脳内映像を切り替える効果とは ジェフリー・ディーバー再読(3)リンカーン・ライムシリーズ
大好きなミステリーを再読して、発見したことを記すことにした。ミステリーを読み味わうだけでなく、深いところを書く楽しみがふえた。
再読したのは、ジェフリー・ディーバー著、池田真紀子訳、ボーン・コレクターだ。
科学捜査、警察、FBIさらに医学についても専門的な記述があるので、ノンフィクションを読んでいるような小説だ。
脳内映像を切り替える3人称多視点
映画になったディーバーの作品には「ボーン・コレクター」と「静寂の叫び」がある。映画のようにシーンを切り替える三人称多視点により、ボーン・コレクターは書かれている。
三人称多視点の小説は、登場人物と結びついた状況を記憶しながら、伏線や証拠の記述を見落とさないように集中して読む。記憶力を駆使し、推理を楽しみながら、ページをめくる瞬間ももどかしく読んだ。
視点の切り替えは、チャプターや空白行を挟みシーンを切り替えているのでわかりやすい。唐突なシーンの切り替えに慣れると、読みながら想像する映像、つまり脳内映像が、何度も切り替わる醍醐味を味わえる。
例えば、捜査会議をする捜査官のセリフの後に、隠れた犯人のシーンがあり、その後また、犯人逮捕のため現場に急ぐ捜査官のシーンに戻る。すると捜査官と犯人のセリフから、次にどうなるのか、読者は次のシーンを想像し、推理することができる。この複数人物の視点を行き来して推理することの醍醐味がたまらない。
ページを前後に繰って書いてあることを確かめることも、このサスペンスを読む楽しみの一つとなっている。手がかかりを見逃すまい一心に、記憶力をたよりに、作者ディーバーが仕掛けた伏線、証拠を見落とすまいと読みすすむ。
シーンが変わると、前のシーンのつづきがどうなるのか、その気持ちは吊り上げられたままとなる。次のシーンを理解することに意識を向けざるを得なくなる。
それが、最上位地点から一気に駆け下り、再び急傾斜を上下するジェットコースターのようだと、評される理由だろう。
脳内映像が何度も切り替わり、前のシーンの次が気になる気持ちを抱えたまま、別の登場人物のシーンに切り替わる。作者がくりだす描写は、繊細で心理をとらえている。自分の推理が正解なのかを確かめたくなり、一気に読まずにはいられなくなる。
科学捜査、警察、FBIさらに医学に関する専門性
科学捜査、警察、FBIさらに医学について専門用語を多用するサスペンスだ。
専門分野の十分な調査がされ、リアリティーに溢れている。専門用語の解説となっているセリフは、好き嫌いの別れるところだろう。もちろん興味津々となり、読み進んだ。
知的好奇心を満たし、その知識を使って読者が推理できる。それを楽しめれば、このサスペンスを読む価値はある。
文庫版(上)第一部をじっくりと、専門用語を調べてみた。
つづく
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