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『蟻みたいなやつ』『磯みたいなやつ』
家で使用している七味は八幡屋礒五郎のものである。
嘘である。
本当は、缶だけで中身はイオンの一番安い七味である。
あの缶がとても優秀で、中身を入れ替えてずっと使用している。
随分前から使っている缶で本家も老舗ながら、家の缶もかなりの老舗である。
八幡屋礒五郎。
『礒五郎』(ヨミ:イソゴロウ)
どうしても僕の頭の中では
『蟻五郎』(ヨミ:アリゴロウ)
である。
アリ五郎みたいなやつ・・・なんだっけ・・・イソ五郎だ
の変換を毎度している。
もう間違った認識が脳に染み込んでしまっている。
『礒』をイソと読める人間なんて、当人と名付け親以外この世に一人もいないのだ。
大体一般的にイソは『磯』である。
こっちなら間違われることなんてない。
とかいって、昔はその認識自体逆なのかもしれないが。
思う。
普段八幡屋礒五郎七味を使っていない人間に、
A:「あのさー。七味買ってきて?あのーイソみたいなやつ。」
B:「あのさー。七味買ってきて?あのーアリみたいなやつ。」
のどちらの場合、八幡屋礒五郎七味を買ってきて貰えるだろうか。
A:イソの方だと
「うーんよくわかんなかったから適当に買ってきちゃった」で、絶対無難なS&Bの七味を買ってくるだろう。『礒』をイソと認識できる人間などこの世にいない。『磯』と『礒』とは天と地ほどの差がある。
B:アリの方だと
「これでしょ」と八幡屋礒五郎七味をあっさり買ってくる気がする。見た瞬間『蟻』である。『蟻』と『礒』。名前は違っても美しい香りはそのまま。
だから。
礒五郎を正しくイソゴロウと叫ぶよりも、アリゴロウと読んだほうが、目的を達成しやすいのである。
結論。
湯婆婆「今からお前の名前はアリゴロウだ。」