うらわ美術館「雰囲気のかたち―見えないもの、形のないもの、そしてここにあるもの」感想
うらわ美術館で開催されている
「雰囲気のかたち―見えないもの、形のないもの、そしてここにあるもの」を観に行きました。
展覧会の概要と訪問状況は下記の通りです。
【訪問状況】
日時:日曜日午前
滞在時間:11:30~12:30
混雑状況:空いていてゆったり見ることができました。
展示の間隔も十分でした。
感染症対策:入口で検温、手指の消毒
写真撮影:一番気に入った一作のみ撮影可
展示構成は下記の通りでした。
いつもの如くNHKEテレの「アートシーン」で紹介されているのを見て興味を持ちました。近所なので思い立ったらすぐ行けます(笑)。
漫画家のヤマザキマリさんが長谷川等伯の「松林図屏風」を評して「松を描きながら空気を描いている」とコメントされていましたが、確かに優れた作品は独特の空気感を持っているように思います。今回の展示は一言で「雰囲気」といっても、形のないものをいかに絵画に表すかという技術的な観点から始め、肉眼でとらえられないものが写りこむ写真、作品の対象との距離感、時間、意味など哲学的なテーマをどう表現するか追求した作品など、バラエティに富んでいました。一人の作家(あるいはジャンル)の作品をまとめて展示することによって作家(分野)がどのように自分のテーマに取り組んできたかも伝わり、なかなか考えさせられる展示でした。
特に気になった作品は下記の通りです。
◆横山大観「菜の花歌意」1900年(明治33年) 個人蔵
朧げな菜の花と水面の描写が春の潤いのある空気を感じさせます。一方で左上の冴え冴えとした三日月と右下に描かれた蝶の対角線が画面を引き締めているように感じました。大観が日本美術院の音曲に基づいて制作するという課題で描いた作品とのことですが、まさに印象を形にするというお題で展覧会のテーマにぴったりだと思いました。
◆菱田春草「松に月」1906年(明治39年) 東京国立近代美術館
今回の展覧会で一番気に入った作品です(なので写真を撮ってきました!)。前景に重なる松の葉が月明かりを強調していて、眩しさを感じるほどでした。ぼかすだけでなく、くっきりした描写とかすんだ描写を対比させることで光を表現しているところが見事だと思いました。キャプションで紹介されていた”大観、春草が推し進めた「朦朧体」は輪郭線を重視する日本では批判を浴びたが印象派の土壌がある海外では評価され自信を深めた”というエピソードも興味深かったです。
◆武内鶴之助「黎明」制作年不明 うらわ美術館
キャプションによると、武内鶴之助は一瞬の光景をいかにとらえるかという西洋の印象派のようなテーマで描いていたようですが、アプローチの違いを感じました。小さな画面に色を塗りこめて光のきらめきを表現しており、パステル画ならではの効果なのかなと思いました。
◆牛島憲之「昼の月」1940年(昭和15年) 府中市美術館
牛島憲之の今回展示されていた作品はこの絵に限らず遠い美しい記憶のような、白昼夢のような、儚げなような永遠に揺蕩っているような、不思議な感触を残すものでした。戦時中にどんな思いでこのような絵を描いたんだろうと気になりました。気になる作家です。
◆若林奮「自分自身が目前の空間を測る為の模型Ⅲ」1979/1998(昭和4/平成10年) 神奈川県立近代美術館(河合コレクション)
立体を表現するためでなく対象と自分の距離を表現しているような作品でインパクトがありました。自分のテーマに対する探究心というか、執念を感じました。
◆福田尚代「塵の妖精」2014-2019年 作家蔵
一見シールアートのようなのですが、少女漫画の目の部分をコラージュして作った作品だと知るとトキメキの名残というか、それまでなかった情感が感じられるような不思議な作品でした。思えば鑑賞者が作品に対して抱く感想も形のないものですが、それすら作品の一部のような気もします。
後の予定が詰まっていたため少々駆け足になってしまったのですが、もっとじっくりと見たいと思われせる内容でした。リピーター割引があるようなので、気になる方は何回か足を運ばれることをおススメします!
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