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楽しいおしっこ
概ね公衆の男性用のトイレは小便器、大便用個室と分かれている。小便器はいわゆる立ちションをする形状であるため、便器、床ともに小便が飛び散って汚いのがいつも気になる。そして以前、力説したが、フェミニストの方は、男女平等を謳うのは大変有意義ではあるが、清潔な生活をしたい場合、すべてのトイレが男女共用になってしまうことだけは避けて、うまく立ち回っていただきたい。男性のトイレの使い方の汚さを甘く見てはいけない。
この小便器だが、汚れ対策としていくつか面白い試みがある。男性陣はよくご存知だが、実はこれはとても楽しい。
まず、一番原始的なものは、ハエのシールである。小便器にハエのシールが貼ってある。ただそれだけである。流鏑馬(やぶさめ)の的の如く、目玉のようなマークの中心にハエのイラストがついており、いかにも狙ってくださいというオーラを感じて人はそれを狙って小便をする。ただし、このシールには弱点があり、貼る位置によっては高さが微妙で狙いたくならない場合がある。セッティングのセンスを要するため、効果もばらつきがあるだろう。
そして、2つ目。僕が一番楽しいのはこれなのだが、小便器に氷がびっしり敷き詰められているパターン。小便は体温で温められているため、それを氷にかけると、じんわりと氷が溶けていく。氷が溶けるときに、それぞれ形状を変え、コトコトと崩れてフォーメーションを崩していく姿がとても楽しく、永久に小便をしていたいとさえ思う。
最後に、3つ目。『青い網目状のなにか』である。これ以外に名称があるのだろうか。男性陣に聞いても、この『青い網目状のなにか』の存在は知っていても、名称を知っている人間は少ないだろう。ちゃんと調べたよ。『芳香ドーム』というものらしい。芳香ということは香りもついているのか。どうりでシトラス香がすると思った。でも小便ぶっけている物体から放たれる爽やかな香りを、今後どういう気持ちで嗅げばいいのだろう。こいつは網目状に設計されている関係上、そこに小便を掛けると跳ね散らないという画期的な物体だ。ただし、問題は、男どもがそれを狙ってくれるのかという点である。そこまでしっかり考えられているのが、こいつの凄いところだ。この青い物体、おそらく温度変化により、小便をかけると色が白に変わる。小さな科学実験が実に楽しい。それだけだったら素人の仕事。こいつの隠された魅力は、変色の継続時間が著しく短いという点だ。小便をかけて、数秒ほどで色が青く戻ってしまう。つまり、この適度に大きめな物体の青い部分を全部白にしようと思うと、ぐるぐると小便を掛け回すことになるのだが、掛けたそばから反対側は青に戻ってしまう。今度はまた復活したその青を白にしたくなり、馬鹿な男どもは永久に小便をその物体に狙い続ける。もはや虜である。恐ろしい。これは天才が考えた製品だ。多分アインシュタインが開発担当だろう。
ただし、この青い物体にも残念ながら弱点はある。それは、青い物体を狙おうと思うと、若干小便器から立ち位置を後ろにずらさなければならない。だってそうしないと的が見えない。本来であれば、小便器に近づいてもらうほど、跳ね返りもないし、床にこぼれることもない。この物体で遊ぼうと思うと、変に床が汚れるというリスクを伴う。これがプラスなのか、マイナスなのか、判断が難しい。と言いたいところだが、この青い網の物体の普及度の少なさから考えると、多分、掃除担当の人間から、これ逆効果じゃないですかね…という声が挙がっている気がしないでもない。
結果的に、『一歩前に進んでください』という原始的な1行のテキストが一番効果的なのかもしれない。個人的には全部個室になってもいいんだけど、小便器の使用回転の速さは何にも代えがたいのだろうな。