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移住希望者と移住受け入れ地域の幸せなマッチング

地方への移住を考えるとき、「移住をなんとか成功させたい」「移住がうまくいくには?」と不安になる人も多いと思います。

筆者はよく「移住は結婚と同じ」と言っています。結婚・・・移住がうまくいくにはお互いを知り、相性と共に「自分のニーズ」と「相手のニーズ」がマッチングする必要があります。地方移住の場合の「相手」は、往々にして住もうと思っているところ=「地域」になります。

しかし、移住促進に熱心な自治体でも、地域が移住の受け入れに積極的だとは限りません。ここでいう「地域」は、自治会や町内会、もう少し広い小学校や中学校の学校区を主に指します。また平成の大合併で大きくなった市町では、合併前の旧町村の単位を指すこともあります。

移住希望者と受け入れ地域・・・移住がうまいくための両者の幸せなマッチングを考える時、それぞれ次の【A】と【B】のタイプに分けて考えてみます。

1. 移住希望者のタイプ

移住相談では、よく相談者の方から「仕事と住まいがあれば移住する」と言われます。現在「仕事」も「住まい」も提供する民間サービスがとても多く、人生の中で転職やそれに伴う引越しはごく一般的に行われています。そこで移住では「仕事」「住まい」のみのニーズで考える場合は「引越し型」として、次のようにタイプ分けをしてみます。

【移住希望者】
移A 「自己実現型」・・・自分のやりたいことが明確

移B 「引越し型」・・・条件が合えばどこでもいい
・仕事があれば移住する
・家があれば移住する
・補助金があれば移住する
・二拠点居住や、別荘など週末移住

以前の記事で「必要な情報は全てネットで調べられる」と書いたとおり、【B】の方は自身で情報を収集して、移住(引越し)を実現していきます。したがって、移住相談窓口で「移住希望者」として対応に力を入れるべきは主に【A】の方々です。

2. 受け入れ地域のタイプ

一方、相手側の「地域」についても次のようにタイプ分けをしてみました。

【受け入れ地域】
受A 「地域採用型」・・・地域に受け入れニーズがある
(積極的に人が来てほしいと、地域が明確にいえる)

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【受け入れ地域】受B 「移民受入方」・・・地域に受け入れニーズがない(来たい人は受け入れるところもある)

受B’ 「引越し型」
地域に受け入れニーズは無いが事業者ニーズはある(就職、不動産売買=仕事や住まいがある)

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地域で圧倒的に多いのは【B】ではないでしょうか。自治体は「移住大歓迎」と言っていても、実際に住む「地域」がそうとは限りません。移住促進に熱心な地方の市町村の中で「ヨソモノは入れない」と明言している地域は少ないと思いますが、特に外から人が来て欲しいとは思っておらず「来たければ受け入れてもいい」という地域がかなり多いのではないでしょうか。

移住希望者にその土地への強い想いがあるなど特別なケースを除き、こうした地域に移住者が入るときは、仕事や住まいがきっかけとなって地域に入ることでしょう。つまり「引越し」でその地域に入る、ということです。この時大事なのは「郷に入れば郷に従え」という昔からの教えです。

移住がうまくいきそうなマッチング

<移住希望者>ー<受け入れ地域>のマッチングとして双方幸せそうなのは

【移A―受A】・・・AA型または
【移B―受B(特に受B')】・・・BB型

となります。

なお、現在受け入れのニーズがある地域では、移住先駆者が<【受B】受け入れニーズが必ずしも無い地域>に入り、長い時間をかけ地域で信頼を得る中で地域の人に働きかけ、また協働しながら<【受A】受け入れニーズがある地域>になっていった・・・というところが多いので、<移住先駆者がいるところ=移住しやすいところ>になってるところが多いです。

移住のミスマッチ

移住でよくミスマッチになりやすいといわれているのが、お互い逆の組み合わせになった時です。

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【移A―受B】・・・AB型
>移住者は思いがあるが、地域にヨソモノを受け入れる思いが無い。

【移A―受B’】・・・AB型
>移住者は思いがあるが、移住のきっかけが仕事や家という引越しの条件のみで、事業者(特に地域外の事業者)とのつながりしかない中で「地域」に入る。事業者が地域とは直接関係がない場合、入居者と地域を繋ぐ人がいない場合、ヨソモノを受け入れる思いがない地域では移住者が孤立しがちになる。

<AB型>では移住者の自己実現の思いが強いほど、移住者が地域から孤立してしまうことがあります。移住者に最も大切なのは、やはり「郷に入れば郷に従え」という考え方です。

【移B―受A】・・・BA型
>地域は熱意を持って移住希望者の募集や受け入れをするが、移住者は軽い引越し感覚で来る。

一方<BA型>では、地域には「移住を受け入れよう」「いっしょに地域を盛り上げたい!」という熱い思いを持って準備し、移住される方を迎え入れます。しかし移住者の中には引越しが主な目的で、「たまたま条件が良かったから来た」や「住んでみて嫌だったら出ていこう」というくらいの軽い気持ちで地域の付き合いをする人もいます。その結果、地域との温度差が徐々にできてしまうこともあります。

移住を積極的に受け入れている「地域」に入る時、移住者は「ただ住むだけ」という引越し感覚だけではなく、その地域の思いをある程度理解しようとする心構えと、必要な地域活動には積極的に協力するなど、「移住」の観点も必要となります。

<AB型><BA型>はミスマッチになりやすいと述べましたが、人と人との相性なので、もちろんうまくいくこともあります。移住の先輩には軽い気持ちで引越してきたが、その地域にうまく馴染み、結果的に地域の中心的な存在になった・・・という方もたくさんいます。移住する人も受け入れた地域も、お互いを尊重しながら折り合いをつけていくことができれば、良いマッチングとなることもあるでしょう。

郡上市の移住受け入れ地域

郡上市で移住を受け入れると地域で明言している地域は現在2つだけです。石徹白(小学校区)と和良(旧町村単位)です。どちらも「地域づくり協議会」を地域住民でつくり、そちらが窓口になって移住を呼び込んでいます。

石徹白は小水力発電など全国的に有名で、移住希望者も多いです。峠を超えた豪雪地帯でスーパーや病院も無いため、住むにはしっかりとした思いと覚悟が必要です。そのため「石徹白地区地域づくり協議会」が窓口となり、移住希望者の人には地域の方が丁寧に面談をしながら、希望者は時間をかけて移住を実現していきます。移住実現をいよいよ本気で考える人には、空き家探しのサポートも行っています。

和良では「和良おこし協議会」が地域づくりや市外の人との交流事業の他、空き家対策にも熱心に取り組んでいます。郡上市の空き家バンク21 件中10件が和良の物件です。(2020.6.17現在)移住を希望する方が住める家が圧倒的に少ない郡上で、和良では協議会が家主さんから空き家を預かり、移住者に貸し出しています。すぐに住める家を用意してHPで紹介しているので、問い合わせから移住につながっています。

いずれの地域も、窓口となる人が移住希望者と会い、じっくりと話し合ってお互いのニーズを確認した上で、地域への移住をサポートされています。結婚でいう仲人のような役です。地域との幸せな結婚を目指して、地域のニーズもきちんと説明し、お互いの相性を確認します。その中で、地域に馴染めなそうな移住希望者には、お見合いの時点でお断りするケースも当然でてきます。一方でお世話した移住者には、移住後も仲人となった人や協議会メンバーが「地域の世話人」としてフォローされていて、移住した人は安心して住むことができます。

郡上の移住受け入れ地域は、地域の人々が自分たちの地域の将来について真剣に考え、その結果、移住促進を積極的にしていこうとした地域です。地域に住む人自身に愛情や熱意があるところに、「受け入れニーズのある地域」ができていくのではないでしょうか。

移住のミスマッチを無くすために

移住促進を考える時、ただ単に人口を増やしたい、ということであれば「しごと」「住まい」「補助金」など人を呼び込む方法を整備していくことでしょう。しかし、移住促進のねらいの根幹が”地域の活性化”であれば、そこに住む人々が生き生きと暮らし、その結果地域活動や自治が自主的・自発的に営まわれるための「持続可能なコミュニィの形成」が大切になります。その時、コミュニティを成長させる”仲間”を増やすことが移住促進の重要な目的となります。

しかし地方の地域ではこれまで、家督制度により「長男以外は外に出す」ことや、戦後高度成長期に「地方から都市に人を出す」ことなど、少なくてもここ70年以上は「地域からは人を出す」という歴史で、「(積極的に)外から人を入れる」という経験ここ数十年の中でありませんでした。人口減少社会となり「移住促進だから地域でヨソ者を受け入れてくれ」といきなり言われても、それまでの自分たちの常識や概念とは大きく異なるため、いきなり「移住ウエルカム」に人々のモードが切り替わるのには無理があるのは十分にわかります。

人口減少や超高齢化社会、グローバル化や情報化社会など、地方も国も”かつてない事態”を迎え、国、そして地域コミュティのあり方についてこれまでの概念が大きく変わっていきます。地域が移住促進を考えるということは、そこに住む人々が自分たちが将来どうなりたいのか・・・それを考えるきっかけとなるものです。「未来をつくるために、自分たちはどう変化するべきなのか。変化しないべきか」を考えることが「移住について地域で考える」ということです。その結果、「ヨソモノを受け入れない」という選択をする地域もあるでしょう。大切なのは、自分たちの未来を国や自治体だけに任せず、自分たちで考え行動する「地域」、それを構成する「市民」が増えるということです。

移住を考える側からすると、住みたいと思う地域は「未来があるところ」ではないでしょうか。移住受け入れニーズがある・なしに限らず、地域の未来について住民が真剣に向き合っている地域かどうかは、移住先選びの一つの選択肢になるかもしれません。

そして移住先ではぜひ自身の「幸せ」について探求し、それが実現できる地域の実現に関わっていってください。そこには「結婚」と同じく、自己実現と同時に相手の幸せも実現する、共に人生を歩んでいく関係を築くことが大切です。

中の人も外から来る人も、地域コミュニティー全員が自分たちが幸せになる未来を共につくろうとするとき、「移住の幸せなマッチング」が起きるのではないでしょうか。

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