたので、ハッピールートの「(食べたいけど)食べたら…なくなっちゃうのに」がしおらしく聞こえるというね。
タカラはアヅマへのカニバ衝動をどうやって抑えながら今後生きていくのか…とかもすごく気になる。

総評

ガッツリ閉鎖空間+極悪BADエンド+各キャラの二面性でピルスラ×ラブデスを十分摂取出来て満足だったのですが、個人的には、不穏な展開のオンパレードだった本作が、最後の最後にメインキャラ生存+真相スピード解明+疾走感ある希望ENDかましてくれるところがとても好きです。

以上、推敲もせずズカズカ書き殴った感想を見ていただきありがとうございました。次回はParadiseFD1作目「Paradise結-MUSUBI-」の感想で。
色々な伏線や気になること…FDで解決することを願っております。


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