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『クラブ・スーサイド』プレイ感想

【ブランド】Celtia.inc
【ジャンル】アンチロマンス乙女ゲーム
【プレイ時間】約10時間

http://club-suicide.site/

プレイのきっかけ

Twitterを彷徨っている際に目にとまった、本作の企業アカウント。
公式HPの気怠い雰囲気と驚きの低価格(当初200円ってアナウンスされてたのバグかと思った。現価格の1,000円だって激安なのに…)に惹かれ、たどり着いた下記注釈。

要素:登場人物全員陰キャ
攻略人数:5人(恋愛関係になるとは限りません)

この2つの注釈に所謂「乙女ゲー」初心者でもプレイ可能と判断し、購入に至る。

結論……………いやぁ…………買って良かった!!!

キャッチコピーこそ「陰キャ」「自殺」と強めな単語を使っているものの、この作品はそれらに警鐘を鳴らすわけでもなく、全肯定するでもなく、一貫して伴走し「寄り添う」姿勢であるところがとても好きです。
あと、注釈の1つである(恋愛関係になるとは限りません)が、むしろ(恋愛関係には一切なりませんが隣人愛は芽生えます)だったところも個人的には超・好・感・触。
あと、自分=主人公ではないので(主人公の名前はデフォルトが「新堂林檎」ちゃん。TOP画像の通りガッツリ顔見せあり)キャラ同士の関係性をねっとりと壁として見ていたい人にはとてもおすすめ。

【ストーリー】

卒業式も間近、春の風吹き始める七日間。少年達は自らの死を望む。
人間関係の摩擦から逃げるように
気づけば不登校となっていたあなた。
久々に学校に来てみれば、ふと目についたのは異質な部員募集ポスター。
その名も【クラブ・スーサイド(自殺同好会)】
特に強い原因はないが、なんとなしに「死にたい」と思っていたあなたは
興味半分本気半分でクラブを覗きに行ってしまう。
しかし、クラブに集まった五人の少年達の
“今から七日間で完全にこの世への未練を絶ち、
自ら命を断つ”という本気さに気圧され、
自殺することに恐怖を感じ、早くも「生きたい」と思ってしまう。が、今更本気で死を目指す少年達の前で
「やっぱり死にたく無いです」などと言える立場も、
勇気もあるわけがなく・・・・・・
胸に秘密を抱えながら、死にゆく少年達の想いと陰を追う
奇妙で悍ましい七日間が始まったのだった。
(公式HPより抜粋)

【シナリオ雑感 】

プレイ当初は、家庭環境・いじめといった外的要因で自死を選ぶ少年達の話なのかと思い込んでいたものの、蓋を開けたらそう一言で言い表せるような単純なものではなかった本作。
確かに、自殺に至るまでの理由って一つなはずはなくて、あらゆる要素が重なり合っているのがむしろ当たり前なんですよね。盲点だった。
また、中にはどうしても個人的に共感できないルートはあれど、そこに至るまでの彼らの気持ちを想うと一概に否定は出来ず…というかしたくない。

所謂「メリバ」を目前にすると、どうしても(自殺以外の方法で、彼らを救えたんじゃないだろうか…)と惨憺たる気持ちになってしまうのが人の常。
しかし、彼らがその人生の中で「考え抜いて出した結果」が自殺なのであれば、私(プレイヤー)の願う「救い」とはあくまで私(プレイヤー)自身を納得させるためのかりそめの「救済」に他ならず、彼らにとっての真の「救い」には寄り添っていないんじゃないだろうか…。
とか、そんなことをつらつらと考えるきっかけにもなりました。
いやまぁ、そんな物分かりのよさそうなこと言ってても、いざ死亡ルートに入ると、全力で「死なないでーーーーー!!!!!!!」ってなるんですけどね。ハハッ、無理無理。
以下、キャラクターの雑感をプレイ順に、ネタバレありでつらつらと書きます。

【見るからに】陰キャ「財膳絵馬」

おどおど猫背なビビりの後輩。
絵馬くんはとにかく優しいし可愛い。
パパママ(ガチムチイケおじ&美女)もめちゃくちゃ良い人だし愛されまくってるし、それを享受できる素直な心も持っているし、しかも一芸に秀でているときた。
なぜそれで自殺する必要がある???「誰にも見つからない死」ならパパママも絶望しない????え????いやいや、絶望するよ。むしろ生きながらにして地獄では?と思ってしまうけれど、そこまでに考えが至らないのが16歳所以…なのだろうか。
死を選んでしまったら、絵馬くんの才能が埋もれてしまう……とか素人目線で考えてしまうけど、「自分よりも上手い人がごまんといる」苦しさはクリエイターならではの苦悩なんだろうなぁ。
マイメr…ではなくアオペロちゃんが大好きな絵馬くん。アオペロちゃんのテーマソング、めちゃくちゃ可愛くて大好きなんですけど、終幕1「夜闇」で流れるアオペロちゃんの歌は重すぎて、本来可愛くて明るい曲のはずなのに、悲しさしかなかった。幸せになってくれ絵馬くん…。
余談ですが、あの歌、作詞作曲に加え歌ってるのもシナリオ&原画の上杉さんと知ってマジでビビる。
天才か????????????????

【夢見がちな】陰キャ「右睡 真咲也」

前髪長い不思議系ボーイ。
声が可愛いんですよ…右睡さん…めちゃくちゃα波出てる。ホワホワした喋りで、且つ正義感の塊の彼。困っている人がいたら何の躊躇もなく助ける慈愛の精神フルMAX。
彼、人間というよりは妖精なんですよね…。そんな妖精の自殺理由が…これまた彼自身にしかわからない難しい理由なんだよな…。
お父さん優しいし良い人だしシングルだし、彼女がいようがいまいが右睡さん死なない方がいいと思うんだけどな~~~~。
確かに人間である限り「救えない」人間なんて何億人といるわけで…というかこの世は「救える」人間より「救えない」人間の方が遥かに多い世界なわけで……。
(せめて「救う」のは自分の生活圏内にとどめておけばいいのでは)…とか、(考えがグローバルすぎていちいち気にしてたら生きていけないよ……)とか思ったけど、そもそも、その不平等性が気になって生きていけないから自殺を選んだんだよね………真理だった。
右睡さんの生存エンド、終幕12「念望」………彼以外の4人は死亡エンドでも「悲しすぎるけどしっくりくる」ことがあるんだけど、右睡さんについてはもう生存以外考えられない。アームカットとか事故死とか首吊り…きついんだよな…「せーの」がトラウマになってしまう…。

【我が道を往く】陰キャ「喰ヶ島 蜜木」

めちゃくちゃ顔が良くてめちゃくちゃ口の悪い、夢男コスプレイヤー。
初見では世の中全てに噛みつくタイプの傍若無人系タイプかと思いきや、口と態度と目つきが極悪なだけの強めのツンデレだった…。
こういうタイプの男がオタクで、且つ、大家族+家族思いとか…おま……好きにならざるを得ないじゃん…。
林檎ちゃんと好きなスマホゲー(アニメ)が被っててテンション上がるところとか、絵馬くんの作品を見て目を輝かせているところとか、夢小説書いているところとか、コスプレ時は憑依タイプなところとか、うーん、思い返しても1つ1つのオタエピソードが軒並み良い。
但し、彼はバックグラウンドが壮絶、そして生々しい。
5人の中で一番、自殺に至るまでの過程が想像できるルートだった。
登場人物の持つ特性の名称(HSS型HSP)を公表するコンテンツってすごい珍しい気が。でもそのおかげで彼の言動や行動がスッと理解できた。
好きなEDはやっぱり終幕16「純白」なんだよなぁ……。
喰ヶ島さんなりの選択で「彼女」を殺さなかったこと、自身も生きることを選んだこと…勿論、その選択は束の間のもので、17歳の彼が今後何を選択して生きていくのかはわからないけれど、それでも林檎ちゃんと出会えて、心が解きほぐされていったのは事実。
是非とも林檎ちゃんと不思議な関係を続けていってほしいですね…家族ぐるみで…。

【陽キャとも面識のある】陰キャ「舞渕 明陽」

愛してるよ舞渕明陽ッッッッッ!!!!!!!!!!
うぅ……好き…………今までこんな…こんなタイプの人出会ったことなかった…………。
最初は「ニコニコ優等生だけど実は強かな切れ者」とかそういうタイプかと思ってたんだけど、そんな簡単な二面性じゃなかった……………。
私の性癖ドストライク……というわけでは全然ないんですが、彼の立ち居振る舞い、雰囲気、私服、話し方が、トータルでめちゃくちゃ好き。
「百合はお嫌い?」のファーストトークから既に上品さと色気のだだ洩れ方が素人のそれではないんだよなぁ。
しかも彼、吉屋信子もお好きときた(作者様のフリートで確認しました…吉屋信子、私も好きです…)
喰ヶ島さんルート後半に登場する「開花」一歩手前(のように見える)の彼を見て、喰ヶ島さんルートにも関わらず意識持っていかれそうになったというか…一気にあれで好きになりましたね、舞渕明陽。
ルート外の彼はあれがデフォなのか…とか、ルート外の7日目に彼は何を選ぶのか…とか、気になって気になってもう。

舞渕明陽もね…背景がこう…リアルな仄暗さを感じるんですよね…。
親からの精神的虐待。別に直接手を上げられているわけでも、ネグレクトをされてるわけでもないんだけど、どうにもメンタルに直でくるエグさ。しかも被害者は本人ではなく家族。
そこで自己保身に走らないのが舞渕明陽の優しさなんだよなぁ…家族は捨てられない、けれど現状をどうにか打破したい…と。
舞渕明陽の最終目的である「目前での自殺をもって対象に強制的に『理解』させる」の、めちゃくちゃ極端な荒業なんだよな~~~~~~かと言って児相とか警察に言ったところで直接的な被害がないから何の解決にもならなそうなのがまさにどん詰まり。
自分が自立して家を出たところで、家族は救えないし、たとえ妹だけ救い出せても母親は父親と離婚か別居でもしない限り、物理的距離は取れないもんな…。
母親はもしかしたら舞渕明陽と妹が成人するまで待って何らかの手段を取る算段をしている可能性もなくはないけど、彼が成人するまでたかが3年、されど3年…それまで舞渕明陽は待てないよな~~~~。

生存ENDである終幕20「陽光」が「え?めちゃくちゃアッサリ考え直してくれたぞ舞渕明陽」感がどうしても拭えなかったので、彼の本質は終幕19「開花」にあると勝手に思っている。
終幕20で自身の心と向き合ってみた結果「生きる」道を選んだとはいえ、彼、根が深いじゃないですか…。
高校卒業後の彼を夢想するに、一筋縄ではいかない人生になりそうだよな…と。他のみんなは林檎ちゃんがいる限り安泰かなとは思うんだけど…舞渕明陽はいつの間にかふっと消えてしまいそうな危うさがある………。
まぁそういうところが好きなんですけど!!!!!!!!!!!!!!!!
(あと墨入れた経緯とルートについて詳しく知りたいですお願いします)

【陽キャに見える】陰キャ「枢姫 色」

チャラいのにガラスハートな化け狐。
彼をラストに選んだのは、他でもない、ビジュアルとチャラさが一番好みだったんですよね…。色くんのそばかすと細い吊り目から溢れ出る「生」っぽさ、性的すぎるし、実際、性的だった。
彼が女子と肉体関係に及ぶまでの一連の流れと行為中の内容、そして関係の切り方について、是非とも詳しく教えてほしいですね…。
ルート内で突然明るみに出た、女性上位のAVもね…気になるね…。副読本に詳細書かれるかなぁ…書いてほしいなぁ…。
あとゲームオタクであることがわかる一連の流れも好き…。
全部名前伏せてあったけど「ポケモン」に始まり「アストロノーカ」「デビルメイクライ」「戦国BASARA」「アマガミ」「ときメモ」「ぷよぷよ」「スマブラ」「太鼓の達人」「パラッパラッパー」「初音ミク」…などなど、ジャンル問わないゲーマー感が出てて良…。
これらタイトルを夢中でプレイする色くんと、それを隣で見ている(もしくは一緒にプレイしている)林檎ちゃんを、私は壁として見つめていたいですね…。「カップル」目線で見ると一番好き…色くん+林檎ちゃん。
色くんルートはハグや同衾やスキンシップが多くて恋愛色が強いから、どうしても感情が乗ってしまうんですよね……………いや、だからこそ死亡エンドがきついのだけれども。
特に終幕5「斎戒」、ガッツリ血が出るタイプのアグレッシブな死に方じゃないからこそ、じっくりと心を抉ってくる。言語力の低下のくだりは今思い出しても目の奥が…。

【総評】

およそ1人につき2時間でクリア可能な本作、短いながら5人全員がそれぞれ、余す所なく魅力的に描かれているので、感情移入が半端ありませんでした。クリアから1ヶ月以上経つけどまだ気持ちが抜けない。主に舞渕明陽。

そしてスマホブラウザ版も副読本も鋭意製作中、と。スマホ版ではシナリオが追加されたり、クラブのメンバーも増えるとか。
もちろん発売後には即購入させていただきたく…その際にはまた必ず感想を書きたいと思っています。
また彼らに会える喜びをひたすら待つ…。色くんと舞渕明陽に新シナリオとか来るのかな!ワクワク!!!

以上、ただ長いだけでさっぱり文章をまとめられませんでしたが、「クラブ・スーサイド」の雰囲気と私の没入っぷりが少しでも伝わっていれば幸いです。

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