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静嘉堂@丸の内「響きあう名宝 曜変・琳派のかがやき」感想

静嘉堂@丸の内で開催されている
「響きあう名宝 曜変・琳派のかがやき」を観に行きました。
日曜美術館で予習をした直後に臨みました(笑)。

展覧会の概要と訪問状況は下記の通りです。

創設130周年を迎える静嘉堂は、美術館のギャラリーを世田谷岡本の地から、丸の内の重要文化財建築、明治生命館(昭和9年〈1934〉竣工)1階へ移転いたしました。
開館記念展第1弾となる本展では、静嘉堂が所蔵する全ての国宝を始め、茶道具・琳派作品・中国書画や陶磁器・刀剣などの選りすぐりの名宝を、新たな建築空間に合わせ4つのテーマで展観するものです。
昭和初期の代表的な近代洋風建築の、大理石を多用した重厚な建築美の中、高い天窓から自然光が差し込むホワイエを取り囲むように向き合う4つの展示室で、作品は数百年の歴史ある輝きを放ちながら互いの美を響かせあい、皆さまをお迎えいたします。
明治20年代の半ば、静嘉堂創始者の岩﨑彌之助は丸の内で三菱のオフィスビル街建設を進めながら、その一角に「ミュージアム」なるものを造りたいと願いました。100年を超える創立者の夢が今、花開きます。

展覧会公式ホームページより

【概要】  
  会期:2022年10月1日(土)~2022年12月18日(日)
 休館日:月曜日、11/8(火)、11/9(水)
開場時間:10:00-17:00(入館は16:30まで)
     金曜日は18:00(入館は17:30まで)
  料金:一般1500円、大学生1000円、
     障がい者手帳をお持ちの方(同伴者<無料>を含む)700円
     中学生以下無料

展覧会公式ホームページより

【訪問状況】    
   日時:日曜日午後
 滞在時間:13:30~15:30
 混雑状況:結構混んでいました(日曜美術館放送直後だったからかも)。
      当日件は15:30時点で完売していました。
感染症対策:入口で手指の消毒
 写真撮影:中央部のホワイエの特別展示の作品のみ可

展示構成は下記の通りでした。
第1章 静嘉堂コレクションの嚆矢―岩﨑彌之助の名宝蒐集
第2章 中国文化の粋  第1部 宋~元時代 / 第2部 明~清時代
第3章 金銀かがやく琳派の美
第4章 国宝「曜変天目」を伝えゆく―岩﨑小彌太の審美眼

展覧会公式ホームページより

日本、東洋美術の様々なジャンルの名品を一度に堪能でき、とても楽しめました。作品個々の魅力はもとより、コレクターの審美眼にかなった作品が並べられているというだけでなく、

第1章:良いものを大事に扱う。
第2章:外の文化を尊重する。
第3章:先人の精神を受け継ぐ。
第4章:顧みられなくなっていた価値に光をあてる。

といった各章のテーマの積み重ねによって「良いものを受け継いで後世に残す」という美術館の意思が感じられた点も良かったです。もう少しボリュームがあってもいい気もしましたが、これくらいが疲れなくいいのかもしれません。

昭和の名建築も堪能できました。

個別に気になった作品は下記の通りです。

【第1章】
◆「大名物 唐物茄子茶入 付藻茄子」南宋~元時代 13~14世紀
信長⇒秀吉⇒家康と天下人の手を経てきたという来歴に圧倒されます…。一度壊れたとは思えない仕上がりで、修復した江戸時代の職人(藤重藤元)の技術力に驚かされました。以前NHKの「スイッチインタビュー」で日光東照宮を修復した塗師の佐藤則武氏が「江戸の人に負けてられんねえな~」とおっしゃってたのを思い出しました。

【第2章】
◆沈南蘋(沈銓)「老圃秋容図」清時代 雍正9年(1731)
この章では中国の掛け軸の大きさにまず驚きました(日本の掛け軸は小型なものが多い印象だったので)。この絵は猫の毛並みや花真っ盛りの朝顔、枯れた葉など細かい描写が見事でした。一見にゃんこの可愛い絵なのですが、「食う」と「食われる」、「咲く」と「枯れる」が一つの画面に同居しており、意外とシビアな作品だと思いました。

◆余崧「百花図巻」清時代 乾隆60年(1795)
今回の展覧会で最も魅力を感じた作品の一つです。絡まるように描かれた植物群が生き物のようで奇妙な生命力を感じました。一方で控えめな色調は高級感もあり、壁紙や包装紙のデザインにしても面白そうだと思いました。展示されているのは部分でしたが5mに及ぶ全体を通して四季の巡りを表現しているとのことで、この辺りも日本人の感性に合いそうでした。

余崧「百花図巻」清時代 乾隆60年(1795)
※グッズの絵ハガキを撮影

【第3章】
最近画集や美術雑誌を見て「酒井抱一っていいな~」と思っていたところだったので、琳派を紹介するこの章はとても楽しみにしていました。

◆酒井抱一「波図屛風」文化12年(1815)頃
銀箔で表現された静寂な月夜の光景と荒々しい波の描写のコントラストが印象的でした。上側の太い線は波の盛り上がりを、下側の細い線は波が砕ける様を感じさせ、抱一の表現力の高さが伝わりました。見ようによっては波が何かを掴もうと伸ばした手のようで、自分の作風を確立しようと作品に魂を注ぐ抱一の情熱が表れているように感じられました(なんとなく日本海っぽいと思いました。)

酒井抱一「波図屛風」文化12年(1815)頃
※グッズのチケットフォルダー。上下の緑のラインにグッズを制作した方のセンスを感じます。

◆酒井抱一「絵手鑑」19世紀
こちらは可愛らしい絵柄と余白の取り方のバランスが良く、絵葉書にしてほしいと思う作品でした。茄子や紅葉のグラデーションが美しく、彩色も魅力的でした。琳派のデザイン性に加え、瑞々しさや枯れた感じなど質感を表現したのが抱一の独自性かなと思いました。

◆本阿弥光悦「草木摺絵新古今集和歌巻」江戸時代 寛永10年(1633)
藤や松を上下に淡く描いた料紙にパラパラと歌が書かれていて、淡々としたモノローグのような味がありました。(和歌の内容自体は情熱的だったのかもしれませんが。)

◆田中抱二「夏草図風炉先屛風」江戸~明治時代 19世紀
上記の「百花図巻」と並んで、今回の展覧会で一番気に入った作品です。金箔に植物という琳派お得意の画題なのですが、夏の草花が端正な線と落ち着いた色彩で写実的に描かれているのが印象的でした。部屋に置くと空気が華やぐというより引き締まるような作品だと思いました。
琳派と言えば俵屋宗達⇒尾形光琳⇒酒井抱一⇒鈴木帰一という系譜が有名ですが、まだまだ魅力的な画家がいたんだなと思いました。

【第4章】
◆建窯「曜変天目(稲葉天目)」南宋時代 12~13世紀
静嘉堂文庫美術館を代表する逸品です。見た瞬間吸い込まれるような感覚になりました。この神秘的な美しさは意図的なものではなく偶然の産物とのことですが、自然(というか化学反応)の奇跡を感じました。と言いつつ、「珈琲入れても似合いそうだな」と妙な感想も抱いてしまいました…。

建窯「曜変天目(稲葉天目)」南宋時代 12~13世紀
※展覧会チラシを撮影

丸の内に美術館を建てることは静嘉堂文庫の創始者・岩﨑彌之助の夢だったそうです。「受け継ぐ」ということが今回の展覧会のテーマだと解釈しているのですが、物だけでなく「大きな夢だと人が受け継いで叶えてくれるんだな~」と感慨深いものがありました。会期まだありますので、気になった方は是非!!

丸の内まで来たので、ついでに先日「新・美の巨人たち」で紹介されていた丸の内ストリートギャラリーも見てきました。おしゃれな通りに彫刻作品が自然と溶け込んでいて(よくよく探さないと気が付かないものもありました)、穏やかな休日の午後を演出していました。

◆中谷ミチコ「小さな魚を大事そうに運ぶ女の子と金ピカの空を飛ぶ青い鳥」2022年

中谷ミチコ「小さな魚を大事そうに運ぶ女の子と金ピカの空を飛ぶ青い鳥」2022年

凹凸が反転している彫刻で見る角度によって全く表情が変わるというユニークな作品で、発想と計算しつくされた造形に驚きました。

丸の内で芸術の秋にふさわしい一日を過ごせました!!


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