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ワシたち eagle

ーわしたちがやってきたー

わしのなる木


ワシたちがやってきた。
冬に流氷に乗ってやってくるというのは、観光イメージからの誤りで、ワシたちは自分の翼で、繁殖のため越夏したロシア極東部からやってきます。そのピークは11月頃です。
ひとつの止まり木に群れになっている場合もあります。
まるで、何かがぶらさがっているようです。
このような木を、「わしのなる木」と呼びます。
よく言い当てた言葉ですね。

渡ってくるオオワシ、オジロワシたちのことを、まとめて「海ワシ」と呼びます。海岸や河口、結氷した湖付近にいるため、そう呼ばれるのかも知れません。

1980年代、知床羅臼町が冬のスケトウダラ漁で隆盛していた時代には、そのおこぼれの獲物を狙って海ワシたちが集結し、世界的に見ても一大越冬地と呼ばれました。

オオワシ

こちらはオオワシ、翼を広げると2m50cmにもなる日本最大のワシです。
1970(昭和45)年、国の天然記念物に指定されました。
色彩は、嘴と後肢が黄色く、肩と尾羽が白くて立派です。
越冬している時期には、長距離の移動することがあります。それは越冬のはじめにはサケマスの死がいを求めて河川間を移動し、厳冬期には人間の漁のおこぼれやゴミ捨て場などを求めるためです。山林で息絶えたエゾシカの死がいなどを狙うこともあります。

紋別に「鴻之舞(こうのまい)」という過去に国内最大生産量を誇った金山があった地があります。
その地名はアイヌ語で「クオノマイ」(仕掛け弓のある処)で、その当て字には、命名者になる吉田久太郎氏が、鴻之舞と発案しました。その意味するところは、"鴻(おおとり)が辺りを威嚇して今にも飛び立とうとする様"を書いたと云われています。その鴻とは、やはり、このオオワシのことではないだろうか?と、ひそかに思っています。

昭和63年まで函館と網走を結んでいた国鉄特急おおとりの、おおとりの元は何でしょうか。
当時のヘッドマークを見ると、頭が小さくてどうもワシには見えないような感じがします。

オジロワシ

さて、こちらは、オジロワシです。
こちらも、1970(昭和45)年、国の天然記念物に指定されています。
翼を広げると、2m40cm、嘴と後肢がレモンイエロー色で尾羽が白いです。
アイヌ語では、オンネ・イ(老大なる・もの)と呼ぶらしいですが、一説によると、この海ワシたちには名前をつけていなかったとも云われています。
冬に北海道へ飛来するだけでなく、本州北部にまで越冬に向かうことも確認されています。
その逆となる、繁殖のために北へ還らずに、そのまま北海道で越夏、繁殖する個体もいます。
オオワシよりも誰も所有していない新しい獲物を食べることが多く、地上での餌取り合戦はオオワシよりも優位で強いようです。海ワシたちは餌取り合戦はするものの、互いに傷つけあうことまではしません。それが、たとえ未成鳥であっても。
弱肉強食で競争の世界ではあるのでしょうけれども、獲物が乏しいながら群れ全体で越冬しているようです。

頭部が白い個体

アメリカの国鳥・ハクトウワシとの近縁種とも呼ばれているためか、根拠はないのですが、老齢のワシは頭部が真白くなってゆくような気がします。白髪へ、人間もまた同じでしょうか。
寿命は20年を超えることもあると云いますから、たいへん長生きな鳥だと思います。

右下に月

月を見ています。
というのはウソで、結氷した湖上の何かを狙っています。海ワシたちの食事は、朝夕の時間帯が多く、昼間や夜間は、止まり木でじっとしています。視界の利く高いところで、じっとしています。
羽毛に包まれているとはいえ、冷たい風に吹かれ、寒くはないでしょうか。

オジロワシのつがい

こちらは、つがいです。右がオスで、左がメスです。
まるで高砂の席にいるように夫婦の初々しさ、そして貫禄があります。
つがいは、他のワシたちとは少し距離を置いて仲良くしていることが多いです。
北海道で越冬するオジロワシはおよそ1700羽で、そのうちつがいはおよそ150組との報告があります。つがいが北海道で確認されたのは、1954(昭和29)年が最初だと云います。
つがいを見つけたときは、何だか妙に、うきうきとうれしくなります。
2月になると求愛やディスプレイがはじまり、早春になると営巣、抱卵をします。
よって、越夏、繁殖する個体がいるのです。

絵ではなく写真です

とある吹雪の日。歩いて観察をしている途中、大橋の下から飛び行く海ワシを見つけて、シャッターを切りました。
まるで油絵のような写真になりました。
吹雪のおかげです。

今では高ズームのデジタルカメラが比較的入手しやすくなりました。
海ワシたちの姿を追いかけていたあの頃の冬には、望遠レンズさえ持っていませんでした。
今のそうしたカメラがあったら素敵だったろうなと思います。
絵になる観光用のような、流氷に乗る海ワシたちの姿も捉えられたでしょうし、精悍に鋭く獲物をつつく嘴の光景なども捉えられたかも知れません。
ここに掲載した海ワシの写真たちは、撮影画像を拡大して500pxに切り取ったものです。よってフルサイズではなく、現像してもLサイズが限界だろうと思います。

海ワシたちを見つけることは、眼が慣れると、意外と容易いことです。
もし、自分が海ワシだったら、いま、どこに獲物がいるかな?川かな、湖上かな、海岸かな?、どこが見晴らし良いかな?と、想像することも楽しいものです。
漁業、その人間のおこぼれなどに依存している地もあります。
ぜひとも、その野生に生きる雄姿を一目見てもらいたいです。
獲物を中心とした仲間たち、冬を生き抜く海ワシたちの物語が、そこにはあります。

(参考資料:BIRDER 2007年12月号 冬の猛禽特集)

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