花別の蜂蜜が採れる訳と蜜源植物
いまの時期、私の住む周りは山桜に囲まれる。吉野の桜ほどまではいかないまでも、上から眺めると山の面積の半分以上は桜に覆われている。桜の色は白から淡いピンクまでさまざまである。白が多いのは大島桜が、近くの別荘に植えられていた。その種が小鳥などに運ばれたのではないだろうか。白とピンクの桜が交雑したのがほとんどである。山桜の花の時期は、3月下旬から4月いっぱいがほとんどで、たまに5月の初旬ごろまで咲いてるのがある。
ブンブンスカイファームにも桜の木が1本ある。ベランダから花を眺めると、ミツバチが花粉や花蜜を集めている。この桜の木の向こうに富士山が鎮座している。
早朝に偵察蜂が外へと飛び出す。うろうろ蜜源を探しているのか、匂いがする方向へと一目散に飛んでいくのかは知らない。蜜源にありつけるとネクターをお腹一杯に溜め込んで巣箱に持ちかえる。そしてダンスをして、仲間にその在処を教えてまわる。それを察知した仲間のハタラキバチは、その場所へと向かって飛びだしていき、その条件がよければ、その日の仕事場にして何度か荷物を運んで往復する。ミツバチは、そばに違う花が咲いていても見向きもしない。最初に訪問した花だけを次からも訪れるのである。他の花に浮気はしない。
だから、一面桜の花園であれば、桜蜜が採れる。
レンゲの花の多い所だったら、ほとんどの蜂がレンゲを訪れるので、巣の中に貯まるのはレンゲ蜜になる。
我が家の辺りの4月は、周り中に桜の花が咲くので桜蜜が貯まる。4月から5月初めに搾る蜂蜜は、分離機を回すとビュンビュン蜂蜜が飛び出すが、桜の甘い匂いがする。他の花の蜂蜜も少しは混ざるけれども、ほとんどが桜の蜜だから桜蜜として扱う。私は販売するわけではないが、販売するとしたら桜の蜂蜜としてお店に並べる。
桜の蜂蜜は瓶に詰めてみると、色は淡い琥珀色。匂いは、桜の園にでも足を踏み入れたような錯覚におちいる。
とれたてを食べたことがない方には、一度とれたてを食べてもらいたい。味は、見た目はもちろんのこと匂いにも左右される。初めての方にお分けすると、蜂蜜ってこんなに美味しかったの! と驚かれる。
日本で好まれる蜂蜜はレンゲが一番だったが、最近は農業の形態が変わったのと外来種の害虫のせいでレンゲが少なくなった。
昔は田んぼに蒔かれたレンゲは春に花が咲いて種ができて黒くなるまで田んぼに置かれた。そして、レンゲは田にすき込まれて肥料として使われた。秋に芽が出て春に花が咲く、、、というサイクルだった。ところが最近は田植えが早くなってしまったので、レンゲが咲くか咲かないかのうちに苗を植えるから、かえって害になってしまうのでレンゲを植えなくなった。
田植えをしない休耕田に、目を楽しませる景観用のレンゲの種を蒔く。
一時期きれいなレンゲ畑が戻ったと喜んだのも束の間!
レンゲの花芽を食べる害虫が、外国から入りこんできた。その名は、アルファルファタコゾウムシという長ったらしい名前である。花芽を食べられるので、せっかくのレンゲは台無しである。
アルファルファタコゾウムシの天敵のヨーロッパトビチビアメバチを輸入して野に放った。十数年前にその放飼を手伝って調べた結果、目立った効果はないようだった。しかし、即効性はないものの永続的に利用できる点など、効果が期待される面もあるようである。
2022年4月10日にこの原稿を書いた。
最高の天気に恵まれた。この日は、高校の入学式の予定だったが、美智子妃が嫁いで来られた日で、学校はお休みだったのを覚えている。あれから、何十年も経ってしまった。