大雪山 黒岳〜北鎮岳
日程:2005年7月16日
メンバー:ぼく、Tさん
今日は、大雪山の玄関口のひとつ層雲峡・黒岳から北鎮岳へ。(2,244m)
今回の"Tさん"とのお目当ては、初夏の大雪山の雪渓コントラストの眺望と、高山植物です。
ぼくは、高校時代からクワゥンナイ沢遡行などからトムラウシ山~黒岳縦走等で訪れてきている大雪山の砂礫とハイマツの広々しい光景が懐かしくも層雲峡黒岳は縦走終点地として利用してきたため、夏の黒岳のみには数度しか登ったことがなく、ぼくも気分揚々です。
北海道の中央部、石狩山地の北西部に位置する大雪山系。"北海道の屋根"と称され、総面積は神奈川県とほぼ同面積に匹敵する約23万ヘクタールにも及ぶ「日本一の広大な国立公園」となっています。
アイヌ語の名称「カムイ・ミンタラ」は、"神々の庭"の意。この土地が、人々の間で聖域として崇められてきたことが伺えます。また、1921年にこの山岳を訪れた文豪・大町桂月は、「富士山に登って山岳の高さを語れ。大雪山に登って山岳の大いさを語れ」という名文をも残している大雪山なのです。
層雲峡ロープウェイ駅 5時30分発。
リフトを乗り継ぎ、7合目の登山事務所到着。
いよいよ登山開始 6時15分。天候くもり。気温18℃。
7合目から8合目までの登山道は、ところどころ残雪に埋もれていますが、踏み跡がついていて比較的登りやすいです。登山靴を買った”Tさん"も「やっぱり登山靴は硬くて登りやすい」と満足。
8合目周辺は、まだ黒い土と小さな芽吹きの世界。
9合目が近づくと一気に緑が濃くなり、エゾノハクサンイチゲがたくさんの花を咲かせています。
シナノキンバイなどのお花畑もお目見えしてきます。数株のクロユリも発見。
9合目を過ぎて少し登ると、満開のウコンウツギ群落。あふれんばかりで見事です。
ときおり、氷河期の落とし子・ナキウサギの金属音のような鳴き声が聞こえてきます。
7時30分、黒岳(1,984m)頂上に到着。
視界はなく、ときおり濃霧の合間から、かすかに桂月岳・上川岳への稜線が望める程度。
この黒岳からの懐かしい大展望を期待して登ってきたぼくは、やや残念です。
それでも、まずは第一目標の"黒岳"はクリア。
頂上の石標も祠を素通りし、山頂休憩なしです。
ここから約20分かけて黒岳石室(標高1,890m キャンプ宿営地あり)へ、ふんふんと降りてゆきます。
登山路脇は、イワブクロ、メアカンキンバイ、エゾツツジ等の高山植物たちが百花燎乱で開花中です。デジカメで楽しみながら向かいます。
黒岳石室に到着し、バイオトイレで用を済ませてから、赤石川(北海岳方面)のある「美ヶ原」を散策するか、「雲の平」を経て北鎮岳をめざすか悩んだ結果、天候も視界はないとはいえ、時間的な余裕があるので、北海道第二の高峰・北鎮岳(2,244m)をめざすことにします。
"Tさん"に地図を広げ見せて、これから片道約4km歩き登ることを示します。
「雲の平」を歩いている頃から、強風になり、雨が混じったりとしてきましたが、存分に天上の楽園を満喫します。白い濃霧の中には、旬の高山植物たちの群落だらけで、お色気ムンムンです。
「ねえ、ワタシたち、いま、咲き乱れてます」と、云わんばかりの高山植物たちなのです。
そして、この「雲の平」、平坦な砂礫地にハイマツ帯、歩きやすくて、とても心地良いです。
お鉢平展望台にて、濃霧強風の合間に荒涼としたお鉢平(旧火口)を取り巻き雪渓を抱える大雪山が、やっと一瞬だけ望めます。
右側には両翼をいっぱいに広げた間宮岳の稜線が続き、さらに目を正面に移すと北海岳の向こう上には白雲岳と、雄大な景色が広がっています。しかし、その絶景もやがて濃霧の中へ・・・消えてしまいました。
再び濃霧の中、大雪渓が現れ、ゼイゼイハァハァと乗り切ります。
猛烈な強風の「北鎮の肩」に到着し、標識看板の陰にゴロンと身を隠して、しばし強風をしのぎます。
黄色く小さなタカネスミレの群落があります。
「いま、どこ?」と、"Tさん"。
地図を取りだして、「ほら、もう北鎮分岐だよ、あと頂上まで20分もかからないよ、うん」
立ち上がり、すぐに頂上をめざします。
10時ちょうど、2,244mの北海道第二の高峰・北鎮岳山頂へ到着。
"Tさん"、新品の登山靴は靴ズレもなかった様子。
本当に1ヶ月前まで登山初心者だったのかなあ。
おにぎりに、チョコ、チーズ、サラミソーセージと飲み物などで、ゆっくりと昼食休憩。
全く視界ナシ、濃霧と強風の中で30分を過ごしてから、名残惜しくも頂上を後に。
下山を開始し、慎重に大雪渓を降り、再び「雲の平」を通過する頃には、天候も晴れ渡ってきました。
濃霧で気象条件の悪い大雪山が晴れ渡るのは「5日に1日程度くらいだけ」(だと思っています)
お鉢平、凌雲岳、桂月岳、烏帽子岳、そして黒岳、赤岳、正面の北海岳山頂の人々の姿まで望めます。
ラッキーです。これが今回登った北鎮岳の全容です。白鳥・千鳥の姿雪渓は、まだ見られません。
晴れ渡った「雲の平」で後ろを歩く"Tさん"「美しすぎて寒気がする~!」と、叫んでいます。
素晴らしき"天上の楽園"ですものね。
下山時で、天候も良くなり、高山植物たちも輝いてきて、お花を愛でる余裕もでてきたのでしょうか。
この雪渓を抱えた雄大な景色、砂礫の高山植物たちの群落、そよぎ渡る風に少しの硫黄の匂い。
そうなんです、これが大雪山なのです!
「高山植物たちは、こんな環境の中、たくましいね~!」は、今回の"Tさん"の名言です。
正午に、昼食休憩で笑い声が賑やかな黒岳石室で休憩をとり、黒岳をイヤイヤと登り返してから下山。
黒岳からは高校時代の縦走を終えた時の頃を懐かしく想い出しながら、駆け足よろしく下山します。
8合目以下からは雪渓からの雪解け水が登山路を走っていて泥々になっています。(午後のせいです)
連休中とあってか黒岳から縦走をしようとする人たち、団体ツアーの人たちなどと多くすれ違います。
「登り優先ですから、お先にどうぞ!」と、登山路で立ち止まってあげるのは、山でのマナーです。
相変わらず、若い人は少なく、元気な中高年の方たちが多いことには驚かされます。敬服しますね。
7合目登山事務所着、13:10。
今回の山行は、天候と高山植物に恵まれ、車中では高校時代の夏同様にサザンオールスターズの曲たちを聴いての、懐かしくも新鮮な山行となりました。やはり、大雪山は素晴らしいです。
夏の大雪山はいつまでも青春を感じられる地なんだなあ。
当時の恩師K先生や仲間たちに感謝したい気持ちになります。
「2つの山に登った気分、大雪山にも受け入れてもらえた感じ」と云う、もちろん今回も同行してくれた、まったく山に興味も縁もなかった"Tさん"には感謝です。
多くの登山者さんとの楽しい出会いもありました。やっぱり「山は人」ですね。つくづくと思います。