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短編/パーキング
病院の窓際から見えるパーキングが埋まっていくたび私の体調が良くなっている気がする。とはいえ、エレベーターの階段表示を眺めるように、ただ窓越しのパーキングを見ているだけだ。自分の体調なんて自分でわかっているし、とやかくいう必要もない。ただ無機質な病院のベッドで定期的に出される食事に手をつけて大人しくさえしてればいい。少なくともなにもしてない時間の方が好きなのだから。
読みかけの本を開いてもいいし、買ったばかりのレコードを聞いてもいい。同居人の退屈な話に耳を傾けたっていい。それも悪くない選択だ。結局のところ、このベッドに座っていればいいのだから。
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ただ、一つだけ確実に言えることがある。
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私がその事実について興味を持ち始めているということだ。
窓際から見下ろすパーキングは中規模で、日頃は工事のトラックや社用のパッとしない車が止まっている。満車になる事は決してない。決してないが、完全に空になることも決してない。大体まばらに5-6台は止まっている。
そのパーキングがたまに8台から9台賑わう時がある。その時私はなにか満たされる気分になるのだ。そんな摩訶不思議なことが起きるわけがない。と自分でも思う。ただおおむね私の体調がいい日はパーキングが賑わっている時なのだ。ただ満車になることは決してない。
その中でも気になっているあるトラックがある。そのトラックはなんだか不思議で側面は複数のボックスで切り分けられたカラフルな色の装飾がされている。私は暇さえあればそのカラフルな色の配置を覚えることにしてみた。決して意味はない。ただあの赤のボックスはてんとう虫みたいだし、あの青のボックスは海だ。類推はほんのちょっとの修正で幾分か思いがけないところまでたどり着いてしまう。
「実にそういうことだ」と先生はいう。そして先程頼んだばかりの薬を持ってきて私に渡す。そしてこめかみをおさえる。
「でもね、%#[{+さん、これだけは覚えておいた方がいい。結局のところ、あなたを殺そうとした連中も、そういった想像力が足りないんだよ。一つのボックスについて幾つかの色があることを考慮しない残酷な人たちさ。一人歩きする思考にまぁこういうものかと体を休めてしまうのは簡単だもの。ただ君はその想像力でいくらでも自力で歩くことができる。君が薙ぎ倒される考える葦でも私はその葦のことを守ろうと思えるんだ。」
先生は指の先であのトラックを指す。何か言いたそうだったが指を下ろして私を見つめた。「僕は君みたいな想像力を持つ子を絶対に死なせてはいけないんだよ。」
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