story 逮捕 鑑別所
とうとう警察が家にやってきてしまった。
母親に確認するとまた明日来ると言ったらしい。
俺は家に帰ることにした。逮捕前最後の夜は彼女のミユと過ごし家に帰ってきたのは朝方5時だ。
シャワーを浴びてとりあえず眠ることにした。
コンコン。誰かが部屋をノックして俺は起きた。
じいちゃんが「警察きてるぞ。何かしたのか?」とドアを開けて言った。
階段を下りると玄関に沢山の警察がいた。
「中島くんだね。逮捕状出てるから警察署まで一緒に来てくれるかな?」
「はい」
朝6時半。おはよう逮捕ってやつだ。
俺はゆっくり歯磨きや寝癖を直しながら彼女やリョウ、隣町の友達に電話した。
みんな「頑張ってこい!」と励ましてくれた。
彼女のミユはとても悲しそうだったけど。
準備が終わり家族に「行ってくるね」と伝え外に止まってるパトカーに乗せられた。
初めて繋がれた手錠は重く冷たかった。
警察署に向かう途中、徐々に現実を感じてきて緊張してくる。
地元の警察署に到着して取り調べが始まった。
やはり成塚との件を聞いてきた。他にもカツアゲとかノーヘルとか余罪が出てきたけど他は全部知らないと言い切った。
「今日はもう終わりだ」警察に言われ留置場に入ることになる。
「持ち物全部出して」全部出すと何があるかの確認をして指紋を取ったり写真を撮られたりと色々細かい。
ガチャン。ドアが開いて少年房に入れられる。
「ここが少年房だ。留置番号は27番だ。覚えとけ」と言われる。どうやら房の中は俺1人みたいだ。そしてギザギザの毛布を渡された。
寝転がって我に帰ると悲しくなってきて家に帰りたくなった。
「配食〜」しばらくすると飯の時間になり刑務官が運んできた。
開けてみるとひじきと切り干し大根と味噌汁と米だ。
逮捕のショックもあってか食欲が全く湧かずにほとんど残した。
「明日地検に行くからな」食器を取りに来た刑務官に言われる。なんの事だか分からなかったが検事の調べがあるみたいだ。
21時になると就寝時間になった。
牢屋での初めての夜、俺は涙で枕を濡らした。
「起床ー!」気付いたら寝ていて刑務官の合図で目が覚める。
また美味しくなさそうな朝飯が運ばれてきたけど昨日よりは少し食えた。食い終わると「出発だ」と牢屋から出され手錠をかけられ腰にロープを巻かれた。地検に行く人が一緒に縛られムカデ人間みたいな感じになった。
護送車に乗せられて地検に向かう途中成人の逮捕者達は和気あいあいと話していてドキドキしてるのは自分だけなのか?なんて思ってた。
地検に到着すると成人とは別の牢屋に入れられる。そこには俺以外に3人が収容されてた。入るとすぐに「地元どこ?何で捕まったの?」とロン毛のやつに話しかけられた。そいつは浦和のやつらしい。
馴れ馴れしいななんて思いながらも「傷害」と一言だけ返した。
「一緒だな。鑑別はやだな〜」なんて話をしていると一人ずつ名前を呼ばれまた取り調べが始まった。
罪名は傷害罪で他は全て否定したから傷害一件だけだ。裁判官に呼び出されて判決を下された。
「鑑別所送致に処す」
鑑別所行きが決まり刑務官が迎えに来て鑑別所に移動となった。
心のどこかで「釈放か?」なんて期待もあったがそんな甘くはないみたいだな。
鑑別所に到着すると「全部脱いでここに入れろ」なんて言われ全身のありとあらゆる所を調べられた。ケツの穴まで開かされ屈辱的だ。
それが終わるとグリーンのジャージを渡され再び鉄格子の中に入れられた
鑑別所に入ってからの2、3日は毎晩泣いていた。俺は寂しがり屋だ。家に帰りたい。。
幸いにも雑居部屋で話し相手がいたのがせめてもの救いだった。19時から21時まではTVも見れるし外運動もあって気は紛れるけどやはり眠る時には涙がでた。
鑑別所は会話禁止だがコソコソ話をすることが出来て同部屋で同い年のユウタと言うやつと仲良くなった。もちろん会話が見つかれば独居行きだ。
面会には母親が来てくれて「バカだね〜。あんたは。もうちゃんとしなさい」と言われた。涙をすする音がして俺はまた涙を垂らしてしまった。たった20分の面会時間だけどそれだけでも嬉しかった。
鑑別所収容から3週間が経った。審判日が確定した。全部で24日間鑑別所にいることになる。
審判日、手錠をかけられ裁判所に入っていくともう両親は椅子に座っていて心配そうなかおでこっちを見てる。
裁判官に「今回限りで保護観察処分にします」と言い渡された。保護観察の説明を受けてようやく帰れる事になった。
1ヶ月ぶりに鑑別所の外に出た。空気を吸った。
「外だー!」本当にすごく気持ちよくてとてつもない感覚だ。
いまは3月で春だというのに信号や車のライトの光がイルミネーションのように綺麗に見える。本気で感動的。
帰りに親が焼肉屋に連れて行ってくれてこれでもかと言うくらいに頬張った。シャバのご飯はうまく感じて仕方ない。久々にタバコを吸うとヤニクラで頭がクラクラした。
1ヶ月ぶりに家に帰り布団に入る。家の布団はフワフワで気持ちいい。硬い布団はもう嫌だな。。なんて考えながら眠りについた。